日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


法華取要抄 6 法華経流布の世に非ず


【疑って云はく、多宝の証明、十方の助舌、】
それでは、多宝如来の証明、十方分身の諸仏の広長舌相の助証、

【地涌の涌出、此等は誰人の為ぞや。】
地涌の菩薩の涌出などは、いったい誰の為に為されたのでしょうか。

【答へて曰く、世間の情に云はく、在世の為と。】
それは、世間の考えにおいては、在世の為と云うでしょうが、

【日蓮が云はく、舎利弗〔しゃりほつ〕・目犍〔もっけん〕等は】
しかし日蓮が思うには、舎利弗や目連など、仏弟子達は、現在をもって論ずれば、

【現在を以て之を論ずれば智慧第一・神通第一の大聖なり。】
智慧第一、神通第一の聖人であり、

【過去を以て之を論ずれば金竜陀仏〔こんりゅうだぶつ〕・】
過去をもって論ずれば、金竜陀仏、

【青竜陀仏〔せいりゅうだぶつ〕なり。未来を以て之を論ずれば】
青竜陀仏であるのです。未来をもって論ずれば、

【華光〔けこう〕如来、霊山〔りょうぜん〕を以て之を論ずれば】
華光如来であり、霊鷲山会の時をもって論ずれば、

【三惑〔さんなく〕頓尽〔とんじん〕の大菩薩、本を以て之を論ずれば】
三惑を断じ尽くした大菩薩なのです。その本地をもって論ずれば、

【内秘外現の古菩薩〔こぼさつ〕なり。】
内に菩薩行を秘め、外には、声聞の姿を現した大菩薩なのです。

【文殊・弥勒等の大菩薩は過去の古仏〔こぶつ〕】
文殊師利菩薩や弥勒菩薩などの、この大菩薩は、過去においては、仏であり、

【現在の応生〔おうしょう〕なり。】
釈尊在世に仮に菩薩として、衆生の機根に応じて出現したのです。

【梵・帝・日・月・四天等は】
大梵天王、帝釈天、日天子、月天子、四天王などの諸天善神は、

【初成已前の大聖なり。】
釈尊の初成道以前からの偉大な聖人であり、

【其の上前四味・四教一言に之を覚〔さと〕りぬ。】
その上、法華経以前に説かれた爾前経を一言で悟ったのです。

【仏の在世には一人に於ても無智の者之〔これ〕無し。】
仏の在世には、一人として無智の者はいなかったのです。

【誰人の疑ひを晴らさんが為に多宝仏の証明を借り、諸仏舌を出だし、】
人々の疑問を解こうとして多宝仏の証明を借り、諸仏の舌を出して、

【地涌の菩薩を召すや。方々〔かたがた〕以て謂〔いわ〕れ無き事なり。】
地涌の菩薩を湧出したのです。それ以外の意味はないのです。

【随って経文に「況滅度後」「令法久住」等云云。】
したがって、経文に「況滅度後」「令法久住」と説かれていますが、

【此等の経文を以て之を案ずるに偏〔ひとえ〕に我等が為なり。】
これらの経文を以て之を思案すると、偏に私たちの為なのです。

【随って天台大師当世を指して云はく】
そこで、天台大師は、現在を指して、

【「後五百歳遠く妙道に沾〔うるお〕はん」と。】
「後五百歳遠く妙道に沾〔うるお〕はん」と言われ、

【伝教大師当世を記して云はく、】
伝教大師は、現在を指して守護国界章に、

【「正像稍〔やや〕過ぎ已〔お〕はって末法太〔はなは〕だ近きに有り」等云云。】
「正法、像法時代は、過ぎ終わって、末法は、はなはだ近きに有り」と述べ、

【「末法太有近」の五字は我が世は法華経流布の世に非ずと云ふ釈なり。】
伝教大師が自ら生きている時代が、法華経流布の時ではないと嘆いているのです。


ページのトップへ戻る