御書研鑚の集い 御書研鑽資料
色心二法抄 第一章 即身成仏の理
【色心二法抄 寛元二年九月一七日 二三歳】
色心二法抄 寛元〔かんげん〕2年9月17日 23歳御作
【先〔ま〕づ止観・真言に付いて】
まず、摩訶止観、真言に付いて、
【此の旨を能〔よ〕く能く意〔こころ〕得〔う〕べきなり。】
この主旨をよくよく心得るべきです。
【先づ此の旨を意〔こころ〕得〔え〕ば、大慈悲心・菩提心を意得べし。】
まず、この主旨を心得れば、大慈悲心、菩提心を心得るべきです。
【其の故如何〔いかん〕となれば、世間の事を案ずるも、】
その故は、何故かと言うと世間の事を思案しても、
【猶〔なお〕心をしづ〔鎮〕めざれば意得難し。】
なお、心を鎮〔しず〕めなければ、心得難いのです。
【何に況んや、仏教の道、生死〔しょうじ〕の二法を覚〔さと〕らんことは、】
ましてや、仏教の道理、生死〔しょうじ〕の二法を覚〔さと〕ろうと思うならば、
【道心〔どうしん〕を発〔お〕こさずんば協〔かな〕ふべからず。】
求道心を発〔お〕こさなければ、それは、かなわないのです。
【道心とは、無始より不思議の妙法蓮華経の色心〔しきしん〕、】
求道心とは、無始より不思議の妙法蓮華経の色心〔しきしん〕、
【五輪・五仏の身を持〔たも〕ちながら迷ひける事の悲しきなり。】
三世諸仏の身を持〔たも〕ちながら、それに迷う事を悲しむ心なのです。
【如何〔いか〕にしても此の旨を能く能く尋ぬべきなり。】
どうしても、この事を、よくよく考えて見るべきなのです。
【三世の諸仏も世に出でましましては、】
三世の諸仏が世に出たのは、
【先づ如何にしても此の理を説き知らせばやと思〔おぼ〕し食〔め〕す。】
まず、どうしても、この道理を説き、衆生にわからせようと思ったのです。
【又大日如来も是を一大事と思し食して、】
また、大日如来も、これを一大事と思って、法華経方便品に説かれた
【五輪・五仏の旨を説き、即身成仏の理を顕はし給ふ。】
総諸仏、三世の仏、釈迦牟尼仏の一仏乗を説き、即身成仏の道理を顕わしたのです。
【されば釈迦如来も大日如来も強〔あなが〕ちに歎き思し食しける事は、】
そうであれば、釈迦如来や大日如来が、非常に嘆かわしく思われることは、
【中々一切衆生の迷ひの凡夫、妙法蓮華経の色心をも離れ、】
中々、一切衆生の迷いの凡夫が、妙法蓮華経の色心から離れずに、
【五戒・五智・五仏の正体をも隔〔へだ〕てずば、】
五戒、五智、五仏の正体を間違って理解することがなければ、
【あなが〔強〕ちに仏も歎き思し食すまじきを、】
まったく、仏が歎〔なげ〕くこともないのに、
【妙法蓮華経の色心を持ちながら、】
妙法蓮華経の色心を持〔たも〕ちながら、
【五戒・五智・五仏の正体に無始より迷ひける事を歎き思し食しけるなり。】
五戒、五智、五仏の正体に、無始より迷う事を嘆〔なげ〕かれたのです。
【されば如何〔いか〕にしても迷ひの時も悟りの仏にてありけるぞと、】
そうであれば、如何〔いか〕にしても、迷いの時も、悟りの仏であると云う、
【此の旨を能く能く意得べきなり。】
この主旨を、よくよく心得るべきです。