日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


立正安国論 4 正法を誹謗するの由


第三問 誰か一代の教を褊し三宝の跡を廃すと謂はんや

【客色を作〔な〕して曰く、】
客は、大いに怒り、顔色を変えて言いました。

【後漢の明帝〔めいてい〕は金人〔きんじん〕の夢を悟りて】
後漢の明帝が金色に輝く人の姿を夢に見てインドから仏法が来るのを知って、

【白馬の教〔きょう〕を得、】
白馬に経典を乗せて中国に向かっていた二人の高僧に使者を送り、白馬寺を建て、

【上宮〔じょうぐう〕太子は守屋〔もりや〕の逆を誅〔ちゅう〕して】
日本では、聖徳太子が仏教に反対する物部氏の守屋の反逆を押さえて、

【寺塔の構〔かま〕へを成す。】
その後に法隆寺や四天王寺を建て日本仏教興隆の基礎としました。

【爾〔しか〕しより来〔このかた〕、】
それ以来、上は、天皇から、下は、一般庶民に至〔いた〕るまで、

【上一人より下万民に至るまで仏像を崇〔あが〕め経巻を専〔もっぱ〕らにす。】
すべての人々が、仏像を崇め、経巻を尊ぶようになったのです。

【然〔しか〕れば則ち叡山・南都・園城〔おんじょう〕・】
それゆえ比叡山延暦寺、奈良の七大寺、大津の園城寺(三井寺)、

【東寺・四海・一州・五畿・七道〔しちどう〕に、】
京都の東寺(教王護国寺)を始めとして、日本中に

【仏経は星のごとく羅〔つら〕なり、】
仏像と経巻が星のように多く集められて、

【堂宇〔どうう〕雲〔くも〕のごとく布〔し〕けり。】
雲が沸き起こるように寺院が建てられたのです。

【鶖子〔しゅうし〕の族〔やから〕は則ち鷲頭〔じゅとう〕の月を観じ、】
舎利弗の一門である天台宗は、インドの霊鷲山で法華経によって観心観法を修し、

【鶴勒〔かくろく〕の流〔たぐい〕は】
付法蔵の鶴勒夜那〔かくろくやな〕の系統である迦葉〔かしょう〕は、

【亦鶏足〔けいそく〕の風〔ふう〕を伝ふ。】
インドの鶏足山〔けいそくさん〕で正しく経法を伝えています。

【誰〔たれ〕か一代の教〔きょう〕を褊〔さみ〕し】
このように日本において、仏教は、興隆しており、誰が釈尊の一代聖教を軽んじ、

【三宝〔さんぼう〕の跡を廃すと謂〔い〕はんや。】
仏法僧の三宝を絶やしたと云うのでしょうか。

【若し其の証有らば委しく其の故を聞かん。】
その証拠があるならば、詳しくお聞きしたいものです。

第三答 悪侶を誡めずんば豈善事を成さん

【主人喩〔さと〕して曰く、】
その客の強い言葉に主人は、静かに答えました。

【仏閣〔ぶっかく〕甍〔いらか〕を連〔つら〕ね経蔵軒〔のき〕を並べ、】
確かにあなたの言われる通りに、寺は、建ち並び、経蔵も立派であり、

【僧は竹葦〔ちくい〕の如く侶〔りょ〕は稲麻〔とうま〕に似たり。】
また僧侶も、たくさんいて、信者の帰依や寄進も変わらず続いて居ります。

【崇重〔そうじゅう〕年旧〔としふ〕り尊貴〔そんき〕】
また、その権威は、年ごとに増し、尊〔とうと〕ばれる事は、

【日〔ひ〕に新〔あら〕たなり。】
日に日に新たになっております。

【但し法師は諂曲〔てんごく〕にして人倫を迷惑し、】
しかし、実際に、その内実はと言うと、僧侶は、驕り高ぶり、邪義で人を惑わし、

【王臣は不覚にして邪正を弁〔わきま〕ふること無し。】
国王も万民も愚かで、その正邪を見分ける事さえ出来ないのです。

【仁王経に云はく】
仁王経の嘱累品には、

【「諸の悪比丘多く名利を求め、国王・太子・王子の前に於て】
「多くの悪僧がいて自己の名誉や利益の為に国王や王子などの権力者に近づいて

【自〔みずか〕ら破仏法の因縁・破国の因縁を説かん。】
正法を破り、国を滅ぼすような間違った教えを説くであろう。

【其の王別〔わきま〕へずして此の語〔ことば〕を信聴し、】
その王達は、正邪を見分ける事が出来ずに、その間違った言葉を信じ、

【横〔よこしま〕に法制を作りて仏戒に依らず。】
正法を護れと云う仏の戒めに背いて、自分勝手な法律や制度を作る。

【是を破仏・破国の因縁と為す」已上。】
これが、仏法を破り、国を滅ぼす原因となる」と説かれています。

【涅槃経に云はく】
涅槃経の高貴徳王品には、

【「菩薩、悪象等に於ては心に恐怖〔くふ〕すること無かれ。】
「釈迦牟尼仏は、悪象などを少しも恐れる必要はないと菩薩達に言ったが、

【悪知識に於ては怖畏〔ふい〕の心を生ぜよ。】
しかし、悪友は、怖れなければならないと述べた。

【悪象の為に殺されては三趣〔さんしゅ〕に至らず、】
なぜならば、悪象に踏み殺されても地獄、餓鬼、畜生に堕ちる事はないが、

【悪友の為に殺されては必ず三趣に至る」已上。】
悪友の誘いに乗って死ねば必ず、三悪道に落ちるからである」と説かれています。

【法華経に云はく】
法華経の勧持品には

【「悪世の中の比丘は邪智にして心諂曲〔てんごく〕に、】
「悪世の僧達は、邪〔よこしま〕な智恵と、こびへつらいの心をもち、

【未だ得ざるを為〔こ〕れ得たりと謂〔おも〕ひ、我慢〔がまん〕の心充満せん。】
いまだ悟りを得ていないのに悟ったと思い、慢心して傲慢な態度で法を説く。

【或は阿練若〔あれんにゃ〕に納衣〔のうえ〕にして空閑〔くうげん〕に在り、】
また人里離れた閑静な場所で粗末な袈裟を身にまとい寺院に住んで、

【自ら真〔しん〕の道〔どう〕を行〔ぎょう〕ずと謂〔おも〕ひて】
自分は、正しい道を修行していると思って

【人間を軽賎〔きょうせん〕する者有らん。】
人々を低く見下す。

【利養に貪著〔とんじゃく〕するが故に白衣〔びゃくえ〕の与〔ため〕に】
金の為に在家の人々に

【法を説いて、世に恭敬〔くぎょう〕せらるゝこと】
法を説いて、世間から尊敬されようと思い

【六通の羅漢〔らかん〕の如くならん。】
仏教の修行によって不思議な力を得たように振る舞う。

【乃至〔ないし〕常に大衆の中に在りて我等を】
これらは、常に大衆の中にいて、正法を弘める者を

【毀〔そし〕らんと欲〔ほっ〕するが故に、国王・大臣・婆羅門〔ばらもん〕・】
誹謗しようと国王や大臣や外道の者や

【居士〔こじ〕及び余の比丘衆に向かって誹謗〔ひぼう〕して我が悪を説いて、】
邪宗の信者や僧侶に向かって、正法を弘める者の悪行を言いたて、

【是〔これ〕邪見の人外道の論議を説くと謂〔い〕はん。】
これらは、邪見の人であり、外道の説を論議する者であると非難するのである。

【濁劫〔じょっこう〕悪世の中には多く諸の恐怖有らん。】
世の中が乱れ、濁〔にご〕って来ると、さらに多くの畏怖すべき事が有り、

【悪鬼其〔そ〕の身に入って我を罵詈〔めり〕し毀辱〔きにく〕せん。】
悪魔が彼らの身に入って正法を護持する者を罵倒し、辱〔はずか〕しめるであろう。

【濁世〔じょくせ〕の悪比丘は仏の方便随宜〔ずいぎ〕所説の法を知らず、】
濁悪の世界の悪僧は、仏の方便の教えが相手の能力に応じて説かれた事を知らずに

【悪口〔あっく〕して顰蹙〔ひんじゅく〕し】
これに執着して真実の教えを弘める者に眉〔まゆ〕をひそめて悪口を言い、

【数々〔しばしば〕擯出〔ひんずい〕せられん」已上。】
しばしば、住んでいる場所を追い出そうとする」と説かれています。

【涅槃経に云はく】
涅槃経の如来性品にも

【「我涅槃の後〔のち〕無量百歳に四道の聖人悉く復〔また〕涅槃せん。】
「仏が入滅し、その後、長大な時間を経て、仏、菩薩、二乗の四聖もいなくなり、

【正法〔しょうぼう〕滅して】
正法の時代が過ぎ去り、

【後〔のち〕像法の中に於て当に比丘有るべし。】
形ばかりの仏法が残る像法の時代にも、僧侶と称する者がいるであろう。

【持律に似像〔じぞう〕して少〔すこ〕しく経を読誦〔どくじゅ〕し、】
彼らは、形だけ戒律を守っているように見せかけてはいるものの、

【飲食〔おんじき〕を貪嗜〔とんし〕して其の身を長養〔ちょうよう〕し、】
わずかばかりの経を読み、ただ、飲み食いに執着し、

【袈裟〔けさ〕を著すと雖も、猶〔なお〕猟師の細視除行するが如く】
袈裟は、つけているけれども、猟師が細目でそっと獲物に近づくように、

【猫の鼠を伺〔うかが〕ふが如し。】
また、猫が鼠〔ねずみ〕をうかがうように、人々の財産を狙っているのである。

【常に是の言〔ことば〕を唱へん、】
そして、いつも、未だ仏法の悟りを得ていないにも関わらず、

【我〔われ〕羅漢〔らかん〕を得たりと。】
悟りを得たと人々に言いふらすのである。

【外には賢善〔けんぜん〕を現じ】
外見は、聖者のように装〔よそお〕っているけれども、

【内には貪嫉〔とんしつ〕を懐〔いだ〕く。】
その内面は、欲望と嫉妬と慢心で満たされている。

【唖法〔あほう〕を受けたる】
正法によって、その事を問いただしても、それを無視する姿は、

【婆羅門〔ばらもん〕等の如し。】
まるで無言の修行によって悟りを得たと云う外道の姿である。

【実には沙門〔しゃもん〕に非ずして沙門の像を現じ、】
ほんとうは、出家もしてもいないのに、出家したような姿をして、

【邪見熾盛〔しじょう〕にして正法を誹謗せん」已上。】
仏教を外道の邪見でとらえて正法を誹謗する」と説かれています。

【文に就〔つ〕いて世を見るに誠に以て然〔しか〕なり。】
これらの経文から現在の世の中を見てみると、まさに今の仏教界そのものなのです。

【悪侶を誡〔いまし〕めずんば】
このような謗法の僧侶の姿を誡〔いまし〕め、問いたださずに、

【豈〔あに〕善事を成さんや。】
どうして正しい事が出来るでしょうか。


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