日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


下山御消息 5 第四章 良観坊と申す法師あり


【又一類の者等、天台の才学を以て見れば、】
また、律宗の一部のものどもは、天台の才能と学識からみると、

【我が律宗は幼弱〔ようじゃく〕なる故に漸々に梵網〔ぼんもう〕経へうつりぬ。】
律宗が、まったく力がないので、次第に梵網経へ移り、

【結句は法華経の大戒を我が小律に盗み入れて】
結局は、法華経の大戒を自宗の小乗戒に盗み入れ、

【還って円頓〔えんどん〕の行者を破戒・無戒と咲〔わら〕へば、】
かえって法華円頓の行者を破戒、無戒と嘲笑したので、

【国主は当時の形貌〔ありさま〕の貴げなる気色〔けしき〕にたぼらかされ給ひて】
国主は、当時の律僧の、いかにも高貴そうな外見に惑わされて、

【天台宗の寺に寄せたる田畠等を奪ひ取って彼等にあたへ、】
天台宗の寺に寄進していた田畠を奪い取って、彼らに与え、

【万民は又一向大乗の寺の帰依を抛〔なげう〕ちて彼の寺にうつる。】
また万民も大乗の寺への帰依を止め、小乗の律宗の寺に移ってしまったのです。

【手づから火をつけざれども日本一国の大乗の寺を焼き失ひ、】
これは、自ら火は、点けなくても日本一国の大乗の寺を焼失させたも同様であり、

【拔目〔ばつもく〕鳥にあらざれども一切衆生の眼を抜きぬ。】
抜目鳥では、ないけれども一切衆生の眼を抜いたのも同様であるのです。

【仏の記し給ふ阿羅漢に似たる一闡提〔いっせんだい〕とは是なり。】
仏が経文に書かれた阿羅漢に似た一闡提とは、実に彼らの事なのです。

【涅槃経に云はく「我涅槃の後、無量百歳に四道の聖人も悉く復涅槃せん。】
涅槃経には「私が入滅して後、無量百歳を過ぎると四道の聖人もまた入滅し、

【正法滅して後、像法の中に於て当に比丘有るべし。】
正法が滅して後、像法時代になると次のような僧侶が現れる。

【像〔かたち〕持律〔じりつ〕に似て少〔わず〕かに経を読誦し、】
それは、いかにも戒律を守っているような姿で、わずかばかりの経文を読誦し、

【飲食〔おんじき〕を貪嗜〔とんし〕して其の身を長養せん。】
飲食をむさぼって、その身を永らえる僧侶である。

【乃至袈裟を服すと雖も猶猟師の細視〔さいし〕】
袈裟を着ているとはいえ布施を狙うさまは、猟師が獲物を狙って細目に見ながら、

【徐行〔じょこう〕するが如く、猫の鼠を伺ふが如く、】
静かに近付いて行く姿であり、猫が鼠を狙っているような姿であり、

【外には賢善〔けんぜん〕を現はし内には貪嫉〔とんしつ〕を懐き、】
外面は、賢く善良と見せかけ、内心では、貪り、嫉みを懐き、

【唖法〔あほう〕を受けたる婆羅門〔ばらもん〕等の如く、】
法門については、唖法を行じている婆羅門のように黙りこみ、

【実には沙門に非ずして沙門の像を現はし、】
真実は、僧侶でもないのに外面は僧侶の姿をし、

【邪見〔じゃけん〕熾盛〔しじょう〕にして正法を誹謗せん」等云云。】
邪見が強盛で正法を誹謗するであろう」と説かれているのです。

【此の経文に世尊未来を記し置き給ふなり。】
この経文に世尊は、未来を記して置かれたのです。

【抑〔そもそも〕釈尊は我等がためには賢父たる上、明師なり聖主なり。】
そもそも釈尊は、我らにとっては賢父であるうえに明師であり、聖主であるのです。

【一身に三徳を備へ給へる仏の仏眼〔ぶつげん〕を以て、】
一身にこの主、師、親の三徳を備えておられる仏が仏眼によって、

【未来悪世を鑑〔かんが〕み給ひて記し置き給へる記文に云はく】
未来の悪世を鑑みられて記し置かれた文に

【「我涅槃の後、無量百歳」云云。仏滅後二千年已後と見へぬ。】
「私が入滅した後の無量百歳」とあり、これは、仏滅後二千年以後を指すのです。

【又「四道の聖人悉く復涅槃せん」云云。付法蔵の二十四人を指すか。】
また「四道の聖人も悉く入滅する」とは、付法蔵の二十四人を指すのでしょうか。

【「正法滅後」等云云。像末の世と聞こえたり。】
「正法が滅して後」とは、像法、末法の世と思われます。

【「当に比丘有るべし、像持律に似て」等云云。】
「戒律を持っているように姿を似せた出家の僧が現れるであろう」とありますが、

【今末法の代に比丘の似像〔じぞう〕を撰び出ださば、】
今、末法の時代にこの「僧に似た姿」を選び出すとすれば、

【日本国には誰の人をか引き出だして大覚世尊をば不妄語の人とし奉るべき。】
日本では、いったい誰を引き出して大覚世尊を不妄語の人と言うのでしょうか。

【俗男俗女比丘尼をば此の経文に載せたる事なし。但比丘計りなり。】
世俗の男女、尼僧の事は、この経文に記されておらず、ただ僧とのみあるのです。

【比丘は日本国に数をしらず。】
僧は、日本には、無数にいます。

【而れども其の中に三衣〔さんね〕一鉢〔いっぱち〕を】
しかし、その中で三衣一鉢を

【身に帯せねば似像〔じぞう〕と定めがたし。】
身に着けていなければ、その通りの姿とは、云えないでしょう。

【唯持斎の法師計りあひ似たり。一切の持斎の中には】
ただ持斎を持った法師のみが該当するのです。一切の持斎の僧の中では、

【次下の文に持律と説かれたり。律宗より外は又脱れぬ。】
その次の文章に持律と説いてある事から、律宗以外には、ないのです。

【次下の文に「少〔わず〕かに経を読誦す」云云。】
更にその続きの文に「わずかばかりの経文を読誦し」とありますが、

【相州鎌倉の極楽寺の良観房にあらずば誰を指し出だして】
これは、相州鎌倉の極楽寺の良観房でなければ、いったい誰を指して、

【経文をたすけ奉るべき。次下の文に】
経文を証明する事が出来るでしょうか。また続きの文に

【「猶〔なお〕猟師の細視〔さいし〕】
「布施を狙うさまは猟師が獲物を狙って細目に見ながら、

【徐行〔じょこう〕するが如く、猫の鼠を伺ふが如く、】
静かに近付いて行く姿であり、猫が鼠を狙っているような姿であり、

【外には賢善を現はし内には貪嫉〔とんしつ〕を懐く」等云云。】
外面は、賢く善良と見せかけ、内心では、貪り嫉みを懐く」と説かれています。

【両火房〔りょうかぼう〕にあらずば誰をか三衣一鉢の猟師・】
それが良観坊でなければ、いったい誰を三衣一鉢の猟師、

【伺猫〔しみょう〕として仏説を信ずべき。】
猫のような僧侶として、どうして仏説を信じればよいのでしょうか。

【哀れなるかな、当時の俗男・俗女・比丘尼等・檀那等が、山の鹿・】
哀れにも、今日の俗男、俗女、尼僧、檀那などは、山の鹿、

【家の鼠となりて、猟師・猫に似たる両火房に伺はれ、たぼ〔誑〕らかされて】
家の鼠となって、猟師、猫に似た良観坊にたぶらかされて、

【今生には守護国土の天照太神・正八幡等にすてられ、】
今世においては、国土を守護する天照太神、正八幡にも見捨てられ、

【他国の兵軍にやぶられて猫の鼠を捺〔お〕さへ取るが如く、】
他国の軍隊に攻め破られて、あたかも猫が鼠をおさえ取り、

【猟師の鹿を射死〔いころ〕すが如し。俗男武士等は射伏せ切り伏せられ、】
猟師が鹿を射殺すように、俗男、武士は、矢で射伏せられ、刀で切り伏せられ、

【俗女は捺さへ取られて他国へおもむかん。】
俗女は、押え取られて、他国へ連れていかれることでしょう。

【王昭〔おうしょう〕君・楊貴妃〔ようきひ〕が如くになりて、】
そして、王昭君、楊貴妃のようになって、

【後生には無間大城に一人もなく趣くべし。】
後生には、無間地獄に一人も漏れなく堕ちていくでしょう。

【而るを余此の事を見る故に、彼が檀那等が大悪心をおそれず】
しかるに私は、この事を知るが故に、良観の檀那などの大悪心を恐れず、

【強盛にせむる故に両火房内々諸方に讒言〔ざんげん〕をかまへて】
強盛に責めたので、良観坊は、諸所に言葉をろうし手をまわして、

【余が口を塞〔ふさ〕がんとはげみしなり。】
私の口を塞ごうと謀ったのです。

【又経に云はく「汝を供養する者は三悪道に堕つ」等云云。】
また経文には「あなたに供養する者は三悪道に堕ちるであろう」とあります。

【在世の阿羅漢を供養せし人尚三悪道脱れがたし。】
釈尊在世の阿羅漢に供養した人ですら、なお三悪道は、まぬかれがたいのです。

【何に況んや滅後の誑惑〔おうわく〕小律の法師等をや。】
まして仏滅後の世間を惑わす小乗戒の法師に供養をすれば、なおさらなのです。

【小戒の大科をばこれを以て知んぬべし。】
小乗戒に執着する科〔とが〕は、この文章によって知る事が出来るでしょう。

【或は又驢乳〔ろにゅう〕にも譬へたり、還って糞〔あくた〕となる。】
あるいは、小乗戒を驢馬〔ろば〕の乳にも譬えており、小乗の戒を持つ者は、

【或は狗犬〔くけん〕にも譬へたり。大乗の人の糞を食ふ。】
犬にも譬えられ、大乗の人の糞を食べる犬であると云われているのです。

【或は猿猴〔えんこう〕或は瓦礫〔がりゃく〕云云。】
また、猿とか瓦礫などにも譬えられているのです。

【然れば時をわきまへず機をしらずして】
したがって、正法、像法、末法の時代をわきまえず、人々の理解力を知らないで、

【小乗戒を持たば大乗の障りとなる。】
小乗戒を持つならば大乗の障害となり、

【破れば又必ず悪果を招く。】
その小乗戒を破れば、必ず悪い結果を招くことになります。

【其の上今の人々小律の者どもは大乗戒を小乗戒に盗み入れ、】
そのうえ、今の小乗戒をたもつ者は、大乗戒を小乗戒に盗み入れ、

【驢乳に牛乳〔ごにゅう〕を入れて大乗の人をあざむく。】
驢馬〔ろば〕の乳に牛乳を入れるようにして大乗の人をあざむいているのです。

【大偸盗〔ちゅうとう〕の者大謗法の者、】
これは、大盗賊の類であり、大謗法の者であるのです。

【其のとがを論ずれば提婆達多も肩を並べがたく、】
その罪を論ずるならば、五逆罪を犯した提婆達多も肩を並べがたく、

【瞿伽利〔くがり〕尊者が足も及ばざる閻浮第一の大悪人なり。】
瞿伽利尊者などは、足元にも及ばない閻浮第一の大悪人なのです。

【帰依せん国土安穏なるべしや。】
これに帰依して、その国土が安穏であるなど有り得ないのです。

【余此の事を見るに、自身だにも弁へなばさてこそあるべきに、】
日蓮自身が、この事を理解していれば、よさそうなものですが、

【日本国に智者とおぼしき人々一人も知らず。】
日本の智者と言われる人々が誰一人この事を知らずに

【国すでにやぶれなんとす。】
いまや、国が滅びようとしています。

【其の上仏の諫暁を重んずる上、】
その上、仏の諌暁〔かんぎょう〕を重んじるゆえに、

【一分の慈悲にもよ〔催〕をされて国に代はりて身命を捨て申せども、】
また一分の慈悲に動かされて、国の為に身命を捨てて諌暁したにもかかわらず、

【国主等彼にたぼらかされて用ゆる人一人もなし。】
国主らは、彼らに騙され、この諌言を用いる人が一人もいなかったのです。

【譬へば熱鉄に冷水を投げ、】
かえって、熱く焼いた鉄に冷水を注ぎかけたように、

【睡眠の師子に手を触るゝが如し。】
眠れる師子に手を触れたように日蓮を激しく攻撃して来たのです。

【爰〔ここ〕に両火房と申す法師あり。】
ここに、先ほど、経文にあった良観坊という法師が現れたのです。

【身には三衣〔さんね〕を皮の如くはなつ事なし。】
身体に清廉な僧衣を着て自分の皮膚のように離す事がなく、

【一鉢〔いっぱち〕は両眼をまぼ〔守〕るが如し。】
一鉢を自分の両眼のように大切にしているのです。

【二百五十戒を堅く持ち三千の威儀をとゝのへたり。】
二百五十戒を堅く持ち、三千の威儀を整えており、

【世間の無智の道俗、国主よりはじめて万民にいたるまで、地蔵尊者の】
世間の無智な僧俗は、国主から万民に至るまで、良観をまるで地蔵尊者が

【伽羅陀山〔からだせん〕より出現せるか、】
伽羅陀山より出現したか、

【迦葉尊者の霊山より下来するかと疑ふ。】
迦葉尊者が霊山より、やって来たかのように思っているのです。

【余法華経の第五の巻の勧持品を拝見し奉りて、末代に入りて法華経の大怨敵に】
私が法華経第五の巻の勧持品を見ると、末法時代に入ると法華経の大怨敵である

【三類有るべし、】
三類の強敵が現れるとありますが、

【其の第三の強敵〔ごうてき〕は此の者かと見了んぬ。】
その中の第三の強敵こそ、この者の事であるとわかったのです。

【便宜あらば国敵を責めて彼が大慢を倒して、】
そこで、折あるごとに国の敵である良観房を責めて、その大慢心を倒して、

【仏法の威験〔いげん〕あらわさんと思ふ処に、】
仏法の威力を顕そうと思っていたところ、

【両火房常に高座にして歎いて云はく、日本国の僧尼に二百五十戒・五百戒、】
良観坊は、常に高座で嘆いては、日本国の尼僧には二百五十戒、五百戒、

【男女には五戒・八斎戒等を一同に持たせんと思ふに】
在俗の男女には、五戒、八斎戒などを一同に持たせようと思っているのに、

【日蓮が此の願の障りとなる云云。余案じて云はく、】
日蓮がこの願いの障害となっていると公言していたのです。それに対して私は、

【現証に付けて事を切らんと思ふ処に】
現証をもって決着をつけようと思っていたところ、

【彼常に雨を心に任せて下らす由披露あり。】
良観房は、常に雨を心のままに降らせる事が出来ると世間に宣伝しており、

【古〔いにしえ〕も又雨を以て得失をあらはす例〔ためし〕これ多し。】
過去にも、また祈雨をもって優劣を決した例は、数多くあり、

【所謂伝教大師と護命〔ごみょう〕と、守敏〔しゅびん〕と弘法と等なり。】
あの伝教大師と護命、守敏と弘法の例があるので、これで決着を付けようと思うと、

【此に両火房上より祈雨の御いのりを仰せ付けられたり云云。】
なんと、ここで良観坊に幕府より祈雨が仰せつけられたのです。

【此に両火房祈雨あり。】
そして実際に、ここで良観坊は、祈雨を行なわなければ、ならなくなったのです。


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