日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


下山御消息 9 第八章 主師親の三徳兼備


【自讃には似たれども本文に任せて申す。】
自分で自分を褒めているようでは、あるけれども、経文によって述べるならば、

【余は日本国の人々には上は天子より下は万民にいたるまで】
日蓮は、日本国の一切の人々の、つまり、上は天子より下は万民に至るまでの

【三の故あり。一には父母なり、二には師匠なり、三には主君の御使ひなり。】
一つは、父母であり、二つは、師匠であり、三つは、主君の使いであるのです。

【経に云はく「即ち如来の使ひなり」と。】
法華経法師品には「即ち如来の使いなり」とあり、

【又云はく「眼目なり」と。又云はく「日月なり」と。】
見宝搭品には「眼目なり」とあり、如来神力品には「日月なり」とあります。

【章安大師の云はく「彼が為に悪を除くは則ち是彼が親なり」等云云。】
また章安大師の涅槃経疏には「彼の為に悪を除くのは則ち彼の親である」とあり、

【而るを謗法一闡提〔いっせんだい〕の】
そうであるのに、幕府が正法に背く一闡提、つまり、

【国敵〔こくてき〕の法師原〔ほっしばら〕が讒言〔ざんげん〕を用ひて、】
国の敵〔かたき〕である法師たちの言葉のみを信用して、

【其の義を弁へず、左右〔さう〕なく大事たる政道を曲げらるゝは、】
その内容を吟味せずに、このように、たやすく大事な政道を曲げられたのは、

【わざとわざはひをまねかるゝか。墓無し墓無し。】
わざわざ、災いを招こうとしているのでしょうか、実に儚い事です。

【然るに事しづまりぬれば、科なき事は】
しかし、事態が鎮まれば、日蓮が、幕府にとって何の問題もない事がわかって、

【恥づかしきかの故にほどなく召し返されしかども、】
それが恥ずかしかった為か、間もなく赦免となり、鎌倉へ戻されたのです。

【故最明寺の入道殿も又早くかくれさせ給ひぬ。】
そして、最明寺入道殿も、それから間もなく他界してしまったのです。

【当〔とう〕御時〔おんとき〕に成りて或は身に疵〔きず〕をかふり、】
時代が北条時宗殿の治世に移っても、あるいは、身に傷を負い、

【或は弟子を殺され、或は所々を追ひ、或はやどをせめしかば、】
ある弟子は、殺され、あるいは、追放され、あるいは、住居を攻められ、

【一日片時も地上に棲〔す〕むべき便りなし。】
一日片時として、この地上に安心して住む事が出来ずにいるのです。

【是に付けても、仏は「一切世間怨多くして信じ難し」と説き置かせ給ひ、】
法華経の安楽行品に仏が「一切世間に怨多くして信じ難い」と説かれ、

【諸の菩薩は「我不愛身命・但惜〔たんしゃく〕無上道」と誓ひたまへり。】
諸菩薩が勘持品で「我が身命を愛せず、ただ無上道を惜しむ」と誓っており、

【「加〔か〕刀杖〔とうじょう〕瓦石〔がしゃく〕・】
さらには、法師品の「刀杖瓦石を加えられ迫害され」という文や、

【数々〔さくさく〕見〔けん〕擯出〔ひんずい〕」の文に任せて】
勘持品の「しばしば所を追放されるであろう」の文の通りに

【流罪せられ、刀のさきにかゝりなば、法華経一部】
日蓮が、流罪されたり、刀で切られたならば、法華経全巻を

【よみまいらせたるにこそとおもひきりて、わざと不軽菩薩の如く、】
読み奉った事になると覚悟を決め、不軽菩薩のように、

【覚徳〔かくとく〕比丘〔びく〕の様に、竜樹〔りゅうじゅ〕菩薩・】
覚徳比丘のように、また竜樹菩薩・

【提婆〔だいば〕菩薩・仏陀密多〔ぶっだみった〕・】
提婆菩薩・仏陀密多・

【師子尊者の如く弥々強盛に申しはる。】
師子尊者のように、ますます強く声をあげたのです。

【今度法華経の大怨敵を見て経文の如く父母・師匠・朝敵・】
今、法華経の大怨敵を見て、経文通りに父母、師匠、朝敵、

【宿世〔すくせ〕の敵の如く、散々に責むるならば、定んで万人もいかり、】
宿敵に対するように、激しく破折するならば、必ず、すべての人々も怒り、

【国主も讒言〔ざんげん〕を収〔い〕れて、流罪し頭にも及ばんずらん。】
国主も讒言を聞き入れて、流罪にし、首を斬ろうとするに違いないのです。

【其の時仏前にして誓状せし梵釈・日月・】
その時、仏前で法華守護の誓約を立てた梵天、帝釈、日月、

【四天の願をもはたさせたてまつり、法華経の行者をあだまんものを】
四天の願いを果たさせようと思い、法華経の行者を迫害する者を

【須臾〔しゅゆ〕ものがさじと、】
瞬時たりとも見逃さないとの梵天、帝釈、日月、四天の誓約文を、

【起請〔きしょう〕せしを身にあてゝ心みん。】
日蓮自身の身にあてはめて、試してみようと思っているのです。

【釈尊・多宝・十方分身の諸仏の、或は共に宿し、】
釈迦如来、多宝如来、十方分身の諸仏が、法華経の行者と宿舎を共にし、

【或は衣を覆ひ、或は守護せんと、ねんごろに説かせ給ひしをも、】
あるいは、衣で覆い、あるいは、警護すると、詳細に説かれた事が、

【実〔まこと〕か虚言〔そらごと〕かと知りて信心をも増長せんと】
嘘か真〔まこと〕かを知って、信心をさらに深め、

【退転なくはげみし程に、案に違はず、去ぬる文永八年九月十二日】
退転する事なく励んだところ、思っていた通り、去る文永八年九月十二日に、

【都〔すべ〕て一分の科〔とが〕もなくして佐土国へ流罪せらる。】
全く罪もなく佐渡へ流されることになったのです。

【外には遠流〔おんる〕と聞こへしかども、】
表向きは、遠流と言い伝えられていましたが、

【内には頸〔くび〕を切ると定まりぬ。】
内々では、日蓮の首を斬ると決められていたのです。

【余又兼ねて此の事を推せし故に弟子に向かって云はく、】
私は、この事を前々から予測していたが為に、弟子に向かって言っていたのです。

【我が願既に遂げぬ。悦び身に余れり。】
「私の願いは、今まさに成就したのです。その悦びは、身に余るものがあります。

【人身は受けがたくして破れやすし。】
人間として生まれる事は、難しく、また、その命も、失なわれやすいものです。

【過去遠々劫より由なき事には失ひしかども、】
過去、遠々劫〔おんのんごう〕の昔より無意味な事には、命を失っても、

【法華経のために命をすてたる事はなし。】
法華経の為には、一度も命を捨てた事はないのです。

【我頸を刎〔は〕ねられて師子尊者が絶えたる跡を継ぎ、】
私が首を、はねられる事によって、師子尊者で絶えた付法蔵の跡を継ぎ、

【天台・伝教の功にも超へ、】
天台大師、伝教大師の功績を超えて

【付法蔵の二十五人に一を加へて二十六人となり、】
付法蔵の二十五人に一を加えて、二十六人目となり、

【不軽菩薩の行にも越えて、釈迦・多宝・十方の諸仏に】
不軽菩薩の修行にも優って、釈迦、多宝、十方の諸仏に、

【いかゞせんとなげかせまいらせんと思ひし故に、】
いかにして、この者に報いるべきであるかと嘆かせようと思い、

【言〔ことば〕をもをしまず已前にありし事、】
それ故に言葉も惜しまず、以前にあった事や、

【後に有るべき様を平〔へいの〕金吾に申し含めぬ。】
これから起きるであろう事を平左衛門尉頼綱に言い聞かせ警告したのです。

【此の語〔ことば〕しげければ委細にはかゝず。】
この時の言葉は、煩わしいので詳しくは記さない事とします。

【抑〔そもそも〕日本国の国主となりて、万事を心に任せ給へり。】
そもそも、日本の国主となって、すべてが自分の思うままとなり、

【何事も両方を召し合はせてこそ勝負を決し御成敗〔ごせいばい〕をなす人の、】
何事も公平に両者の言い分を聞き、問題を裁くべき人でありながら、

【いかなれば日蓮一人に限りて、諸僧等に召し合はせずして大科に行なはるらん。】
何故、日蓮一人に限って諸僧と対決させる事もなく大罪に処されたのでしょうか。

【是偏にたゞ事にあらず。たとひ日蓮は大科の者なりとも】
これは全く、ただ事ではありません。たとえ日蓮が大罪の者であったとしても、

【国は安穏なるべからず。】
これでは、国の安穏であろうはずもありません。


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