御書研鑚の集い 御書研鑽資料
阿仏房御息文 02 妙法曼陀羅供養事
【妙法曼陀羅供養事 文永一〇年 五二歳】妙法曼陀羅供養事 文永10年 52歳御作
【妙法蓮華経の御本尊供養候ひぬ。】
妙法蓮華経の御本尊に供養をいたしました。
【此の曼陀羅〔まんだら〕は文字は五字七字にて候へども、】
この曼陀羅は、文字は、五字、七字ですが、
【三世諸仏の御師、一切の女人の成仏の印文なり。】
三世諸仏すべての師であり、すべての女性の成仏を約束する印文であるのです。
【冥途〔めいど〕にはともしびとなり、死出〔しで〕の山にては良馬となり、】
冥途では、灯火〔ともしび〕となり、死出の山では、良い馬となるのです。
【天には日月の如し、地には須弥山〔しゅみせん〕の如し。】
天にあっては、日月のようであり、地にあっては、須弥山のようなものなのです。
【生死海の船なり。成仏得道の導師なり。】
生死の苦海を渡る船であり、成仏得道の為の導師なのです。
【此の大曼陀羅は仏滅後二千二百二十余年の間、】
この大曼陀羅は、仏滅後二千二百二十余年の間、
【一閻浮提〔いちえんぶだい〕の内には未だひろまらせ給はず。】
一閻浮提の内に、いまだ広まっては、いません。
【病〔やまい〕によりて薬あり。】
それは、病気の軽重によって、それに合った薬があるように、
【軽病には凡薬をほどこし、重病には仙薬をあたうべし。】
軽い病〔やまい〕には、凡薬をほどこし、重病には、仙薬を投与すべきであり、
【仏滅後より今までは二千二百二十余年の間は、】
仏滅後から今日に至るまでの二千二百二十余年の間は、
【人の煩悩〔ぼんのう〕と罪業の病軽〔かろ〕かりしかば、】
人の煩悩と罪業との病〔やまい〕が軽かったので、
【智者と申す医師〔くすし〕たちつゞき出でさせ給ひて、】
智者と言う医師達が続いて出現されて、
【病に随って薬をあたえ給ひき。】
その病〔やまい〕に応じて薬を与えられたのです。
【所謂〔いわゆる〕倶舎〔くしゃ〕宗・成実〔じょうじつ〕宗・律宗・】
それが、いわゆる倶舎宗、成実宗、律宗、
【法相宗・三論宗・真言宗・華厳宗・天台宗・浄土宗・禅宗等なり。】
法相宗、三論宗、真言宗、華厳宗、天台宗、浄土宗、禅宗などなのです。
【彼の宗々に一々に薬あり。】
これら宗派には、それぞれ薬がありますが、
【所謂華厳の六相十玄、三論の八不〔はっぷ〕中道〔ちゅうどう〕、】
いわゆる華厳宗の六相十玄、三論宗の八不中道、
【法相の唯識観〔ゆいしきかん〕、律宗の二百五十戒、浄土宗の弥陀の名号、】
法相宗の唯識観、律宗の二百五十戒、浄土宗の阿弥陀仏の名号、
【禅宗の見性〔けんしょう〕成仏、真言宗の五輪観、天台宗の一念三千等なり。】
禅宗の見性成仏、真言宗の五輪観、天台宗の一念三千などが、それにあたります。
【今の世は既に末法にのぞみて諸宗の機にあらざる上、】
今の世は、すでに末法に入っており、諸宗派で治る衆生の機根ではないうえに、
【日本国一同に一闡提〔いっせんだい〕・大謗法の者となる。】
日本国の衆生は、一同に一闡提人、大謗法の者となっているのです。
【又物に譬ふれば父母を殺す罪、謀叛〔むほん)ををこせる科〔とが〕、】
この日本国の衆生の罪は、たとえてみれば、父母を殺す罪、謀叛を起こす罪、
【出仏身血〔すいぶつしんけつ〕等の重罪等にも過ぎたり。】
仏身より血を出すなどの重罪を超える重罪なのです。
【三千大千世界の一切衆生の眼をぬける罪よりも深く、】
三千大千世界の一切衆生の眼を抜いた罪よりも更に罪深く、
【十方世界の堂塔を焼きはらへるよりも超えたる大罪を、】
十方世界の堂塔を焼き払う罪よりも大きな大罪を、
【一人して作れる程の衆生、日本国に充満せり。】
一人で作ったほどの大罪の衆生が、日本国に充満しているのです。
【されば天は日々に眼をいからして日本国をにらみ、】
それゆえ、天は、日々に眼を怒らして日本国を睨み、
【地神は忿〔いか〕りを作して時々に身をふるうなり。】
地神は、怒りをなして常に身を震わせているのです。
【然るに我が朝の一切衆生は皆〔みな〕我が身に科なしと思ひ、】
しかしながら、我が国の一切衆生は、みんな我が身には、罪がないと思い込み、
【必ず往生すべし、成仏をとげんと思へり。】
必ず往生するに違いないと思い、成仏すると思いこんでいるのです。
【赫々〔かくかく〕たる日輪をも目無き者は見ず知らず。】
明るい太陽も目が見えない者には、見ることが出来ません。
【譬へばたいこ〔太鼓〕の如くなる地震をも】
また、太鼓を叩くような大きな地震であっても、
【ねぶ〔眠〕れる者の心にはをぼ〔覚〕えず。】
眠っている者には、覚えがないように、
【日本国の一切衆生も是くの如し。】
日本国の一切衆生もこのようなものなのです。
【女人よりも男子の科はをゝ〔多〕く、男子よりも尼のとがは重し。】
さらに女性よりも男性の罪は、重く、男性よりも尼の罪は、重いのです。
【尼よりも僧の科はをゝく、破戒の僧よりも持戒の法師のとがは重し。】
また尼よりも僧の罪は、重く、破戒の僧よりも持戒の法師の罪が重いのです。
【持戒の僧よりも智者の科はをも〔重〕かるべし。】
その持戒の僧の罪よりも、さらに智者の罪は、重いでしょう。
【此等は癩〔らい〕病の中の白癩〔びゃくらい〕病、白癩病の中の大白癩病なり。】
これらの者は、癩病の中の白癩病、白癩病の中の大白癩病の者なのです。
【末代の一切衆生はいかなる大医いかなる良薬〔ろうやく〕を以てか】
末代の一切衆生には、どのような大医者、どのような良薬であっても、
【治すべきとかんがへ候へば、】
この大重病を治すことが出来るかと考えてみると、
【大日如来の智拳〔ちけん〕印、並びに大日の真言、阿弥陀如来の四十八願、】
大日如来の智拳の印や大日如来の真言、阿弥陀如来の四十八願、
【薬師如来の十二大願、】
薬師如来の十二大願、
【衆病悉除〔しゅびょうしつじょ〕の誓ひも及ぶべからず。】
衆病悉除の誓いも、この重病を治すことが出来ないのです。
【此等の薬をつかはゞ病消滅せざる上、いよいよ倍増すべし。】
この薬では、この病〔やまい〕が消滅しないうえに、ますます倍増するのです。
【此等の末法の時のために、】
このような末法の時のために、
【教主釈尊・多宝如来・十方分身〔ふんじん〕の諸仏を集めさせ給ふて】
教主釈尊は、多宝如来や十方分身の諸仏を集められて、
【一の仙薬をとゞめ給へり。】
一つの仙薬を留め置かれました。
【所謂妙法蓮華経の五の文字なり。】
それが、いわゆる、この妙法蓮華経の五つの文字なのです。
【此の文字をば法慧〔ほうえ〕・功徳林〔くどくりん〕・金剛薩埵〔さった〕・】
そして、この文字は、法慧、功徳林、金剛薩埵、
【普賢〔ふげん〕・文殊〔もんじゅ〕・薬王・観音等にもあつらへさせ給はず。】
普賢、文殊、薬王、観音などの菩薩には、託されなかったのです。
【何〔いか〕に況んや迦葉・舎利弗等をや。】
まして迦葉、舎利弗などの二乗に託されなかったのは、言うまでもないことです。
【上行菩薩等と申して四人の大菩薩まします。】
その為に上行菩薩などの四人の大菩薩がおられるのです。
【此の菩薩は釈迦如来、五百塵点劫〔じんでんごう〕より】
この四菩薩は、釈迦如来の五百塵点劫の
【このかた御弟子とならせ給ひて、】
過去以来、弟子となられて、
【一念も仏をわすれずまします大菩薩を召し出だして授けさせ給へり。】
かたときも仏を忘れなかった大菩薩を召し出して、この五文字を授けられたのです。
【されば此の良薬を持たん女人等をば、】
それゆえ、この五文字の良薬を持つ女性などを、
【此の四人の大菩薩、前後・左右に立ちそひて、】
これら上行等の四人の大菩薩は、前後、左右に寄り添って、
【此の女人たゝせ給へば、此の大菩薩も立たせ給ふ。】
この女性が立たれたならば、同時に、この四大菩薩も立たれるのです。
【乃至此の女人道を行く時は、此の菩薩も道を行き給ふ。】
この女性が道を行く時には、これらの四大菩薩も同行するのです。
【譬へばかげ〔影〕と身と、水と魚と、声とひゞきと、月と光との如し。】
譬えば、影と身と、水と魚と、声と響きと、月と光のようなものなのです。
【此の四大菩薩、南無妙法蓮華経と唱へたてまつる女人をはな〔離〕るゝならば、】
もし、これら四大菩薩が南無妙法蓮華経と唱える女性から離れたならば、
【釈迦・多宝・十方分身の諸仏の】
釈迦、多宝、十方分身の諸仏から
【御勘気〔ごかんき〕を此の菩薩の身に蒙〔こうむ〕らせ給ふべし。】
厳しく注意を受けるのです。
【提婆〔だいば〕よりも罪深く、】
その罪は、提婆達多のそれよりも大きく、
【瞿伽利〔くがり〕よりも大妄語のものたるべしとをぼしめすべし。】
瞿迦利〔くがり〕よりも大妄語に人となると思ってください。
【あら悦ばしや、あら悦ばしや。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。】
なんと嬉しいことでしょうか。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経
【日蓮花押】
日蓮花押