日蓮正宗法華講開信寺支部より
御書研鑚の集い 御書研鑽資料
四条金吾御消息文 21 檀越某御返事(四条金吾殿御返事)
【檀越某御返事 弘安元年四月一一日 五七歳】
檀越某御返事(四条金吾殿御返事) 弘安元年4月11日 57歳御作
【御文〔おんふみ〕うけ給はり候ひ了〔おわ〕んぬ。】
御手紙を受けたまわりました。
【日蓮流罪して先々〔さきざき〕にわざわいども重なりて候に、】
日蓮を流罪して今まで数々の災いが重なっているのに、
【又なにと申す事か候べきとはをも〔思〕へども、】
また、言われているような事があるとは、思えませんが、
【人のそん〔損〕ぜんとし候には不可思議の事の候へば、】
人は、滅びる時には、考えられないような事をするので、
【さが〔前兆〕候はんずらむ。】
そのような事がないとは、言えません。
【もしその義候わば用ひて候はんには百千万億倍のさいわ〔幸〕いなり。】
しかし、もし、そのような事があれば、百千万億倍も幸運なことです。
【今度ぞ三度になり候。】
今度で流罪も三度になります。
【法華経もよも日蓮をばゆるき行者とわをぼせじ。】
法華経も、まさか日蓮を怠慢な行者とは、思われないでしょう。
【釈迦・多宝・十方の諸仏、地涌千界の御利生、】
釈迦、多宝、十方の諸仏、地涌千界の諸菩薩の御加護を、
【今度みは〔見果〕て候はん。】
今度こそ見極めたいものです。
【あわれあわれさる事の候へかし。】
是非とも、言われているような事が起きることを願っています。
【雪山〔せっせん〕童子の跡ををひ、】
雪山〔せっせん〕童子の跡を継ぎ、
【不軽〔ふきょう〕菩薩の身になり候はん。】
不軽〔ふきょう〕菩薩のような身になりたいものです。
【いたづらにやくびゃう〔疫病〕にやをか〔侵〕され候はんずらむ。】
いたずらに疫病〔えきびょう〕に罹〔かか〕って倒れるか、
【を〔老〕いじ〔死〕にゝや死に候はんずらむ。あらあさましあさまし。】
ただ、老いて死ぬ身です。このまま死んでしまえば、実に嘆かわしく思います。
【願はくは法華経のゆへに国主にあだまれて、今度生死をはなれ候はゞや。】
願わくば、法華経の為に国主に憎まれて、今度こそ、生死を離れたいものです。
【天照太神・正八幡・日月・帝釈・梵天等の仏前の御ちかい、】
天照太神、正八幡大菩薩、日月天、帝釈、梵天王などの仏前の誓いを、
【今度心み候ばや。事々さてをき候ひぬ。】
今度こそ、試してみたいものです。その事は、さて置き、
【各々の御身の事は此より申しはからうべし。】
あれこれ、あなたの事は、これより申し上げます。
【さでをはするこそ法華経を十二時に行ぜさせ給ふにては候らめ。】
そのまま、過ごされている事こそ、法華経を常に行じられている事になるのです。
【あなかしこあなかしこ。】
あなたの法華経に対する志は、まことに恐れ多い素晴らしいものです。
【御みやづかい〔仕官〕を法華経とをぼしめせ。】
たとえ主人から見放されても、その宮仕いを法華経と御考えになってください。
【「一切世間の治生産業は】
天台大師が法華玄義第一巻上に「一切世間の治生〔ちしょう〕産業は、
【皆実相と相違背〔いはい〕せず」とは此なり。】
すべて、実相と違背せず」と説かれているのは、この事なのです。
【かへすがへす御文の心こそをもいやられ候へ。】
重ねて、この文章の心に思いを定めてください。
【恐々謹言。】
恐れながら、謹んで申し上げます。
【四月十一日 日蓮花押】
4月11日 日蓮花押