日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


戒法門 第二章 不妄語戒


【殊には不妄語戒を委〔くわ〕しく申すべし。】
ここからは、不妄語戒を詳しく説明しましょう。

【妙楽大師提謂経〔だいいきょう〕を引いて云はく「不妄語戒は四時の如し。】
妙楽大師は、提謂経〔だいいきょう〕を引いて「不妄語戒は、四季の如し。

【土は中央に主たり。中央は脾に主たり。脾の臓は身と土となり。】
土は、中央に主たり。中央は、脾臓〔ひぞう〕に主たり。脾臓は、身と土であり。

【四季に主たり。不妄語戒も四季に遍す。身には五根に遍す」と。】
四季に主たり。不妄語戒も四季に遍す。身には、五根に遍す」と説かれています。

【五戒を破る中に不妄語戒を破るは罪深き戒にて候。】
五戒を破る中に不妄語戒を破るは、特に罪深き戒なのです。

【其の故は世間の人妄語し候へば、冬は夏になり、春は秋になり候。】
その理由は、世間の人が妄語すれば、冬は、夏になり、春は、秋になります。

【故に冬温かにして草木出生して花さき菓ならず。】
それ故に冬は、暖かくなり、草木が生えて花が咲き、実はならないのです。

【夏はさむくて物そだたず。春・秋も此を以て知るべし。】
夏は、寒くて物は、育たないのです。春も秋も、これによって知るべきです。

【当時の世間是〔これ〕体〔てい〕に候はずや。】
現在の世間も、このような状態ではないでしょうか。

【態〔わざ〕と妄語をさせて世の中を損じさし、】
わざと妄語を放って世の中を狂わせ、

【人をも悪道に堕とさん料〔りょう〕に、天狗外道】
人を悪道に堕とそうと企〔くわだ〕て、外道である修験道〔しゅげんどう〕の天狗、

【平形〔ひらがた〕の念珠を作り出だして、】
珠が偏平で四角形の平形〔ひらがた〕の念珠を作り出して、

【一遍の念仏に十の珠数〔たま〕を超〔く〕りたり。】
一遍の念仏に十の数珠〔じゅず〕を数え送るのです。

【乃至一万遍をば十万遍と申す。】
また、一万遍を十万遍と言い張るのです。

【是念珠の薄く平たき故なり。】
これは、念珠が薄く平たいから出来るのです。

【是も只申すにあらず。】
これも、ただ非難しているのではないのです。

【念珠を超るに平数珠を禁めたる事諸経に多く候。】
念珠を数え送るのに、平数珠を禁止する事は、諸経に多くあるのです。

【繁き故に但一・二の経を挙ぐ。】
煩雑なので、ここでは、その中の一つ二つの経を挙げます。

【数珠経に云はく「応に母珠を越ゆべからず、過〔とが〕諸罪に越ゆ。】
数珠経には「応に母珠を越えるべからず、過〔とが〕諸罪に越える。

【数珠は仏の如くせよ」と。勢至菩薩経に云はく】
数珠は、仏の如くせよ」とあります。勢至〔せいし〕菩薩経には

【「平形の念珠を以〔もち〕ふる者は此は是外道の弟子なり、我が弟子に非ず。】
「平形の念珠をもちいる者は、これは、これ外道の弟子なり、我が弟子に非ず。

【我が遺弟〔ゆいてい〕は必ず円形の念珠を用ゆべし。次第を超越する者は】
我が遺弟〔ゆいてい〕は、必ず円形の念珠を用いるべし。次第を超越する者は、

【因果妄語の罪に依って当に地獄に堕すべし」云云。】
因果妄語の罪に依って当に地獄に堕すべし」と説かれています。

【此等の文意を能く能く信ずべし。】
これらの文章の意味を、よくよく信じるべきです。

【平たき念珠を持ちて虚事をすれば、】
平たい念珠を持〔たも〕って、虚事をすれば、

【三千大千世界の人の食を奪ふ罪なり。】
三千大千世界の人の食を奪ふ罪となるのです。

【其の故は世間の人虚事をする故に、春夏秋冬たがひて】
その故は、世間の人が虚事をする故に、春夏秋冬がおかしくなって、

【世間の飢渇〔けかち〕是より起こり、】
世間の飢饉〔ききん〕は、これによって起こり、

【人の病これより起こる。是偏〔ひとえ〕に妄語より始まれるなり。】
人の病もこれによって起こるのです。是偏〔これひとえ〕に妄語より始まるのです。

【かう申すとも、此の世の中の人は心なを〔治〕るまじく候へども、】
このように言うのも、この世の中の人の心は、治らなくても、

【又心有らん人はさては僻事〔ひがごと〕にこそ有るなれと知らしめんが為に】
心がある人に、これは、虚偽ではないかと知らせる為に、

【経文を挙げ候。】
あえて、経文を挙げたのです。

【又世間の念仏者、現〔げ〕に夢に智者見えたりけるなんど申し候ぞ。】
また、世間の念仏者は、現実に夢の中で智者が見えたなどと言っているのです。

【天狗の見せたる夢なり。只道理と経文とを本とすべし。】
これこそ、天狗が見せた夢なのです。ただ、道理と経文を本とすべきなのです。

【又木・火・土・金・水も五戒なり。】
また、陰陽五行説〔いんようごぎょうせつ〕の木、火、土、金、水も五戒なのです。

【木をば曲直と云って、まがれるもあり、なおきもあり、】
木を曲直と言って、曲線の木もあり、直線の木もあり、

【少陽〔しょうよう〕とかたどれるなり、】
陰陽五行説の少陽〔しょうよう〕の範疇〔はんちゅう〕なので、

【故に春生ず。】
それ故に季節は、草木によって春を迎えることが出来るのです。

【火をば炎上と申して空へのぼる、ものを熱するなり。】
また、火を炎上と言って空へ昇り、物を熱するのです。

【五穀の火にあひて飯〔いい〕となるが如し。】
それで、五穀が火によって飯となるのです。

【太陽とかたどれる故に、極めてあたゝかなり。】
陰陽五行説の太陽の範疇〔はんちゅう〕にあるので、極めて暖かいのです。

【土と云ふ物は社稷〔しゃしょく〕と云って、】
土と言う物は、土地の神と五穀の神の社稷〔しゃしょく〕と言って、

【万〔よろず〕の物をわ〔涌〕かし出だすなり。これ又少陽なり。】
万物を出現させるのです。これも、また、少陽の範疇〔はんちゅう〕なのです。

【金〔かね〕は禁めとなる。】
金〔かね〕は、禁めとなります。

【是少陰〔しょういん〕の物なるが故にかたし。】
これは、少陰〔しょういん〕の範疇〔はんちゅう〕なので硬いのです。

【物のおこりを禁むるなり。】
物が起こるのを禁じるのです。

【水をば潤下〔じゅんか〕と云って、物をうるを〔潤〕し、やしな〔養〕ふなり。】
水を潤下〔じゅんか〕と言って、物を潤〔うるお〕し、養〔やしな〕うのです。

【陰の終〔つい〕にはと〔融〕くる故に水なり。】
陰の最後には、融〔と〕けて液体になり、すべて水になるのです。

【又五行の相生〔そうしょう〕と云ふ事あり。】
また、五行の相生〔そうしょう〕と言う事があります。

【木より火生じ、火より土生じ、土より金生じ、金より水生ず。】
木より火が生じ、火より土が生じ、土より金が生じ、金より水が生じるのです。

【是は常の人のしるところなり。】
これは、常に人の知るところです。

【又水は太陰〔たいいん〕の物にして、くらかるべき物なり、】
また、水は、太陰〔たいいん〕の範疇〔はんちゅう〕であり、暗い物なのです。

【何の意ぞ、水の底あか〔明〕きや。】
どうして、水の底が明るい事があるでしょうか。

【木は少陽の物なれば少しあか〔明〕ゝるべし、】
木は、少陽の範疇〔はんちゅう〕にあるので、少し、明かるいのです。

【何の意ぞ、木の中くら〔暗〕きや。】
どうして、木の中が暗いことがあるでしょうか。

【火は太陽の物なれば大いにあかゝるべし、】
火は、太陽の範疇〔はんちゅう〕にあるので、非常に明るいのです。

【何の意ぞ、火の中暗きや。】
どうして、火の中が暗いことがあるでしょうか。

【土は少陽の物、少しあたゝかなるべし、】
土は、少陽の範疇〔はんちゅう〕にあるので、少し暖かなのです。

【何の意ぞ、ひゆるや。】
どうして、冷たい事があるでしょうか。

【金は少陰の物、少しくらかるべし、】
金は、少陰の範疇〔はんちゅう〕にあるので、少し暗いのです。

【何の意ぞ、すこしあかきや。】
どうして、少し明るい事があるでしょうか。

【此等は智者の知るところなり、繁き故に注せず。】
これらは、智者の知るところであり、煩雑になるので、これ以上は、解説しません。

【又五行の相剋〔そうこく〕と云ふ事あり。】
また、五行の相剋〔そうこく〕と言う事があります。

【木の敵〔かたき〕は金なり。金は勝ち、木は負くる故なり。】
木の敵〔かたき〕は、金なのです。金は、勝ち、木は、負けるのです。

【春と秋とは敵対の季、東と西とは敵対の方なり。】
春と秋とは、敵対の季節であり、東と西とは、敵対の方角に成ります。

【火の敵は水なり。水は勝ち、火は負くる故なり。】
火の敵は、水なのです。水は、勝ち、火は、負けるのです。

【夏と冬とは敵対の季、南と北とは敵対の方なり。】
夏と冬とは、敵対の季節なのです。南と北とは、敵対の方角なのです。

【土の敵は木、木は勝ち、土は負くる故なり。】
土の敵は、木、木は、勝ち、土は、負けるのです。

【木と金と合ふて金のか〔勝〕つ事は、堅きと和らかなるとの故なり。】
木と金と合って、金が勝つ事は、硬さと柔らかさによるのです。

【火と水と合ふて火の水の負くる事は、】
火と水と合って、火が水に負ける事は、

【あたゝ〔暖〕かなるとつめ〔冷〕たきとの故なり。】
暖かさと冷たさによるのです。

【土と木と合ふて木に土の負くる事は、多と一との故なり。】
土と木と合って、木に土が負ける事は、多数と単数とによるのです。

【土は的の如し。木の土をとを〔徹〕る時、】
土は、的のようであり、木は、土を通る時、

【土五つにわれ、木は箭〔や〕の如くしてとを〔徹〕るなり。】
土は、五つに割れ、木は、矢のように通るのです。

【我等が眼は木より生ず。耳は水より生ず。鼻は金より生ず。】
私たちの眼は、木より生じ、耳は、水より生じ、鼻は、金より生じるのです。

【舌は火より生ず。身は土より生ずるなり。】
舌は、火より生じ、身は、土より生じるのです。

【上の五行をもて五根の損ずるを知って、病の有〔あ〕り様〔さま〕を知るべし。】
上の五行により、五根が損なわれる事を知って、病の状態を知る事が出来るのです。

【又五根の損ずるは、五戒の破るゝ故なり。】
また、五根が損なわれるのは、五戒を破るからなのです。

【させる虚事〔そらごと〕をせぬ人も、あまりにすき物を好めば、】
どれほど虚事〔そらごと〕をしない人も、あまりに酸っぱい物を好めば、

【舌損じ身に瘡〔かさ〕多し。】
舌を損ない、身体に瘡〔かさ〕が多くなるのです。

【させる物をば殺さねども、辛き物を多く食すれば眼〔まなこ〕損ず。】
どれほど物を殺さなくても、辛き物を多く食べれば、眼〔まなこ〕を損なうのです。

【是を以て余の戒をも知るべし。】
これを以って、他の戒も知るべきです。

【人目には五戒を持ちて貴き様なれども、】
人の目には、五戒を持〔たも〕って、尊き人であるように見えても、

【食物に五戒を破りて三悪道の主となり、】
食物で五戒を破って、三悪道の主となり、

【人には善を疑はせ、我は仏法を恨む。】
人には、善を疑わせ、自らは、仏法を恨むのです。

【此の比〔ごろ〕の世間の人、大旨〔おおむね〕是に似たり。】
この頃の世間の人は、大体、これに似ています。

【戒を習はんと思はん者、能く能く我が身を知るべきなり。】
戒を習おうと思う者は、よくよく、このような自分の身体を知るべきなのです。

【春七十二日は木勝つ故に、】
春の七十二日は、木が勝つ故に、

【我が身に瘡出でて身かゆ〔痒〕し。】
我が身に瘡〔かさ〕が出来て、身が痒〔かゆ〕いのです。

【夏七十二日は火勝つ故に、我が身熱して汗たる。】
夏の七十二日は、火が勝つ故に、我が身が熱して汗が出るのです。

【秋七十二日は風勝つ故に、】
秋の七十二日は、風が勝つ故に、

【我が身すさ〔凄〕まじく秋風に身損ず。】
我が身が凄〔すさ〕まじく秋風に身を損なうのです。

【冬七十二日は水勝つ故に、我が身寒くつめ〔冷〕たし。】
冬の七十二日は、水が勝つ故に、我が身が寒く冷めたいのです。

【四季の土用には土勝つ故に、我が身ふとる。又我が身の肉は】
四季の土用には、土が勝つ故に、我が身が太るのです。また、我が身の肉は、

【土、骨の汁は水、血は火、皮は風、筋毛〔すじけ〕は木なり。】
土、骨の汁は、水、血は、火、皮は、風、筋毛〔すじけ〕は、木なのです。

【又臍〔へそ〕より下は土、臍より上〔うえ〕胸さきまでは水、】
また、臍〔へそ〕より下は、土、臍〔へそ〕より胸までは、水、

【胸さきより上喉までは火、喉より口までは風と金となり、】
胸より喉〔のど〕までは、火、喉〔のど〕より口までは、風と金となのです。

【口より上頂〔いただき〕までは木と空となり、是も五戒なるべし。】
口より上、頭までは、木と空であり、これも、また五戒なのです。

【又三千世界も五戒を以て作れるなり。】
また、三千世界も五戒によって、これが作られているのです。

【火と空とは我が頭と腰となり、大海は腹なり。】
火と空とは、我が頭と腰であり、大海は、腹なのです。

【春と夏とは脇なり、秋と冬とは背なり。】
春と夏とは、脇〔わき〕であり、秋と冬とは、背なのです。

【大骨の十二は十二月なり、少骨の三百六十は三百六十日なり。】
大骨の十二は、十二月であり、少骨の三百六十は、三百六十日なのです。

【口の気〔いき〕は空の風なり、鼻の気は谷の風なり、】
口の呼吸は、空の風であり、鼻の息は、谷の風であり、

【身の毛孔の風は家の風なり。右の眼は月、左の眼は日なり。】
身の毛孔の風は、家の風なのです。右の眼は、月、左の眼は、日なのです。

【髪は星なり、眉は北斗なり。】
髪は、星であり、眉は、北斗七星であり、

【血脈は江河なり、骨は玉石なり、身の毛は草木なり。】
血脈は、江河であり、骨は、玉石であり、身の毛は、草木なのです。

【我が身より一切の人間、】
我が身より、すべての人間、

【乃至依報の国土まで五戒を以て作れるなり。】
さらには、依報の国土まで、五戒によって作られているのです。

【故に世間に物を殺す事多ければ、】
それ故に世間において、生き物を殺す事が多くなれば、

【東の木、星と変じて彗星と成りて空に出づ。】
東の木が、星と変じて、彗星と成って空に出て来るのです。

【此の時春の草木お〔生〕ひとゞ〔止〕まる。】
この時、春の草木の成長は、止まってしまうのです。

【又此の星人間に下りて、人の眼より入って眼の病となる。】
また、この星が人間に下りて来て、人の眼より入って、眼の病となるのです。

【世間に偽り多ければ、】
世間に嘘〔うそ〕や偽〔いつわ〕りが多くなれば、

【中央の土、星と変じて彗星と成りて空に出づ。】
中央の土が、星と変じて彗星と成って空に出て来るのです。

【此の時大地や〔痩〕せて石となる故に草木お〔生〕ひず。】
この時、大地が痩せて石となる故に、草木が成長しないのです。

【又此の星下りて人の口を病ましむ。】
また、この星が下って、人の口の病になるのです。

【世間に盗人多ければ、西の金、星と変じて彗星と成りて、】
世間に盗人が多くなれば、西の金が星と変じて彗星と成り、

【空に出づる時秋の菓すくなし。】
空に出る時、秋の実が少なくなるのです。

【又此の星下りて人の鼻に入りて病となり、】
また、この星が下って、人の鼻に入り、病となって、

【戦〔いくさ〕あて世の乱れとなる。】
戦〔いくさ〕が起こり、世の乱れとなるのです。

【世間に酒をのむ者多ければ、】
世間に酒を飲み、おかしくなる者が多くなれば、

【南の火、星と変じて彗星と成りて空に出づ。】
南の火が星と変じて彗星と成り、空に出て来るのです。

【此の時旱魃〔かんばつ〕有りて草木か〔枯〕るゝ。】
この時は、干ばつがあって、草木が枯れてしまうのです。

【又此の星人身の内に入りて疫病〔やくびょう〕世に多し。】
また、この星が人身の中に入って、疫病〔やくびょう〕となるのです。

【世間に邪淫多ければ、北の水、星と変じて彗星と成りて空に出づる時、】
世間に邪淫が多くなれば、北の水が星と変じて彗星と成って空に出て来るとき、

【大水世間に行き、此の星人の耳より入りて身のひゆる病となれり。】
大水が世間に出て、この星が人の耳より入って、身が冷える病と成るのです。

【五戒破れて世間の五穀〔ごこく〕損ずれば、身の五臓もよはく成り、】
この五戒が破れて世間の五穀〔ごこく〕を損なえば、身の五臓も弱く成り、

【五神も栖〔すみか〕を失ふ。】
五神も栖〔すみか〕を失うのです。

【此の故に五つの鬼神身に入って人の心を誑〔たぶら〕かすなり。】
それ故に、五つの鬼神が身に入って、人の心を誑〔たぶら〕かすのです。

【日月の光も失せて天地の禍〔わざわ〕ひとなり、後生〔ごしょう〕には】
日月の光も消えて、天地の禍〔わざわ〕いとなり、後生〔ごしょう〕には、

【五戒の大地破るゝ故に三悪道を栖とす。】
五戒の大地が破れる故に、三悪道を栖〔すみか〕とするのです。

【臨終には顛倒〔てんどう〕して只此の事にあえり。】
臨終では、顛倒〔てんどう〕し、ただ、この事に会うのです。

【上の五戒は名目〔みょうもく〕は提謂経に出でたりといへども、】
上の五戒は、その名称は、提謂〔だいい〕経に出ていると言っても、

【意は止観・真言の道理を以て書けるなり。】
その意味は、摩訶止観や真言に道理として、書いてあるのです。

【善導の釈にも仁・義・礼・智・信、地・水・火・風・空の名計りは】
善導の解釈書にも、仁義礼智信、地水火風空の名前ばかりは、

【挙げたりといへど〔雖〕も、其の義理なし。】
挙げてあっても、その義の意味は、書いてないのです。

【又浄土宗の学者も知ることあた〔能〕はず。】
また、浄土宗の学者も、それを知ることが出来ないのです。

【是〔これ〕体〔てい〕に知らずと云ふとも、浄土に生まれなんや。】
このような状態で、それを知らずとも、浄土に生まれる事ができるのでしょうか。

【暫く小善成仏と申すは是体に候なり。】
法華文句第六巻上にある人天の小善成仏と言うのは、このような事なのです。

【浄土宗の学者、伝教大師の釈を引けども、】
浄土宗の学者が、伝教大師の法華文句などの解釈書を引いても、

【末法には持戒の者なしと云ふ釈の意を知らずして、】
末法には、持戒の者などいないと言う解釈書の意味も知らず、

【人々を迷はす法門なり。恐るべし恐るべし。】
人々を迷わす法門なのです。これを恐るべきです。


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