日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


曾谷入道殿許御書 08 第7章 正法外護と法華誹謗の現証


第7章 正法外護と法華誹謗の現証

【予、倩〔つらつら〕事の情〔こころ〕を案ずるに、】
日蓮は、つくづく、その意味を考えると、

【大師、薬王菩薩として霊山会上に侍〔じ〕して、仏、上行菩薩出現の時を兼ねて】
伝教大師が薬王菩薩として、霊鷲山の会座に列し、釈尊が上行菩薩の出現の時を

【之を記〔き〕したまふ故に粗〔ほぼ〕之を喩〔さと〕すか。】
あらかじめ説かれているので、これを説明されたのであろうと思えるのです。

【而るに予、地涌の一分には非ざれども、】
しかし、日蓮は、地涌の菩薩の一分ではないのですが、

【兼ねて此の事を知る。】
かねてから、この事を知っていたのです。

【故に地涌の大士に前立〔さきだ〕ちて粗五字を示す。】
地涌の菩薩の出現に先立って、ほぼ、妙法蓮華経の五字を顕しているのです。

【例せば西王母〔せいおうぼ〕の先相には青鳥〔せいちょう〕、】
例えば、西王母が現れる先相には、青鳥〔せいちょう〕がまず現れ、

【客人〔まろうど〕の来たるには鳱鵲〔かんじゃく〕の如し。】
旅人の来る時には、かささぎが鳴くようなものなのです。

【此の大法を弘通〔ぐづう〕せしむるの法には、】
この大法を弘通するには、

【必ず一代の聖教〔しょうぎょう〕を安置し、】
必ず一代聖教を手元に置いて、

【八宗の章疏〔しょうしょ〕を習学すべし。】
八宗の教論(章)、注釈書(疏)を習学すべきなのです。

【然れば則ち予所持の聖教多々之有りき。】
されば、日蓮の所持する聖教も多くありましたが、

【然りと雖も両度の御勘気〔かんき〕、衆度〔しゅど〕の大難の時、】
二度の迫害や、たびたびの大難によって、

【或は一巻二巻散失し、或は一字二字脱落し、】
一巻二巻を散失したり、または、一字二字を脱落したり、

【或は魚魯〔ぎょろ〕の謬悞〔あやまり〕、或は一部二部損朽〔そんきゅう〕す。】
文字を写し間違えたり、または、一部や二部を破損したのです。 

【若し黙止して一期〔いちご〕を過ぐるの後には、】
もし、このまま一生を過ごしたならば、

【弟子等定んで謬乱〔みょうらん〕出来の基〔もとい〕なり。】
弟子などの間に誤りが生ずる基〔もと〕となるでしょう。

【爰〔ここ〕を以て愚身老耄〔ろうもう〕已前に】
そこで、日蓮が老いる前に、これを調べ、

【之を糾調〔きゅうちょう〕せんと欲す。】
糾〔ただ〕しておきたいと思っているのです。

【而るに風聞の如くんば、貴辺並びに大田金吾殿の】
聞くところによれば、曾谷入道殿と大田金吾殿の

【越中の御所領の内、並びに近辺の寺々に数多〔あまた〕の聖教あり等云云。】
越中の所領内の近辺の寺々に多くの聖教があると言う事です。

【両人共に大檀那たり、所願を成ぜしめたまへ。】
二人は、ともに日蓮の大檀那であり、日蓮の思いを理解して頂きたいと思います。

【涅槃経に云はく「内には弟子有って甚深の義を解〔さと〕り、】
涅槃経には「内には、智慧の弟子有って甚深の義をさとり、

【外には清浄〔しょうじょう〕の檀越〔だんのつ〕有って】
外には、清浄〔しょうじょう〕の檀越〔だんのつ〕有って

【仏法久住〔くじゅう〕せん」云云。】
仏法久住せん」と説かれています。

【天台大師は毛喜〔もうき〕等を相語らひ、】
天台大師は、瓦官寺で法華経を開講、高官、毛喜〔もうき〕などに語って味方にし、

【伝教大師は国道〔くにみち〕・弘世〔ひろよ〕等を恃怙〔たの〕む云云。】
伝教大師は、大友国道〔くにみち〕、和気弘世〔ひろよ〕などを頼まれたのです。

【仁王経に云はく「千里の内をして七難起こらざらしむ」云云。】
仁王経には「千里の内をして、七難、起こらざらしむ」と説かれ、

【法華経に云はく「百由旬〔ゆじゅん〕緒の衰減〔すいげん〕無からしむ」云云。】
法華経陀羅尼品には「百由旬の内に、諸の滅亡、無からしめん」と説かれています。

【国主、正法〔しょうぼう〕を弘通すれば、必ず此の徳を備ふ。】
国主が正法を弘通すれば、必ず、この徳をそなえる事が出来るのです。

【臣民〔しんみん〕等、此の法を守護せんに、】
臣民が、この法を守護して、

【豈〔あに〕家内の大難を払はざらんや。】
どうして家内の大難を払らえない事があるでしょうか。

【又法華経の第八に云はく「所願虚〔むな〕しからず、】
また、法華経第八巻の普賢菩薩勧発品に「所願、虚〔むな〕しからず。

【亦〔また〕現世〔げんぜ〕に於て其の福報〔ふくほう〕を得ん」と。】
また、現世において、その福報を得る」と説かれており、

【又云はく「当〔まさ〕に今世に於て現の果報を得べし」云云。】
同じく普賢菩薩勧発品に「まさに今世において現の果報を得べし」と説かれており、

【又云はく「此の人現世に白癩〔びゃくらい〕の病を得ん」と。】
また同じく普賢菩薩勧発品に「この人、現世に白癩の病いを得る」と説かれており、

【又云はく「頭〔こうべ〕破〔わ〕れて七分と作〔な〕らん」と。】
また、陀羅尼品に「頭破れて七分となる」と説かれています。

【又第二の巻に云はく「経を読誦し、書持すること有らん者を見て、】
また、法華経第二巻の譬喩品に「経を読誦し、書持すること有らん者を見て、

【軽賎〔きょうせん〕憎嫉〔ぞうしつ〕して結恨〔けっこん〕を懐〔いだ〕かん。】
軽賎〔きょうせん〕憎嫉〔ぞうしつ〕して結恨〔けっこん〕を懐く。

【乃至其の人命終〔みょうじゅう〕して阿鼻獄〔あびごく〕に入らん」云云。】
(中略)その人、命終して阿鼻獄に入る」とも説かれています。

【第五の巻に云はく「若し人悪〔にく〕み罵らば、】
また、法華経第五巻の安楽行品に「もし、人、憎み罵〔ののし〕るならば

【口則ち閉塞〔へいそく〕せん」云云。】
口、則ち閉塞〔へいそく〕す」と説かれています。

【伝教大師の云はく「讃ずる者は福を安明〔あんみょう〕に積み、】
また、伝教大師は、依憑集〔えひょうしゅう〕で「讃する者は、福を安明に積み、

【謗ずる者は罪を無間〔むけん〕に開く」等云云。】
謗〔そし〕る者は、罪を無間に開く」などと言っています。

【安明とは須弥山〔しゅみせん〕の名なり、無間とは阿鼻の別名なり。】
ここに安明と言うのは、須弥山の事です。また、無間とは、阿鼻地獄の別名です。

【国主持者を誹謗〔ひぼう〕せば位を失ひ、】
国主が正法の持者を誹謗〔ひぼう〕するならば、その地位を失い、

【臣民行者を毀呰〔きし〕すれば身を喪〔ほろぼ〕す。】
臣民が法華経の行者を非難するならば、身を滅ぼすのです。

【一国を挙〔こぞ〕って用ひずんば、】
一国がこぞって法華経の行者を用いなければ、

【定んで自反〔じほん〕・他逼〔たひつ〕出来せしむべきなり。】
必ず自界叛逆〔ほんぎゃく〕の難、他国侵逼〔しんぴつ〕の難が起こる事でしょう。

【又上品〔じょうぼん〕の行者は大の七難、】
また、上品の行者を謗〔そし〕る者には、大の七難、

【中品〔ちゅうぼん〕の行者は二十九難の内、】
中品の行者を謗〔そし〕れば、二十九難のうちの一つ、

【下品〔げぼん〕の行者は無量の難の随一なり。】
下品の行者を謗〔そし〕った場合は、無量の難のうちの一つが起こる事でしょう。

【又大の七難に於て七人有り。】
また、七つの難が起きるのは、法華経の故に迫害される者が七人いるからなのです。

【第一は日月〔にちがつ〕の難なり。】
その七難の第一は、日月の勢いが節度を失って、季節が狂う日月失度難です。

【第一の内に又五の大難有り。】
第一の難の中には、また五つの難があります。

【所謂日月度〔ど〕を失ひ時節反逆〔ほんぎゃく〕し、】
仁王経に「日月の勢いが節度を失い、時節が反逆し、

【或は赤日〔しゃくじつ〕出で、或は黒日〔こくにち〕出で、】
あるいは、赤い太陽が出て、あるいは、黒い太陽が出て、

【二三四五の日出づ。或は日蝕〔しょく〕して光無く、】
また、二、三、四、五の太陽が同時に出て、また、日蝕が起こって光が無くなり、

【或は日輪一重二三四五重輪現ぜん。】
また、日輪が一重、二、三、四、五重輪と現じる」と説かれている通りなのです。

【又経に云はく「二の月並び出でん」と。】
また、この経文に「二つの月が並び出る」と説かれています。

【今此の国土に有らざるは二の日、二の月等の大難なり。】
今、この国土に起きていないものは、二つの太陽、二つの月などの大難です。

【余の難は大体之〔これ〕有り。】
それ以外の難は、だいたい出現しています。

【今此の亀鏡〔ききょう〕を以て日本国を浮かべ見るに、】
今、これを手本として、今の日本の姿を浮かべて見ると、

【必ず法華経の大行者有らんか。】
必ずや法華経の大行者が出現していることでしょう。

【既に之を謗〔そし〕る者に大罰有り。】
すでに法華経の行者を謗〔そし〕る者には、大罰が出ているのです。

【之を信ずる者何ぞ大福無からん。】
どうして信ずる者に大きな福がないことがあるでしょうか。

【今両人微力を励まし、予が願ひに力を副〔そ〕へ、】
今、二人が互いに励まし合い、日蓮の誓願に力をかして、

【仏の金言を試みよ。経文の如く之を行ぜんに微〔しるし〕無くんば、】
仏の金言を試〔ため〕してみてください。経文のように行じて、現証がなければ、

【釈尊正直の経文、多宝証明の誠言〔じょうごん〕、】
釈尊の「正直捨方便」の文章も、多宝仏が「皆これ真実なり」との証明の言葉も、

【十方分身〔ふんじん〕の諸仏の舌相〔ぜっそう〕、】
十方分身の諸仏が舌を梵天に付けた証明も、

【有言〔うごん〕無実〔むじつ〕と為〔な〕らんか。】
ただの言葉だけで、真実でない事になるでしょう。

【提婆〔だいば〕の大妄語〔もうご〕に過ぎ、】
それは、提婆達多の大妄語にも過ぎ、

【瞿伽利〔くがり〕の大狂言〔おうごん〕に超へたらん。】
瞿伽利〔くがり〕の絵空事をも超えた虚言となるでしょう。

【日月地に落ち、大地反覆〔はんぷく〕し、】
そうであれば、日月は、地に落ちて、大地は、ひっくり返ることでしょう。

【天を仰いで声を発し、地に臥〔ふ〕して胸を押さふ。】
天を仰いで声を発し、地に伏しては、胸を押さえ、

【殷〔いん〕の湯王〔とうおう〕の玉体〔ぎょくたい〕を薪〔たきぎ〕に積み、】
今、日本は、例えば、殷の湯王〔とうおう〕が身体を火に入れ、雨を降らせて消し、

【戒日〔かいにち〕大王の竜顔〔りゅうがん〕を火に入れしも、】
戒日王が燃える伽藍〔がらん〕に身を入れて、火を消したような思いなのです。

【今此の時に当たるか。若し此の書を見聞して宿習〔しゅくじゅう〕有らば、】
今がこの時でしょうか、もし、この手紙を見聞して、過去からの宿縁があるならば、

【其の心を発得〔ほっとく〕すべし。】
必ず、その心を起こすべきです。

【使者に此の書を持たしめ、早々北国に差し遣〔つか〕はし、】
使いの者に、この手紙を持たせて、早々に北国に差し遣〔つか〕わし、

【金吾殿の返報を取りて速々是非を聞かしめよ。】
大田金吾殿の返事を聞いて、速やかに、その結果を知らせて頂きたいと思います。

【此の願ひ若し成ぜば、崑崙山〔こんろんざん〕の玉鮮〔あざ〕やかに】
この願いが、もし成就するならば、崑崙山〔こんろんざん〕の美しい珠〔たま〕が

【求めずして蔵に収まり、大海の宝珠招かざるに】
求めずして我が蔵に収まり、大海の宝珠が招かずに、

【掌〔たなごころ〕に在らんのみ。】
我が手の中に入れる事が出来るようなものなのです。

【恐惶謹言。】
恐れながら謹んで申し上げます。

【下春十日    日蓮花押】
下春十日    日蓮花押

【曾谷入道殿】
曾谷入道殿

【大田金吾殿】
大田金吾殿


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