御書研鑚の集い 御書研鑽資料
顕仏未来記 8 妙法流布を示す
第七章 妙法流布を示す
【妙楽云はく「智人は起を知り】
妙楽大師は、法華文句記に「智者は、ことの起こる由来を知り、
【蛇は自ら蛇を識〔し〕る」等云云。】
蛇は、自ら蛇の道を知っている」と述べています。
【日蓮此の道理を存じて既に二十一年なり。】
日蓮は、この道理を知って、すでに二十一年になります。
【日来〔ひごろ〕の災、月来〔つきごろ〕の難、】
そのため、日ごとに災いを受け、月ごとに難をこうむってきたのです。
【此の両三年の間の事、既に死罪に及ばんとす。】
特に、ここ二、三年の大難においては、死罪にまで及ぼうとしているのです。
【今年今月万が一も身命を脱れ難きなり。】
今年また今月は、万が一にも身命が助からないという状態におかれていますが、
【世の人疑ひ有らば】
世の人々の中で、もし私の言うことについて疑いがあれば、
【委細の事は弟子に之を問へ。】
詳しいことは、私の弟子に問いただしてください。
【幸ひなるかな一生の内に無始の謗法を消滅せんことよ、】
なんと幸運であることか、一生の内に無始以来の謗法の罪業を消滅できるとは。
【悦ばしいかな】
また、なんと悦ばしいことでしょうか、
【未だ見聞せざる教主釈尊に侍〔つか〕へ奉らんことよ。】
いままでに、見聞きすることが、できなかった教主釈尊に御仕えできるとは。
【願はくは我を損ずる国主等をば最初に之を導かん。】
願わくは、日蓮を迫害した国主たちを、まず最初に化導してあげようと思います。
【我を扶〔たす〕くる弟子等をば釈尊に之を申さん。】
日蓮を助ける弟子たちのことを釈尊に申し上げましょう。
【我を生める父母等には】
また、自分をこの世に生んでくださった父母には、
【未だ死せざる已前に此の大善を進〔まい〕らせん。】
亡くなってしまう前に、この大いなる善行をおすすめしましょう。
【但し今夢の如く】
これら、数々の大難によって、今、夢のように、
【宝塔品の心を得たり。】
宝塔品の要諦である六難九易の文章の意味を理解することができました。
【此の経に云はく】
この宝塔品には、
【「若し須弥を接〔と〕って他方無数の仏土に擲〔な〕げ置かんも】
「もし須弥山をつかんで、他方の無数の仏国土に投げることが、できようとも、
【亦未だ難しと為〔せ〕ず。乃至若し仏の滅後に】
それは、それほど難しいことではない。もし、仏の滅度の後、
【悪世の中に於て能く此の経を説かん、】
悪世末法において、よく、この法華経を説いて折伏すると云うことは、
【是則ち難しと為す」等云云。】
これこそ、非常に難しいのである」と説かれています。
【伝教大師云はく「浅きは易く】
伝教大師は、法華秀句〔しゅうく〕に「浅い爾前権教につくことは、簡単であるが、
【深きは難しとは釈迦の所判なり、】
深い法華経を持つことは、困難であると、釈迦は、わかっていたが、
【浅きを去って深きに就〔つ〕くは丈夫の心なり。】
浅い爾前権教を捨てて、深い法華経につくことが、肝心な事なのである。
【天台大師は釈迦に信順し】
これにしたがい、天台大師は、釈尊の言われるとおりに、
【法華宗を助けて震旦〔しんだん〕に敷揚〔ふよう〕し、叡山の一家〔け〕は】
法華宗を助けて、中国に法華経を広宣流布し、比叡山の伝教大師は、
【天台に相承し法華宗を助けて日本に弘通す」等云云。】
天台の法を継承して法華宗を日本に弘通したのである」と述べられています。
【安州〔あんしゅう〕の日蓮は恐らくは三師に相承し】
安房国の日蓮は、恐らくは、釈尊、天台、伝教の三師の仏法を受け継ぎ、
【法華宗を助けて末法に流通せん。】
法華宗を助けて、末法において南無妙法蓮華経を弘めていこうと思っています。
【三に一を加へて三国四師と号〔な〕づく。】
これを、釈尊、天台、伝教の三師に日蓮を加えて、三国四師と名づけるのです。
【南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。】
南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
【文永十年(太歳癸酉)後五月十一日 桑門 日蓮 之を記す】
文永10年5月11日 出家僧日蓮、これを記す