日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


撰時抄 4 第三章 両説は時に適うのみ


【問うて云はく、機にあらざるに大法を授けられば、】
それでは、まだ理解できない者が、いきなり難しい法を授けられたならば、

【愚人は定めて誹謗をなして悪道に堕つるならば、】
愚かな者は、それを曲解して、その為に悪道に堕ちてしまいます。

【豈〔あに〕説く者の罪にあらずや。】
それは、それを説いた者の罪になるのではないでしょうか。

【答へて云はく、人路をつくる、路に迷ふ者あり、】
いいえ、ある人が道を作って、その道に迷う者がいるからといって、

【作る者の罪となるべしや。】
その道を作った者の罪ではないでしょう。

【良医〔ろうい〕薬を病人にあたう、病人嫌ひて服せずして死せば、】
良い医者がいて、薬を病人に与えた時に、病人がそれを嫌って飲まずに死ねば、

【良医の失〔とが〕となるか。】
それは、医者のせいになるのでしょうか。

【尋ねて云はく、法華経の第二に云はく】
それでは、もう一度、お尋ねしますが、法華経第二巻の譬喩品第三には、

【「無智の人の中にして此の経を説くこと莫〔なか〕れ」と。】
「無智の人には、この経を説いてはならない」とあり、

【同じき第四に云はく】
また同じく法華経第四巻の法師品第十には

【「分布〔ぶんぷ〕して妄〔みだ〕りに人に授与すべからず」と。】
「この経を講義してみだりに授与してはならない」とあり、

【同じき第五に云はく】
また同じく法華経第五巻の安楽行品第十四には、

【「此の法華経は諸仏如来の秘密の蔵なり、諸経の中に於て最も其の上に在り、】
「この法華経は諸仏の秘密の蔵であり、諸経の中において、もっともその上にあり。

【長夜に守護して妄〔みだ〕りに宣説せざれ」等云云。】
ゆえに長夜に守護して、みだりに述べて広めてはならない」とあります。

【此等の経文は機にあらずば】
これは、相手が法華経を聞く能力がなければ、

【説かざれというかいかん〔如何〕。】
説いてはならないという意味ではないでしょうか。

【今反詰〔はんきつ〕して云はく、不軽品〔ふきょうほん〕に云はく】
今、その質問に対して反論しますが、同じく、法華経の不軽品には、

【「而も是の言〔ことば〕を作〔な〕さく、我深く汝等を敬ふ等云云。】
「不軽菩薩が会う人ごとに、私は、深く、あなたを敬うと言って頭を下げた。

【四衆の中に瞋恚〔しんに〕を生じ心不浄なる者有り。】
これに対し、四衆の中には、不軽菩薩に対して怒りを生じる腐った心の者もおり、

【悪口罵詈〔あっくめり〕して言はく、是の無智の比丘」と。】
無能な僧侶だと罵詈雑言〔ばりぞうごん〕した」と説かれているのです。

【又云はく「衆人〔しゅにん〕或は杖木瓦石〔じょうもくがしゃく〕を以て】
また、「ある人は、杖や木、瓦や石をもって

【之を打擲〔ちょうちゃく〕す」等云云。勧持品に云はく「諸の無智の人の】
不軽菩薩を打ち叩いた」とあります。また勧持品には「多くの無智な人々が

【悪口罵詈等し、】
法華経を説く人を悪口罵詈〔あっくめり〕して、

【及び刀杖〔とうじょう〕を加ふる者有らん」云云。】
刀や杖で迫害するであろう」と説かれています。

【此等の経文は悪口罵詈乃至】
これらの経文は、悪口され罵倒されても、

【打擲すれどもとと〔説〕かれて候は、】
また刀や杖で打たれても、説くべきだと云うのです。

【説く人の】
なぜなら、相手が信じないからといって法華経を説いた者の

【失となりけるか。】
罪とは、ならないからなのです。

【求めて云はく、此の両説は水火なり。】
このように、この二つの説は、水と火のように矛盾したものですが、

【いかんが心うべき。】
どのように、これを考えれば良いのでしょうか。

【答へて云はく、天台云はく「時に適〔かな〕ふのみ」と。】
それは、天台大師は「時に適うのみ」と言って時期によると言われています。

【章安云はく「取捨宣〔よろ〕しきを得て】
同じく章安大師は「どちらかは、時期を考えて

【一向にすべからず」等云云。】
同じにしてはならない」と言っています。

【釈の心は、或時は謗じぬべきには】
この意味は、ようするに、ある時は、反論されるならば、

【しばらくと〔説〕かず、】
しばらくは、法を説かない事もあるし、

【或時は謗ずとも強〔し〕ひて説くべし、】
ある時は、どんなに反論されても強いて説き聞かせる場合もあると言う事です。

【或時は一機は信ずべくとも】
またある時は、わずかな人が信じるとしても

【万機〔ばんき〕謗ずべくばと〔説〕くべからず、】
多くが理解出来ないならば、説いてはならないし、

【或時は万機一同に謗ずとも】
ある時は、すべての人々が一同に反論しても

【強ひて説くべし。】
強いて説くべき時もあるという意味です。


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