日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


下山御消息 10 第九章 日蓮にくさに国を滅ぼす


【御式目を見るに、五十一箇条を立てゝ、終はりに起請文を書き載せたり。】
御成敗式目を見ると五十一箇条を立てて、その最後に起請文を載せています。

【第一第二は神事仏事乃至五十一等云云。】
第一条、第二条には、神事、仏事が記され、その他、五十一箇条となっています。

【神事仏事の肝要たる法華経を手ににぎれる者を、】
そうであるのに、神事、仏事の肝要である法華経を手に持った者を、

【讒人〔ざんにん〕等に召し合はせられずして、彼等が申すまゝに頸に及ぶ。】
讒言者にも、会わす事なく、彼等の主張するまま斬首しようとしたのです。

【然れば他事の中にも此の起請文に相違する政道は有るらめども】
それゆえ、他にも、この起請文と相違する政道は、あったでしょうが、

【此は第一の大事なり。】
これこそが政道の最大の問題であり、

【日蓮がにくさに国をかへ、身を失はんとせらるゝか。】
日蓮憎さのあまりに、国を滅ぼし、身を失おうとしているのでしょうか。

【魯〔ろ〕の哀公〔あいこう〕が忘るゝ事の第一なる事を記せらるゝには】
魯の哀公が物忘れの最もひどい例として、

【「移宅〔わたまし〕に妻をわする」云云。孔子の云はく】
転居の際に家に妻を忘れたという故事を記しています。孔子は、

【「身をわするゝ者あり。国主と成りて政道を曲ぐる是なり」云云。】
「身を忘れる者とは、国主となって政道を曲げる者である」と言っています。

【将〔はた〕又国主は此の事を委細には知らせ給はざるか。】
それなのに、国主は、この故事を詳しく知らないのでしょうか。

【いかに知らせ給はずとのべらるゝとも、】
しかし、いくら知らないと云っても、

【法華経の大怨敵と成り給ひぬる重科〔じゅうか〕は脱〔のが〕るべしや。】
法華経の大怨敵となってしまった重罪は、はたして免れる事が出来るでしょうか。

【多宝十方の諸仏の御前にして、教主釈尊の申し口として、】
多宝如来、十方の諸仏の前で教主釈尊が、

【末代悪世の事を説かせ給ひしかば、諸の菩薩記して云はく】
末法悪世の事を説かれたのに対して、諸菩薩がこのように言ったとされています。

【「悪鬼其の身に入って我を罵詈〔めり〕し毀辱〔きにく〕せん、】
「悪鬼がその身に入って、我をあなどり辱めるであろう、

【乃至数々擯出せられん」等云云。】
また、しばしば追放されるであろう」と。

【又四仏釈尊の最勝王経に云はく】
また四仏が釈尊の所説を証明した最勝王経では、

【「悪人を愛敬〔あいぎょう〕し善人を治罰するに由るが故に、】
「悪人を愛し敬い、善人を罰することによって、

【乃至他方の怨賊来たりて国人喪乱〔そうらん〕に遭〔あ〕はん」等云云。】
他国より怨賊が来襲して国の人々は、喪乱に巻き込まれるであろう」と説いてあり、

【たとひ日蓮をば軽賎〔きょうせん〕せさせ給ふとも、】
たとえ国主が日蓮のことを軽蔑しようとも、

【教主釈尊の金言、多宝十方の諸仏の証明は空〔むな〕しかるべからず。】
教主釈尊の金言や多宝如来、十方の諸仏の証明が虚妄であるはずがないのです。

【一切の真言師・禅宗・念仏者等の謗法の悪比丘をば前より御帰依ありしかども、】
今まで、真言師、禅宗、念仏者の謗法の悪僧に、以前から帰依していたとはいえ、

【其の大科を知らせ給はねば少し天も許し、】
それが大罪と知らずに、諸天も国主の罪を多少は許して、

【善神もすてざりけるにや。】
諸天善神もこの国を捨てずにいましたが、

【而るを日蓮が出現して、一切の人を恐れず、】
しかし、日蓮が出現し、謗法のすべての人を恐れる事なく

【身命を捨てゝ指し申さば、】
身命を捨てて、その謗法を指摘すれば、

【賢〔けん〕なる国主ならば子細を聞き給ふべきに、聞きもせず、】
賢明な国主であれば、子細を聞かれるべきであるのに、それを聞きもせず、

【用ひられざるだにも不思議なるに、】
用いられない事すら不可解であるのに、

【剰〔あまつさ〕へ頸に及ばんとせしは存の外の次第なり。】
ましてや首を斬るなど、もっての他では、ないでしょうか。

【然れば大悪人を用ゆる大科、正法の大善人を恥辱〔ちじょく〕する大罪、】
そうであれば、大悪人を用いる罪と、正法の善人を辱める罪、

【二悪鼻を並べて此の国に出現せり。】
二つの悪が轡〔くつわ〕を並べて、この国に出現したのです。

【譬へば修羅〔しゅら〕を恭敬〔くぎょう〕し、日天を射奉るが如し。】
これらは、例えば、修羅を敬って日天を射るようなものなのです。

【故に前代未聞の大事此の国に起こるなり。】
それ故に前代未聞の重大事がこの国に起きたのです。

【是又先例なきにあらず。】
これは、けっして先例のない事ではありません。

【夏〔か〕の桀王〔けつおう〕は竜蓬〔りゅうほう〕が】
夏の桀王は、竜蓬の

【夏が頭〔こうべ〕を刎〔は〕ね、】
頭を刎ね、

【殷〔いん〕の紂王〔ちゅうおう〕は比干〔ひかん〕が胸をさき、】
殷の紂王は、比干の胸を裂き、

【二世王〔せいおう〕は李斯(りし)を殺し、】
秦の二世王は、李斯を殺し、

【優陀延王〔うだえんおう〕は賓頭盧〔びんずる〕尊者を蔑如〔べつじょ〕し、】
優陀延王は、賓頭盧尊者を軽んじ、

【檀弥羅〔だんみら〕王は師子尊者の頸をきる。】
檀弥羅王は、師子尊者の頸を切ったのです。

【武王は慧遠〔えおん〕法師と諍論〔じょうろん〕し、】
北周の武王は、慧遠法師と諍論し、

【憲宗王〔けんそうおう〕は白居易〔はくきょい〕を遠流〔おんる〕し、】
唐の憲宗皇帝は、白居易を左遷し、

【徽宗〔きそう〕皇帝は法道三蔵の面〔かお〕に火印〔かなやき〕をさす。】
栄も徽宗皇帝は、法道三蔵の顔に火印をあてて処刑したのです。

【此等は皆諫暁を用ひざるのみならず、還って怨〔あだ〕を成せし人々、】
これらは、諌暁を聞き入れないばかりか逆に怨みをなして、

【現世には国を亡ぼし身を失ひ、後生には悪道に堕ちぬ。】
現世では、国を失い、身を亡ぼし、後生には、悪道に墜ちた人々なのです。

【是又人をあなづり、讒言〔ざんげん〕を納〔い〕れて】
これもまた善人を軽んじ、讒言のみを聞き入れて、

【理を尽くさざりし故なり。】
道理を尽くさなかった故なのです

【而るに去ぬる文永十一年二月に佐土国より召し返されて、】
そして、去る文永十一年二月、佐渡の国より召し返されて、

【同じき四月の八日に平金吾に対面して有りし時、】
同年四月八日に平左衛門尉と対面した時、

【理不尽の御勘気の由委細に申し含めぬ。】
佐渡流罪が、いかに理不尽な罪であったかを詳しく説き聞かせたのです。

【又恨〔うら〕むらくは此の国すでに】
また、この国が、

【他国に破れん事のあさましさよと歎き申せしかば、】
いよいよ他国に破れようとしているのは、実に情けない事であると嘆いて言うと、

【金吾が云はく、何〔いつ〕の比〔ころ〕か大蒙古は寄せ候べきと問ひしかば、】
平左衛門尉が「いつ頃、大蒙古は、攻め寄せて来るであろうか」と問い質し、

【経文には分明に年月を指したる事はなけれども、】
そこで「経文には、はっきりとした年月を指し示している事はないが、

【天の御気色〔みけしき〕を拝見し奉るに、】
天の様子を拝見してみると、

【以ての外に此の国を睨〔にら〕めさせ給ふか。】
ことの他、この国を睨んでおられるようです。

【今年は一定〔いちじょう〕寄せぬと覚ふ。】
したがって、今年中には、必ず攻めて来ると思われます。

【若し寄するならば一人も面〔おもて〕を向かふ者あるべからず。】
もし、攻めて来たならば、一人も面と向かって立ち向かう者は、いないであろう。

【此又天の責めなり。】
これも、また天の責めなのです。

【日蓮をばわどのばら〔和殿原〕が用ひぬ者なれば力及ばず。】
日蓮の事を、あなた方が用いないのであるから、これも致し方がないのです。

【穴賢穴賢。真言師等に調伏行なはせ給ふべからず。】
間違っても、真言師などに蒙古の調伏を行わせてはなりません。

【若し行なはするほどならば、いよいよ悪しかるべき由】
もし、それを行わせたならば、ますます悪い結果になるであろうという趣旨を

【申し付けて、さて帰りてありしに、】
申しつけて、帰ったのです。

【上下共に先の如く用ひざりげに有る上、】
その後も国の上下共に、これまで同様、私の諫言を用いそうにない上に、

【本より存知せり、国恩を報ぜんがために三度までは諌暁すべし、】
もともと、私は、国の恩に報じる為に、これまでに三度、諫言してきたのですから、

【用ひずば山林に身を隠さんとおもひしなり。】
それでも用いなければ、山林に身を隠そうと決めていたのです。

【又いにしへの本文〔ほんもん〕にも、三度のいさめ用ひずば去れといふ。】
また、古代の書の文にも「三度諌めて聞き入れられなければ去れ」とあり、

【本文に任せて且く山中に罷〔まか〕り入りぬ。】
この文章に従い、しばらく、この身延の山中に入ったのです。

【其の上は国主の用ひ給はざらんに】
こうなった以上、国主が諫言を用いないのに

【其の已下に法門申して何かせん。】
その下に、この法門を話しても、何の意味もなく、

【申したりとも国もたすかるまじ。人も仏になるべしともおぼへず。】
たとえ法門を説いたとしても国も助からず、人々も仏になるとも思えないのです。


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