御書研鑚の集い 御書研鑽資料
如説修行抄 4 大難と現世安穏
第三章 大難と現世安穏
【問うて云はく、如説修行の行者は】
しかし、仏の説の如く修行する者は、
【現世安穏なるべし、】
薬草喩品にあるように現世安穏であるはずです。
【何が故ぞ三類の強敵盛んなるや。】
それなのに、どうして三類の強敵が現れるのでしょうか。
【答へて云はく、釈尊は法華経の御為に】
過去の法華経の行者の例を見れば、釈尊は、法華経を説くために、
【今度九横の大難に値ひ給ふ。過去の不軽菩薩は】
九横の大難にあわれています。また、過去の像法時代に出現した不軽菩薩は、
【法華経の故に杖木瓦石を蒙り、】
法華経を説くために、杖木で打たれ、瓦や石を投げつけられました。
【竺の道生は】
中国の東晋時代の竺〔じく〕の道生〔どうしょう〕 は、
【蘇山に流され、】
正法弘通のために、呉の国の蘇山に流され、
【法道三蔵は面〔かお〕に火印〔かなやき〕をあてられ、】
宋時代の法道三蔵は、国王を諌めて顔に火印を押され、江南に追放になりました。
【師子尊者は頭〔こうべ〕をはねられ、】
また、中インドの師子尊者は檀弥羅王〔だんみらおう〕に首をはねられ、
【天台大師は南三北七にあだ〔怨〕まれ、】
中国の天台大師は、南三北七の諸師にあだまれ、
【伝教大師は六宗ににく〔憎〕まれ給へり。】
我が国の伝教大師も、南都六宗の人々に憎まれました。
【此等の仏・菩薩・大聖等は法華経の行者として而も大難にあ〔値〕ひ給へり。】
これらの仏、菩薩、大聖は、法華経の行者として大難にあっています。
【此等の人々を如説修行の人と云はずんば、】
これらの仏、菩薩、大聖と云われる人々を如説修行の行者と言わなければ、
【いづくにか如説修行の人を尋ねん。】
いったい、誰を如説修行の行者と言えば良いのでしょうか。
【然るに今の世は闘諍堅固・】
しかも、今末法と云うこの時代は、闘諍の絶えない時代であり、
【白法隠没なる上、】
釈尊の教えの力もなくなったうえに、
【悪国・悪王・悪臣・悪民のみ有りて正法を背きて】
世は、すべて悪国、悪王、悪臣、悪民だけになって、みんな正法に背き、
【邪法・邪師を崇重すれば、】
邪法、邪師を敬い尊び重んじているために、
【国土に悪鬼乱れ入りて三災七難盛んに起これり。】
国土に悪魔、鬼神が乱入して、三災七難が盛んに起こっているのです。
【かゝる時刻に日蓮仏勅を蒙りて】
このような悪世末法の時に、日蓮は、仏意仏勅を受けて、
【此の土に生まれけるこそ時の不祥なれども、】
日本国に生まれ合わせると云う、大変な運命であるけれども、
【法王の宣旨〔せんじ〕背きがたければ】
法王である釈尊の命令に背くわけにもいかないので、
【経文に任せて権実二教のいくさを起こし、】
一身を経文に任せて、あえて権教と実教との折伏の戦いを起こし、
【忍辱の鎧〔よろい〕を著て】
どんな大難をも耐えうる、一切衆生・皆成仏道の忍辱の鎧を着て、
【妙教の剣をひっさ〔提〕げ、】
邪法邪義を打ち破る南無妙法蓮華経の利剣をひっさげ、
【一部八巻の肝心妙法五字のはた〔幡〕を指し上げて、未顕真実の弓をはり、】
法華経一部八巻の肝心たる妙法蓮華経の旗をかかげ、未顕真実の弓を張り、
【正直捨権の箭〔や〕をは〔矧〕げて、】
正直捨権の矢をつがえて、
【大白牛車に打ち乗って】
三大秘法の大白牛車に打ち乗って、法敵をせめ、折伏をしてきたのです。
【権門をかっぱと破り、かし〔彼〕こ〔処〕へを〔押〕しか〔掛〕け】
そして権門を喝破〔かっぱ〕と打ち破り、あちらに押しかけ
【こゝ〔此処〕へを〔押〕しよ〔寄〕せ、】
こちらに押しよせ、
【念仏・真言・禅・律等の八宗・十宗の敵人をせ〔責〕むるに、】
念仏、真言、禅、律の八宗、十宗の謗法の敵人をせめ立てたところ、
【或はに〔逃〕げ、或はひ〔引〕きしりぞ〔退〕き、】
ある者は逃げまどい、ある者は退いて、かたくなに自らの邪法を守ろうとし、
【或は生け取りにせられし者は我が弟子となる。】
あるいは、また日蓮に破られて生け取りにされて、我が門下となったのです。
【域はせめ返し、せめを〔落〕としすれども、】
このように折伏の戦いで、何度も攻め返したり、責め落としたりしましたが、
【敵〔かたき〕は多勢なり、】
権教の信奉者は、多勢であり、
【法王の一人は無勢なり、】
法王である釈尊の手勢は、日蓮ただ一人であるために、
【今に至るまで軍やむ事なし。】
今にいたるまで、戦いが終わることがないのです。
【法華折伏】
しかし、法華経の目的は、折伏であって、
【破権門理の金言なれば、】
どこまでも、権教の理論を破折することが、仏の本意であるから、
【終に権教権門の輩を一人もなくせ〔攻〕めを〔落〕として】
最後には、権教権門を信じている者どもを、一人も残さず折伏して、
【法王の家人となし、天下万民諸乗一仏乗と成りて】
法王の門下となし、天下万民、すべての人々が一仏乗に帰して
【妙法独りはむ〔繁〕昌せん時、】
三大秘法の南無妙法蓮華経が広宣流布すべき時であり、
【万民一同に南無妙法蓮華経と唱へ奉らば、】
また、すべての人々が一同に、南無妙法蓮華経と唱えていくならば、
【吹く風枝をならさず、雨土くれをくだ〔砕〕かず、】
吹く風は、枝をならさず、降る雨も国土を砕かず、
【代はぎのう〔義農〕の世となりて、】
世の中は、平穏で豊かな世界となって、
【今生には不祥の災難を払ひて長生の術を得、】
一生、災難にあわず、長生きできる方法を得るのです。
【人法共に不老不死の理〔ことわり〕】
そして、日蓮大聖人も三大秘法の大御本尊も共に不老不死であると云う理論が
【顕はれん時を各々御らん〔覧〕ぜよ、】
実現するのを、それぞれ御覧ください。
【現世安穏の証文疑ひ有るべからざる者なり。】
その時こそ、現世安穏と云う証文が、事実となって現われることは疑いないのです。