日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


法蓮抄 03 第2章 二乗、菩薩、仏の徳


第2章 二乗、菩薩、仏の徳

【夫〔それ〕人中には転輪聖王〔てんりんじょうおう〕第一なり。】
人の中では、転輪聖王〔てんりんじょうおう〕が第一なのです。

【此の輪王出現し給ふべき前相として、大海の中に】
この転輪聖王が出現される時には、前相として大海の中に

【優曇華〔うどんげ〕と申す大木生〔お〕ひて華さき実〔このみ〕なる。】
優曇華〔うどんげ〕と言う大木が生えて、花が咲き実がなるのです。

【金輪王出現して四天の山海を平らかになす。】
金輪王が出現して、四天下の山海を平らにします。

【大地は綿の如くやはらかに、大海は甘露の如くあまく、】
大地は、綿のように軟らかく、大海は、甘露のように甘く、

【大山は金山、草木は七宝なり。】
大山は、金山に、草木は、七宝となります。

【此の輪王須臾〔しゅゆ〕の間に四天下〔てんげ〕をめぐる。】
この転輪聖王は、一瞬の間に四天下を巡る事が出来ます。

【されば天も守護し、鬼神も来たってつかへ、竜王も時に随って雨をふらす。】
それ故に諸天も守護し、鬼神も来て仕え、竜王も時に従って雨を降らします。

【劣夫〔れっぷ〕なんどもこれに従ひ奉れば須臾に四天下をめぐる。】
駄目な男であっても転輪聖王に従うならば、一瞬で四天下を巡る事が出来るのです。

【是〔これ〕偏〔ひとえ〕に転輪王の十善の感得せる大果報なり。】
これは、ひとえに転輪聖王が、十善を行って感得した大果報なのです。

【毘沙門〔びしゃもん〕等の四大天王は又これには似るべくもなき】
毘沙門などの四大天王は、また転輪聖王には、似るべくもない大王なのです。

【四天下の自在の大王なり。帝釈は忉利天〔とうりてん〕の主、】
四天下の自在の大王であるのです。帝釈天は、忉利天の主であり、

【第六天の魔王は欲界の頂〔いただき〕に居して三界を領す。】
第六天の魔王は、欲界の頂に住して三界を自分の領土としているのです。

【此は上品の十善戒、無遮〔むしゃ〕の大善の所感なり。】
これは、上品の十善戒を持ち、無遮の大善を行って感得したものであるのです。

【大梵天王は三界の天尊、色界〔しきかい〕の頂に居して魔王・帝釈をしたがへ、】
大梵天王は、三界の天尊として、色界の頂に住して第六天の魔王や帝釈天を従え、

【三千大千界を手ににぎる。有漏〔うろ〕の禅定を】
三千大千世界を掌握〔しょうあく〕しているのです。煩悩が有る状態で思索を行じ

【修行せる上に慈悲喜捨の四無量心を修行せる人なり。】
修行した上に、慈、悲、喜、捨の四無量心を修行した人です。

【声聞〔しょうもん〕と申して舎利弗・迦葉等は二百五十戒、】
声聞と言われる舎利弗や迦葉などは、二百五十戒を持ち、

【無漏の禅定の上に苦・空・無常・無我の観をこらし、】
煩悩を断じて思索を行じ、修業した上に、苦、空、無常、無我の観念を凝らして、

【三界の見思を断尽し】
三界の見思〔けんじ〕惑を断ち尽くし、

【水火に自在なり。故に梵王と帝釈とを眷属〔けんぞく〕とせり。】
水や火の中でも自在であり、それ故に大梵天王と帝釈天とを従えています。

【縁覚は声聞に似るべくもなき人なり、仏と出世をあらそふ人なり。】
縁覚〔えんがく〕は、声聞に似るべくもない人で、仏と出世を争う人なのです。

【昔猟師ありき、飢ゑたる世に利吒〔りた〕と申す辟支仏〔びゃくしぶつ〕に】
昔、猟師が、飢饉の世に利吒〔りた〕と言う辟支仏〔びゃくしぶつ〕つまり縁覚に

【ひえ〔稗〕の飯〔はん〕を一盃供養し奉りて、彼の猟師九十一劫が間、】
稗〔ひえ〕の飯を一盃、供養したので、彼の猟師は、九十一劫の間、

【人中天上の長者と生まる。】
人間界や天上界に長者として生まれたのです。

【今生には阿那律〔あなりつ〕と申す天眼〔てんげん〕第一の御弟子なり。】
今生には、阿那律〔あなりつ〕と言う天眼第一の釈尊の弟子となりました。

【此を妙楽大師釈して云はく】
これを妙楽大師は

【「稗飯〔ひはん〕軽しと雖〔いえど〕も所有を尽くし、】
「稗〔ひえ〕の飯は、少ないけれども、持っているものを出し尽くし、

【及び田勝るゝを以ての故に勝るゝ報を得る」等云云。】
そして、それを受ける田が優れている故に優れた果報を得た」と解釈されています。

【釈の心はひえの飯は軽しといへども貴き辟支仏を供養する故に、】
この解釈の心は、稗〔ひえ〕の飯は、少ないけれども、貴い辟支仏に供養した故に、

【かゝる大果報に度々生まるとこそ書かれて候へ。】
このような大果報を得て、度々、世に生まれたのであると解釈し書かれたのです。

【又菩薩と申すは文殊〔もんじゅ〕・弥勒〔みろく〕等なり。】
また、菩薩と言うのは、文殊菩薩や弥勒菩薩などです。

【此の大菩薩等は彼の辟支仏に似るべからざる大人なり。】
この大菩薩などは、かの辟支仏には、似るべくもない素晴らしい人なのです。

【仏は四十二品の無明と申す闇を破る妙覚の仏なり。】
仏は、初住以上の四十二階位で四十二品の無明の闇を破った妙覚の仏なのです。

【八月十五夜の満月のごとし。】
八月十五夜の欠ける事がない満月のようなものです。

【此の菩薩等は四十一品の無明をつくして等覚の山の頂にのぼり、】
この菩薩などは、四十一品の無明を断じ尽くして等覚の山の頂上に登り、

【十四夜の月のごとし。】
十四夜の月のようなものなのです。

【仏と申すは上の諸人には百千万億倍すぐれさせ給へる大人なり。】
仏と言うのは、上の諸人に百千万億倍勝れている素晴らしい人なのです。

【仏には必ず三十二相あり。】
仏には、必ず三十二相が具わっています。

【其の相と申すは梵音声〔ぼんのんじょう〕・無見頂相〔むけんちょうそう〕・】
その相と言うのは、梵音声〔ぼんのんじょう〕、無見頂相〔むけんちょうそう〕、

【肉髻相〔にくけいそう〕・白毫相〔びゃくごうそう〕・】
肉髻相〔にくけいそう〕、白毫相〔びゃくごうそう〕、

【乃至千輻輪相〔せんぷくりんそう〕等なり。】
及び、千輻輪相〔せんぷくりんそう〕などです。

【此の三十二相の中の一相をば百福を以て成じ給へり。】
この三十二相の中の一つ一つを仏は、百福によって得られたのです。

【百福と申すは、仮令〔たとい〕大医ありて日本国、漢土、五天竺の十六の大国・】
百福と言うのは、たとえば、名医がいて、日本、中国、インドの十六の大国、

【五百の中国・十千の小国、乃至一閻浮提・四天下〔てんげ〕・六欲天・乃至】
五百の中国、十千の小国、乃至は、一閻浮提、四天下、六欲天、乃至は、

【三千大千世界の一切衆生の眼の盲〔めしい〕たるを、】
三千大千世界の一切衆生が盲目となっているのを、

【本の如く一時に開〔あ〕けたらんほどの大功徳を一つの福として、】
元のように一時に開けるような大功徳を一つの福として、

【此の福百をかさねて候はんを以て三十二相の中の一相を成ぜり。】
この福を百重ねる事によって、三十二相の中の一相を得たのです。

【されば此の一相の功徳は三千大千世界の草木の数よりも多く、】
それ故に、この一相の功徳は、三千大千世界の草木の数よりも多く、

【四天下の雨の足よりもすぎたり。】
四天下の雨足〔あまあし〕よりも速いのです。

【設〔たと〕ひ壊劫〔えこう〕の時僧佉陀〔そうぎゃだ〕と申す大風ありて、】
たとえ壊劫〔えこう〕の時、僧佉陀〔そうぎゃだ〕と申す大風があって、

【須弥山〔しゅみせん〕を吹き抜いて色究竟天〔しきくきょうてん〕にあげて】
それが、須弥山を色究竟天〔しきくきょうてん〕まで吹き上げて、

【かへ〔還〕て微塵〔みじん〕となす大風なり。】
木っ端微塵〔みじん〕とする大風であっても、

【然れども仏の御身の一毛をば動かさず。】
仏の御身の一毛すら動かすことは、できないのです。

【仏の御胸に大火あり。】
また、仏の胸に大きな熱源があり、

【平等大慧大智光明火坑〔かきょう〕三昧と云ふ。】
それを平等大慧、大智光明、火坑〔かきょう〕三昧と言いましたが、

【涅槃の時は此の大火を胸より出だして一身を焼き給ひしかば、】
涅槃の時、この熱源が胸から出て、一身を焼かれたところ、

【六欲四海の天神・竜衆等、仏を惜しみ奉る故にあつまりて大雨を下〔ふ〕らし、】
六欲天や四大海の天神、竜神などは、仏を惜しんで、集まって大雨を降らし、

【三千の大地を水となし、】
三千大千世界の大地が水に浸り、

【須弥は流るといへども此の大火はきへず。】
須弥山が流れるほどになっても、この大火は、消えなかったのです。

【仏にはかゝる大徳ましますゆへに、】
仏には、このような大徳がある故に、

【阿闍世〔あじゃせ〕王は十六大国の悪人を集め、】
阿闍世王は、十六大国の悪人を集め、

【一四天下の外道をかたらひ、提婆を師として】
一四天下の外道を味方にし、提婆達多を師として、

【無量の悪人を放ちて仏弟子をの〔罵〕りう〔打〕ち、】
無量の悪人を放って、仏弟子を罵〔ののし〕り、打ち、

【殺害せしのみならず賢王にてとが〔失〕もなかりし父の大王を、】
殺害するだけでなく、賢王であって失もない父の大王を、

【一尺の釘をもて七処までうちつけ、はつけ〔磔〕にし、】
一尺の釘で身体の七箇所、打ちつけて磔〔はりつけ〕にし、

【生母をば玉のかんざ〔簪〕しをつかみ、刀を頭にあてし】
さらにまた、母の髪の玉で出来たかんざしをつかみ、刀を頭にあてたのです。

【重罪のつも〔積〕り、悪瘡〔あくそう〕七処に出でて、】
このような重罪が積〔つ〕もり重なって、阿闍世王に悪瘡が七箇所に出き、

【三七日を経て三月七日に大地破〔わ〕れて無間地獄に堕ちて】
三週間を経て、ついに三月の七日に大地が破れ無間地獄に堕ちて、

【一劫を経〔ふ〕べかりしかども、】
一劫の間、苦しまなければ、ならない運命でしたが、

【仏の所〔みもと〕に詣〔もう〕で悪瘡い〔癒〕ゆるのみならず、】
その前に仏の元に参詣したので、悪瘡が癒〔い〕えただけでなく、

【無間地獄の大苦をまぬがれ四十年の寿命延びたりき。】
無間地獄の大苦をもまぬがれ、四十年の寿命を延ばすことができたのです。

【又耆婆〔ぎば〕大臣も御つかひなりしかば、】
また、臣下の耆婆〔ぎば〕大臣も仏の御使いであったので、

【炎の中に入って瞻婆〔せんば〕長者が子を取り出だしたりき。】
炎の中に入って瞻婆〔せんば〕長者の子を取り出すことができたのです。

【之を以て之を思ふに、一度も仏を供養し奉る人は】
これらの事から思うと、一度でも仏を供養した人は、

【いかなる悪人・女人なりとも成仏得道疑ひ無し。】
どのような悪人、女人であっても、成仏得道は、疑いないのです。

【提婆には三十相あり。二相かけたり。】
提婆達多には、三十相が備わっていましたが、二相だけが欠けていました。

【所謂〔いわゆる〕白毫〔びゃくごう〕と千輻輪〔せんぷくりん〕となり。】
いわゆる白毫〔びゃくごう〕と千輻輪〔せんぷくりん〕です。

【仏に二相劣りたりしかば弟子等軽く思ひぬべしとて、】
そこで仏に二相劣っていると、弟子たちが自分を軽んじるであろうと思って、

【螢火〔ほたるび〕をあつめて眉間〔みけん〕につけて白毫と云ひ、】
螢火を集めて眉間につけて、白毫〔びゃくごう〕であると言い抜け、

【千輻輪には鍛冶〔かじ〕に菊形をつくらせて】
千輻輪〔せんぷくりん〕には、鍛冶〔かじ〕に菊の形の鉄下駄を作らせて、

【足に付けて行くほどに足焼けて大事になり、】
足に付けて歩き、その為に鉄で足が焼けて重傷となり、

【結句死せんとせしかば仏に申す。】
結局、死にそうになったので、それを仏に正直に話したのです。

【仏御手〔みて〕を以てなで給ひしかば苦痛さりき。】
仏が手で、そこを撫〔な〕でられると、苦痛は、癒〔い〕えたのです。

【こゝにて改悔〔かいげ〕あるべきかと思ひしに、さはなくして】
これで、悔い改めるであろうと思ったのですが、そうではなくて、

【瞿曇〔くどん〕が習ふ医師〔くすし〕はこざかしかりけり、】
苦痛を癒〔いや〕した仏に対して「瞿曇〔くどん〕が習った医術は、小賢しい、

【又術にて有るなど云ひしなり。】
その場しのぎのものであり、また呪術による治療である」などと言ったのです。

【かゝる敵にも仏は怨〔あだ〕をなし給はず。】
このような敵〔かたき〕に対しても、仏は、怨む事は、ありませんでした。

【何に況んや仏を一度も信じ奉る者をば争〔いか〕でか捨て給ふべきや。】
まして、仏を一度でも信じた者を、どうして見捨てられる事があるでしょうか。


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