御書研鑚の集い 御書研鑽資料
本尊問答抄 4 法華最も其の上に在り
第三章 法華最も其の上に在り
【問うて云はく、法華経を本尊とすると、大日如来を本尊とすると、】
それでは、法華経を本尊とする事と大日如来を本尊とする事は、
【いづれか勝〔まさ〕るや。】
どちらが優れているのでしょうか。
【答ふ、弘法大師・慈覚〔じかく〕大師・智証〔ちしょう〕大師の】
それは、弘法大師、慈覚大師、智証大師の
【御義の如くならば、大日如来は勝れ、法華経は劣〔おと〕るなり。】
主張する通りであれば、大日如来が優れており、法華経が劣っているのです。
【問ふ、其の義如何。答ふ、弘法大師の秘蔵〔ひぞう〕宝鑰〔ほうやく〕・】
それでは、その通りではないのですか。それは、弘法大師の秘蔵宝鑰、
【十住心に云はく「第八法華、第九華厳、第十大日経」等云云。】
十住心論には、「第八法華、第九華厳、第十大日経」とあり、
【是は浅きより深きに入る。】
これは、浅い教えから深い教えへと順番に並べたものではないのですか。
【慈覚大師の金剛頂〔こんごうちょう〕経の疏〔しょ〕・】
また慈覚大師の金剛頂経疏、
【蘇悉地〔そしっじ〕経の疏・智証大師の大日経の旨帰〔しき〕等に云はく】
蘇悉地経疏、智証大師の大日経旨帰には、
【「大日経第一、法華経第二」等云云。】
「大日経第一、法華経第二」と説かれています。
【問ふ、汝が意如何。】
それでは、この順番について、あなたの考えはどうなのですか。
【答ふ、釈迦如来・多宝仏総じて十方の諸仏の御評定に云はく】
それは、釈迦如来、多宝仏、総じて十方の諸仏の主張されるところでは、
【「已今当〔いこんとう〕の一切経の中に法華最も為〔こ〕れ第一なり」云云。】
已今当の一切経の中で法華経が最も優れていると説かれているのです。
【問ふ、今〔いま〕日本国中の天台・真言等の諸僧並びに王臣万民疑って云はく、】
しかし、現在の日本中の天台宗、真言宗の各宗派の僧、および王臣、万民が、
【日蓮法師めは弘法・慈覚・智証大師等に勝るべきか如何。】
日蓮の分際で弘法、慈覚、智証大師より優れている訳がないと言っているのです。
【答ふ、日蓮反詰〔ほんきつ〕して云はく、】
それでは、それに日蓮が反論したいと思いますが、
【弘法・慈覚・智証大師等は釈迦・多宝・十方の諸仏に勝るべきか是一。】
弘法、慈覚、智証大師は、釈迦、多宝、十方の諸仏より優れているでしょうか。
【今日本国王より民まで教主釈尊の御子なり。】
現在の日本の国王から庶民に至るまで、すべて教主釈尊の弟子であるはずです。
【釈尊最後の御遺言に云はく「法に依って人に依らざれ」等云云。】
その釈尊の遺言である涅槃経には「法に依って人に依らざれ」と説かれています。
【法華最第一と申すは法に依るなり。】
日蓮が「法華最第一」と言っているのは、法に依っているのです。
【然るに三大師等に勝るべしやとの給ふ諸僧・】
それにもかかわらず、日蓮が三大師に優る訳がないと言っている各宗派の僧達、
【王臣・万民、乃至所従・牛馬等に至るまで】
王臣、万民、さらに従者、牛馬に至るまで、
【不孝の子にあらずや是二。】
教主釈尊の不孝の弟子ではないでしょうか。
【問ふ、弘法大師は法華経を見給はずや。】
それでは、その弘法大師は、この法華経を見なかったのでしょうか。
【答ふ、弘法大師一切経を読み給へり。】
それは、弘法大師も一切経を読んでいるのです。
【其の中に法華経・華厳経・大日経の浅深勝劣を読み給ふに、】
その中で法華経、華厳経、大日経の浅深、優劣を判別する為に、
【法華経を読み給ふ様に云はく】
法華経を次のように読んだのです。
【「文殊師利〔もんじゅしり〕此の法華経は諸仏如来秘密の蔵なり、】
「文殊師利菩薩よ、この法華経は諸仏如来の秘密の蔵であり、
【諸経の中に於て最も其の下に在り」と。】
諸経の中において最もその下位に位置している」と。
【又読み給ふ様に云はく「薬王今汝に告ぐ、我が所説の諸経あり、】
また「薬王菩薩よ、今、あなたに告げよう、私が説いた所の諸経がある。
【而も此の経の中に於て法華最第三」云云。】
しかも、この経の中において法華経が第三である」と。
【又慈覚・智証大師の読み給ふ様に云はく】
また、慈覚、智証大師は、
【「諸経の中に於て最も其の中に在り」と。】
「諸経の中において法華経は、最も中位にある」と。
【又「最も為〔こ〕れ第二」等云云。】
また「法華経は、最第二である」と読んだのです。
【釈迦如来・多宝仏・大日如来・一切の諸仏、】
釈迦如来、多宝仏、大日如来、一切の諸仏は、
【法華経を一切経に相対して説いての給はく「法華最第一」と。】
法華経を他の一切経と相対して「法華経は、最第一である」と説き、
【又説いて云はく「法華最も其の上に在り」云云。】
また「諸経の中において法華経は、最も上位にある」と説いています。
【所詮釈迦・十方の諸仏と慈覚・弘法等の三大師と】
釈迦如来、十方の諸仏と慈覚、弘法の三大師との
【いづれを本とすべきや。】
どちらを根本とするべきなのでしょうか。
【但し事を日蓮によせて釈迦・十方の諸仏には永く背きて】
ただし、日蓮を恨むあまり、釈迦如来、十方の諸仏に永遠に背いて、
【三大師を本とすべきか如何。】
このような三大師を根本として、よいものでしょうか。