日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


諫暁八幡抄 第三章 法華行者への受難傍観を破す


【法華経の第四に云はく「我が滅度の後、】
法華経、第四巻の法師品には「仏の入滅の後に、

【能く竊〔ひそ〕かに一人の為にも法華経を説かん。】
よく、ひそかに一人の為にも法華経を説くならば、

【当に知るべし。是の人は則ち如来の使ひなり。】
まさに、この人は、如来の使いである。

【乃至如来則ち衣を以て之れを覆ひたまふべし」等云云。】
(中略)如来は、すなわち衣をもって、この人を覆われたまう」などとあります。

【当来の弥勒〔みろく〕仏は法華経を説き給ふべきゆへに、】
未来の弥勒〔みろく〕仏は、法華経を説かれるが故に、

【釈迦仏は大迦葉〔かしょう〕尊者を御使ひとして衣を送り給ふ。】
釈迦牟尼仏は、大迦葉尊者を使いとして、衣を贈〔おく〕られたのです。

【又伝教大師は仏の御使ひとして法華経を説き給ふべきゆへに】
また、伝教大師は、仏の使いとして法華経を説かれた故に、

【八幡大菩薩を使ひとして衣を送り給ふか。】
八幡大菩薩を使いとして、衣を贈〔おく〕られたのでしょうか。

【又此の大菩薩は伝教大師已前には】
また、この大菩薩は、伝教大師以前には、

【加水の法華経を服してをはしましけれども、】
水を加えて薄めたような法華経を服されていたのですが、

【先生〔せんじょう〕の善根に依りて大王と生まれ給ひぬ。】
前世の善根により、大王として生まれたのです。

【其の善根の余慶〔よけい〕、神と顕はれて此の国を守護し給ひけるほどに、】
その善根の余光で、神と顕〔あら〕われて、この国を守護されているうちに、

【今は先生の福の余慶も尽きぬ、】
今では、前世の福徳の余光も尽きてしまい、

【正法の味も失ひぬ。】
正法の法味もなくなってしまったのです。

【謗法の者等国中に充満して年久しけれども、】
謗法の者などが国中に充満して、久しくなりますが、

【日本国の衆生に久しく仰がれてなじみ〔親近〕をし、】
日本の衆生に長い間、尊敬され、馴染〔なじ〕んできた為に、

【大科あれども捨てがたくをぼしめし、】
衆生に大罪があっても、見捨て難いと思い、

【老人の不孝の子を捨てざるが如くして】
年を取った者が不幸な子供を見捨てないように、

【天のせめに合ひ給ひぬるか。】
天の責めにあわせたものでしょうか。

【又此の袈裟は法華経最第一と説かん人こそかけまいらせ給ふべきに、】
また、この袈裟は、法華経最第一と説く人こそが懸〔か〕けられるべきで、

【伝教大師の後は第一の座主義真〔ぎしん〕和尚、】
伝教大師の後は、第一代座主、義真〔ぎしん〕和尚は、

【法華最第一の人なればかけさせ給ふ事其の謂〔いわ〕れあり。】
法華最第一とした人なので、その袈裟〔けさ〕を懸〔か〕けられて当然なのです。

【第二の座主円澄大師は伝教大師の御弟子なれども、】
第二代座主、円澄〔えんちょう〕大師は、伝教大師の弟子であっても、

【又弘法大師の弟子なり、すこし謗法にに〔似〕たり。】
また弘法大師の弟子でもあり、少し謗法〔ほうぼう〕の人であるように思えます。

【此の袈裟の人には有らず。】
従って、この袈裟〔けさ〕を懸〔か〕ける人では、ありません。

【第三の座主円仁〔えんにん〕慈覚大師は】
第三代座主の円仁〔えんにん〕慈覚〔じかく〕大師は、

【名は伝教大師の御弟子なれども、心は弘法大師の弟子、】
名前だけは、伝教大師の弟子のようですが、心は、弘法大師の弟子であり、

【大日経第一法華経第二の人なり。】
大日経を第一、法華経を第二とする人なのです。

【此の袈裟は一向にかけがたし。】
この袈裟〔けさ〕を懸〔か〕ける資格は、まったく、ありません。

【設〔たと〕ひかけたりとも法華経の行者にはあらず。】
たとえ懸(か)けたとしても、法華経の行者では、ありません。

【其の上又当世の天台座主は一向真言座主なり。】
そのうえ、また、今の世の天台座主は、完全に真言の座主なのです。

【又当世の八幡の別当〔べっとう〕は】
また、今の世の八幡神社の長である別当〔べっとう〕は、

【或は園城寺〔おんじょうじ〕の長吏〔ちょうり〕、或は東寺の末流、】
園城寺〔おんじょうじ〕の官僚か、あるいは、東寺の関係者なのです。

【此等は遠くは釈迦・多宝・十方の諸仏の大怨敵、】
これらは、遠くは、釈迦、多宝、十方の諸仏の大怨敵〔だいおんてき〕であり、

【近くは伝教大師の讐敵〔しゅうてき〕なり。】
近くは、伝教大師の仇敵〔きゅうてき〕であるのです。

【譬〔たと〕へば提婆達多が】
例えば、提婆達多〔だいばだった〕が

【大覚世尊の御袈裟をかけたるがごとし。】
大覚世尊の袈裟〔けさ〕を懸〔か〕けたようなものであり、

【又猟師が仏衣を被〔き〕て師子の皮をは〔剥〕ぎしがごとし。】
また、猟師が仏の衣を着て、師子の皮を剝〔は〕いだようなものなのです。

【当世叡山の座主は伝教大師の】
現在の比叡山の座主は、伝教大師が

【八幡大菩薩より給ひて候ひし御袈裟をかけて、法華経の所領を奪ひ取りて】
八幡大菩薩から供養された袈裟〔けさ〕を懸〔か〕けて、法華経の領地を奪い取って

【真言の領となせり。】
真言の領地としているのです。

【譬へば阿闍世王〔あじゃせおう〕の提婆達多を師とせしがごとし。】
例えば、阿闍世王〔あじゃせおう〕が、提婆達多を師としたことと同じなのです。

【而るを大菩薩の此の袈裟をはぎ】
そうであるのに、八幡大菩薩が、この袈裟〔けさ〕を剝〔は〕ぎ、

【かへし給はざる、一の大科なり。】
奪い返されないのは、第一の大きな過ちなのです。

【此の大菩薩は法華経の御座にして】
この大菩薩は、法華経の会座で、

【行者を守護すべき由の起請〔きしょう〕をかきながら、】
法華経の行者を守護するとの誓いを書きながら、

【数年が間法華経の大怨敵を治罰せざる事】
数年の間、法華経の大怨敵〔だいおんてき〕を罰しなかったことは、

【不思議なる上、たまたま法華経の行者の出現せるを来たりて】
まったく不思議であるうえに、せっかく法華経の行者が出現したのに、

【守護こそなさゞらめ、我が前にして国主等の怨〔あだ〕する事、】
守護をしないのみならず、国主などが目の前で法華経の行者を迫害して、

【犬の猿をかみ、蛇の蝦〔かわず〕をのみ、鷹の雉〔きじ〕を、】
犬が猿を噛み、蛇が蛙を飲み、鷹が雉〔きじ〕を捕らえ、

【師子王の兎を殺すがごとくするを一度もいまし〔誡〕めず。】
師子が兎を殺すようにしているのを、一度も戒〔いまし〕めず、

【設ひいましむるやうなれども、いつわ〔偽〕りをろかなるゆへに、】
たとえ戒〔いまし〕めるにしても、本心からではない故に、

【梵釈・日月・四天等のせめを、】
梵天、帝釈や日天、月天や四天王などの責〔せ〕めを、

【八幡大菩薩かほり給ひぬるにや。】
八幡大菩薩が受けられたのでしょう。

【例せば欽明〔きんめい〕天皇・敏達〔びだつ〕天皇・用明〔ようめい〕天皇、】
例えば、欽明〔きんめい〕天皇、敏達〔びだつ〕天皇、用明〔ようめい〕天皇という

【已上三代の大王、物部〔もののべの〕大連〔おおむらじ〕・守屋〔もりや〕等が】
三代の大王が、物部〔もののべの〕大連〔おおむらじ〕、守屋〔もりや〕などの

【すゝめに依りて宣旨を下して、】
勧めによって、命令を下〔くだ〕して、

【金銅の釈尊を熱〔や〕き奉り、堂に火を放ち僧尼をせめしかば、】
金銅の釈尊像を焼き、堂に火を放ち、僧や尼僧を責めたので、

【天より火下〔ふ〕りて内裏〔だいり〕をやく。】
天から火が降ってきて、内裏〔だいり〕を焼いてしまったのです。

【其の上日本国の万民とが〔失〕なくして悪瘡〔あくそう〕をやみ、】
そのうえ、日本の万民は、罪なくして悪性の腫物〔はれもの〕ができ、

【死ぬること大半に過ぎぬ。】
死ぬ者が大半を越えたのです。

【結句三代の大王・二人の大臣・其の外多くの王子・公卿〔くぎょう〕等、】
結局、三代の大王、二人の大臣、その他の多くの皇子や公卿などが、

【或は悪瘡、或は合戦にほろび給ひしがごとし。其の時】
悪性の腫物〔はれもの〕か、あるいは、合戦によって滅んでしまい、そのとき、

【日本国の百八十〔ももやそ〕神の栖〔す〕み給ひし宝殿皆熱〔や〕け失せぬ。】
日本の多くの神が住んでいた宝殿は、すべて焼失してしまったのです。

【釈迦仏に敵する者を守護し給ひし大科なり。】
これは、すべて、釈迦牟尼仏に敵対する者を守護した大罪なのです。

【又園城寺は叡山已前の寺なれども、】
また園城寺〔おんじょうじ〕は、比叡山延暦寺以前の寺ですが、

【智証大師の真言を伝へて今に長吏〔ちょうり〕とがう〔号〕す。】
智証〔ちしょう〕大師の真言を伝えている寺で、今は、官営を名乗っています。

【叡山の末寺たる事疑ひなし。】
天台大師の流れをくむ比叡山の末寺であることは、疑いないのに、

【而るに山門の得分たる大乗戒壇を奪ひ取りて】
比叡山にのみ、あるはずの大乗の戒壇を奪い取って

【園城寺に立て叡山に随はじと云云。】
園城寺〔おんじょうじ〕に建立して、比叡山の大乗の戒壇に敵対することは、

【譬へば小臣が大王に敵し、子が親に不孝なるがごとし。】
例えば、小臣が大王に敵対し、子が親に逆らうようなものなのです。

【かゝる悪逆の寺を新羅〔しんら〕大明神みだれがわしく守護するゆへに】
このような悪逆の寺を、新羅〔しんら〕大明神が秩序を乱して守護する故に、

【度々山門に宝殿を焼かるゝがごとし。】
何度も比叡山の僧徒によって、宝殿を焼かれたのです。

【今八幡大菩薩は法華経の大怨敵を守護して】
同様に、今、八幡大菩薩は、法華経の大怨敵〔だいおんてき〕を守護して、

【天火に焼かれ給ひぬるか。】
天の火に焼かれたのでしょう。

【例せば秦の始皇の先祖襄王〔じょうおう〕と申せし王、】
例えば、秦の始皇帝の先祖の襄王〔じょうおう〕という王は、

【神となりて始皇等を守護し給ひし程に、秦の始皇大慢をなして】
神となって始皇帝などを守護しましたが、秦の始皇帝は、大慢心を起こして、

【三皇五帝の墳典をやき、三聖の孝経等を失ひしかば、】
三皇五帝の典籍〔てんせき〕を焼き、三聖の孝経などを失ったので、

【沛公〔はいこう〕と申す人、】
沛公〔はいこう〕という人が剣をもって、

【剣をもて大蛇を切り死〔ころ〕しぬ。秦皇の氏神是なり。】
秦王朝の氏神である大蛇を切り殺したのです。

【其の後秦の代ほどなくほろび候ひぬ。】
その後、秦の代は、間もなく滅びてしまったのです。

【此も又かくのごとし。】
これも、また同じことなのです。

【あき〔安芸〕の国いつく〔厳〕嶋大明神は平家の氏神なり。】
安芸国〔あきのくに〕の厳島〔いつくしま〕の大明神は、平家の氏神ですが、

【平家ををご〔驕〕らせし失〔とが〕に、】
平家を驕〔おご〕らせた罪によって、

【伊勢大神宮・八幡等に神うちに打ち失はれて、】
伊勢大神宮や八幡大菩薩などに神罰を受けて征伐され、

【其の後平家ほどなくほろび候ひぬ。此又かくのごとし。】
その後、平家は、間もなく滅びてしまったのです。これも、また同じなのです。

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