日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


撰時抄 30 第二十九章 法華経を失ふ大禍


【疑って云はく、法華経を真言に勝ると申す人は】
それでは、法華経が真言より優れていると言う人は、

【此の釈をばいかんがせん。】
この慈覚の注釈書をどうしようと云うのでしょうか。

【用ふべきか又すつべきか。】
捨ててしまわなければならないのでしょうか。

【答ふ、仏の未来を定めて云はく】
それに答えると、仏の未来記には、このように書いてありますが、

【「法に依って】
涅槃経に「説かれた法によって判断し、

【人に依らざれ」と。】
説いた人によって判断してはならない」とあるのです。

【竜樹菩薩云はく「修多羅〔しゅたら〕に依るは白論〔びゃくろん〕なり。】
竜樹菩薩は、十住毘婆沙論に「仏説の経典をもとにした議論によるべきである。

【修多羅に依らざるは黒論〔こくろん〕なり」と。】
経典によらないものは、間違った議論である」とあります。

【天台云はく「復〔また〕修多羅と合せば録して之を用ひよ。】
天台大師は、法華玄義に「経論と合するものは、これを記録の上もちいなさい。

【文無く義無きは信受すべからず」と。】
経論に文証も理証もないのは、信じてはならない」とあります。

【伝教大師云はく】
伝教大師は、法華秀句に

【「仏説に依憑〔えひょう〕して口伝を信ずること莫れ」等云云。】
「仏説に依るべきであって、口伝を信じてはならない」とあるのです。

【此等の経・論・釈のごときんば】
これらの経論解釈のとおりであるならば、宗教の正邪、優劣は、

【夢を本〔もと〕にはすべからず。たゞついさして法華経と大日経との勝劣を】
夢などを元にしてはならないはずです。ただ、法華経と大日経との優劣を

【分明に説きたらん経論の文こそたいせち〔大切〕に候はめ。】
明らかに説いた経論の文章こそ、もっとも大事なはずです。

【但し印真言なくば木画の像の開眼の事】
ただし、印と真言がなければ、仏像の開眼が

【此〔これ〕又をこ〔烏滸〕の事なり。】
出来ないなどと云うのは、まったく滑稽な事です。

【真言のなかりし已前には木画の開眼はなかりしか。】
それでは、真言宗が出来る以前には、仏の開眼は出来なかったと言うのでしょうか。

【天竺〔てんじく〕・漢土・日本には真言宗已前の】
インドでも中国でも日本でも、真言宗が出来る前に

【木画の像は或は行き、】
インドのウダヤナ王の木像が歩いたとか、

【或は説法し、】
迦葉摩騰〔かしょうまとう〕の仏画が一切経を説いたとか、

【或は御物言〔ものがたり〕あり。】
鵜田寺の薬師像が話をしたと伝えられているではないですか。

【印真言をも〔以〕て仏を供養せしより】
かえって印、真言で仏を供養するようになって、

【このかた利生〔りしょう〕もかたがた失〔う〕せたるなり。】
このような話は、まったく、なくなってしまったのです。

【此は常の論談の義なり。】
これは、いつも話をされている事なのです。

【此の一事にを〔於〕ひては、】
しかし、真言が優れ法華が劣ると云う事について、

【但し日蓮は分明の証拠を余所〔よそ〕に引くべからず。】
日蓮は明らかな証拠を余所に求める必要がないのです。

【慈覚大師の御釈を仰いで信じて候なり。】
慈覚自身の書いたものであっても、信じられるところがあるのです。

【問うて云はく、何にと信ぜらるゝや。答へて云はく、】
それは、どこを信じられると言っているのでしょうか。それに答えると、

【此の夢の根源は真言は法華経に】
慈覚のこの夢の根源は、真言が法華経に

【勝〔すぐ〕ると造り定めての御ゆめなり。】
優れていると定めてから見た夢であるのです。

【此の夢吉夢〔きつむ〕ならば慈覚大師の合はせさせ給ふがごとく真言勝るべし。】
この夢が良い夢であるなら、慈覚が判断したように真言が優れている事になります。

【但し日輪を射るとゆめにみたるは吉夢なりというべきか。】
しかし、太陽を射る夢を見た事自体が、はたして良い夢と言えるでしょうか。

【内典五千七千余巻・外典三千余巻の中に】
仏教の内典、五千から七千余巻、外典、三千余巻の中で、

【日を射るとゆめに見て吉夢なる証拠をうけ給はるべし。】
その中で太陽を射る夢を見て、良い夢だと云う証拠が、どこにあるのでしょうか。

【少々これより出だし申さん。】
これから、それを判断する為に、いくつかの例を出してみましょう。

【阿闍世王〔あじゃせおう〕は天より月落つるとゆめにみて、】
阿闍世王は、天より月が落ちる夢を見て、

【耆婆〔ぎば〕大臣に合はせさせ給ひしかば、】
耆婆大臣にその事を聞けば、

【大臣合はせて云はく、仏の御入滅なり。】
大臣は答えて「仏の御入滅に違いない」と言ったのです。

【須抜多羅〔しゅばっだら〕天より日落つるとゆめにみる。】
須抜多羅は、天より太陽が落ちる夢に見て、

【我とあわせて云はく、仏の御入滅なり。修羅は帝釈と合戦の時、】
みずから「仏の御入滅である」と言いました。修羅は、帝釈と戦う時に、

【まづ日月をい〔射〕たてまつる。夏〔か〕の桀〔けつ〕・】
まず日月を射たのです。夏の桀王、

【殷〔いん〕の紂〔ちゅう〕と申せし悪王は常に日をい〔射〕て】
殷の紂王という悪王は、常に太陽に弓を引いて

【身をほろぼし国をやぶる。】
身を滅ぼし、国を破ったのです。

【摩耶〔まや〕夫人は日をはらむと】
また反対に、釈尊の生母である摩耶夫人は、太陽を孕む

【ゆめにみて悉達〔しった〕太子をうませ給ふ。】
夢を見て、釈迦牟尼仏を産んだのです。

【かるがゆへに仏のわらわな〔童名〕をば日種〔にっしゅ〕という。】
この故に釈迦牟尼仏の幼名を日種と言うのです。

【日本国と申すは天照太神の日天にしてましますゆへなり。】
日本国と言うのは、天照太神が日天にいる故の国名なのです。

【されば此のゆめは天照太神・伝教大師・釈迦仏・】
そうであれば、慈覚の夢は、天照太神、伝教大師、釈迦仏、

【法華経をいたてまつれる矢にてこそ二部の疏は候なれ。】
法華経を射る矢であり、この夢の矢は、二部の注釈書の事なのです。

【日蓮は愚癡の者なれば経論もしらず。】
日蓮は愚癡の者であるから経論など、くわしい事はわからないのですが、

【但此の夢をもって法華経に真言すぐれたりと申す人は、】
ただ、この夢をもって、法華経より真言が優れていると言う人は、

【今生には国をほろぼし家を失ひ、】
今世には、国を滅ぼし、家を失い、

【後生にはあび〔阿鼻〕地獄に入るべしとはし〔知〕りて候。】
後生には、阿鼻地獄へ堕ちると云う事は、知っているのです。

【今現証あるべし。】
今、ここに、はっきりした現証があります。

【日本国と蒙古との合戦に一切の真言師の調伏〔じょうぶく〕を行なひ候へば、】
日本国と蒙古との戦いで、すべての真言師が敵国の調伏を行ない、

【日本かちて候ならば真言はいみじかりけりとをも〔思〕ひ候ひなん。】
それで日本が勝つ事が出来たならば、真言は、優れ尊いと云う事がわかるのです。

【但し承久〔じょうきゅう〕の合戦にそこばくの真言師のいのり候ひしが、】
承久の乱では、多くの真言師が鎌倉幕府の北条義時を調伏しようと祈ったが、

【調伏せられ給ひし権〔ごん〕の大夫〔たいふ〕殿はかたせ給ひ、】
結果は、北条義時の勝利となり、祈ったほうの朝廷軍は、惨敗して、

【後鳥羽院は隠岐〔おき〕の国へ、御子〔みこ〕の天子は佐渡の島々へ】
そして後鳥羽院は隠岐の国へ、御子の天子は、佐渡などの島々へ流され、

【調伏しやりまいらせ候ひぬ。】
自分が島流しをされる為の調伏になってしまったのです。

【結句〔けっく〕は野干〔やかん〕のな〔鳴〕きの己が身にをうなるやうに、】
決局、動物が自分が鳴いた為に他の動物に殺されるようなもので、

【還著於本人〔げんじゃくおほんにん〕の経文に】
経文に「還って本人に著きなん」とあるとおり、

【すこしもたがわず。】
祈祷は、かえって我が身を亡ぼすのです。

【叡山の三千人かまくらにせめられて、】
比叡山三千人の僧徒は、鎌倉軍を亡ぼそうと祈り、

【一同にしたが〔従〕いはてぬ。】
返って鎌倉に攻め亡ぼされ降伏したのです。

【しかるに又かまくらは、】
このように現在、鎌倉幕府が真言師に命じて祈禱しているのは、

【日本を失はんといのるかと申すなり。】
日本を滅ぼすための祈りなのです。

【これをよくよくしる人は一閻浮提一人の智人なるべし、よくよくしるべきか。】
この事を、きちんと知っている人こそ、世界第一の智者と云うべき人なのです。

【今はかまくらの世さかんなるゆへに、】
今は、鎌倉幕府の世が盛んとなったので、

【東寺・天台・園城〔おんじょう〕・七寺の真言師等と並びに】
京都の東寺、天台宗の比叡山、三井の園城寺、奈良七寺の真言師等と、

【自立をわすれたる法華宗の謗法の人々関東にを〔落〕ちくだりて頭をかたぶけ、】
伝教大師の教義を忘れた比叡山の謗法の僧が、関東へ落ち下って頭を下げて、

【ひざをかゞめ、やうやうに武士の心をとりて、】
膝を折って、様々に武士に取り入って、

【諸寺諸山の別当となり、長吏〔ちょうり〕となりて、】
諸寺諸山の別当や長吏などの官位をもらって、

【王位を失ひし悪法をとりいだして、】
朝廷を滅亡させた真言の悪法をもって

【国土安穏といのれば、将軍家並びに所従の侍已下〔いげ〕は】
国土の安全を祈っていますが、将軍とその家来の武士は、

【国土の安穏なるべき事なんめりとう〔打〕ちをも〔思〕ひて有るほどに、】
その事実を忘れて、それで国土を守れると思っているのですが、

【法華経を失ふ大禍〔たいか〕の僧どもを】
法華経を信じない大謗法の僧達を

【用ひらるれば、国定めてほろびなん。】
もちいる事によって返って、国が滅びてしまおうとしているのです。


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