御書研鑚の集い 御書研鑽資料
如説修行抄 3 法華経の行者の大難
第二章 法華経の行者の大難
【其の故は在世は能化の主は仏なり、】
それは、釈尊在世の時、一切衆生を救済するのは、釈尊という素晴らしい仏であり、
【弟子又大菩薩・阿羅漢なり。】
しかも、その弟子は、大菩薩や阿羅漢たちであったのです。
【人天・四衆・八部・人非人等なりといへども、】
また人界、天界の人々、四衆、八部、人非人であっても、
【調機〔じょうき〕調養〔じょうよう〕して】
釈尊は、調機調養といって長い間、衆生に方便の説法をし、修行させたのちに、
【法華経を聞かしめ給ふ、】
最後に真実の法華経を聞かしめたのです。
【尚〔なお〕猶多怨嫉なり。】
しかし、それにもかかわらず、なお怨嫉が多かったのです。
【何に況んや末法今時は】
ましてや、現在の末法の時は、
【教機時刻当来〔とうらい〕すといへども】
宗教の五綱からみて、南無妙法蓮華経と云う正法流布の時が来ているとは言っても、
【其の師を尋ぬれば凡師なり。】
その法を説く師、日蓮を見れば外見は、ただの平凡な僧侶の師匠に過ぎず、
【弟子又闘諍堅固・】
弟子たちも、大集経にあるように、争いばかりをしている闘諍堅固、
【白法隠没・三毒強盛の悪人等なり。】
白法隠没の時代を反映した、貪瞋痴の三毒強盛な衆生なのです。
【故に善師をば遠離し悪師には親近〔しんごん〕す。】
その故に、正師たる日蓮から離れ、諸宗の悪師に近づき親しみがちなのです。
【其の上真実の法華経の如説修行の行者の】
そのうえ、真実の法華経を仏説の如く修行していく日蓮の
【弟子檀那とならんには三類の敵人決定せり。】
弟子檀那となる以上は、三類の敵人が出現することは、間違いのないことなのです。
【されば此の経を聴聞し始めん日より思ひ定むべし、】
だからこそ、この大法を聞き信心を始めた日から覚悟を定めなさい。
【況滅度後の大難の三類甚だしかるべしと。】
釈尊在世以上の恐ろしい三類の敵人が、信心を妨げようとすると言って来たのに、
【然るに我が弟子等の中にも兼ねて聴聞せしかども、大小の難来たる時は】
我が弟子檀那の中には、常にそう聞いてはいても、いざ大小の難が来ると、
【今始めて驚き肝をけして信心を破りぬ。】
今さらのように驚き、肝をつぶして、信心を退転してしまうのです。
【又兼ねて申さゞりけるか、】
このことは、兼ねてから言っておいたことではなかったでしょうか。
【経文を先として猶多怨嫉況滅度後と】
つねづね経文の文証を立て、况滅度後、况滅度後と何度も強調して、
【朝夕教へし事は是なり。】
朝夕に教えてきたことは、こうしたことなのです。
【予が或は所を追はれ】
日蓮が安房の清澄寺を追われたり、また住んでいた松葉が谷〔やつ〕を追われたり、
【或は疵〔きず〕を蒙り、】
小松原の法難で疵を受けたり、
【或は両度の御勘気を蒙りて遠国に流罪せらるゝを】
また幕府のとがめを受けて、伊豆や佐渡の遠国に二度も流罪にあったりしたのを、
【見聞すとも、】
見たり聞いたりしたとしても、それらは前々からわかっていたことであり、
【今始めて驚くべきに非〔あら〕ざるものをや。】
今さら、あらためて驚くようなことではないのです。