御書研鑚の集い 御書研鑽資料
本尊問答抄 5 弘法大師
第四章 弘法大師
【問ふ、弘法大師は讃岐国〔さぬきのくに〕の人、】
しかし、弘法大師は、讃岐の国の人で
【勤操〔ごんそう〕僧正〔そうじょう〕の弟子なり。】
勤操僧正の弟子です。
【三論・法相の六宗を極む。】
三論宗、法相宗の南都六宗派の教義を極められ、
【去ぬる延暦廿三年五月、桓武天皇の勅宣を帯〔お〕びて漢土に入る。】
去る延暦二十三年五月に桓武天皇の命令によって中国へ渡って、
【順宗〔じゅんそう〕皇帝の勅に依りて青竜寺に入りて、】
順宗皇帝の命令によって青竜寺に入り、
【恵果〔けいか〕和尚に真言の大法を相承〔そうじょう〕し給へり。】
恵果和尚から真言の大法を相承されました。
【恵果和尚は大日如来よりは七代になり給ふ。】
恵果和尚は、大日如来から数えて真言宗の第七祖に当たる人です。
【人はか〔代〕はれども法門はをな〔同〕じ。】
人は、代わっても法門は同じであるはずです。
【譬へば瓶〔かめ〕の水を猶〔なお〕瓶にうつすがごとし。】
譬えば、器の水を別の器に移すように、
【大日如来と金剛〔こんごう〕薩埵〔さった〕・竜猛〔りゅうみょう〕・】
大日如来から始まって、金剛薩埵、竜猛、
【竜智・金剛智・不空・恵果〔けいか〕・弘法との瓶は異なれども、】
竜智、金剛智、不空、慧果、弘法と器は異なっても、
【所伝〔しょでん〕の智水は同じ真言なり。】
伝えられた法門の智水は同じ真言なのです。
【此の大師彼〔か〕の真言を習ひて、】
弘法大師は、中国でその真言を習い極めて、
【三千の波濤〔はとう〕をわたりて日本国に付き給ふに、】
三千里の波涛を渡って日本に戻り、
【平城〔へいぜい〕・嵯峨〔さが〕・淳和〔じゅんな〕の三帝にさづけ奉る。】
平城天皇、嵯峨天皇、淳和天皇に真言の法を授けられました。
【去ぬる弘仁〔こうにん〕十四年正月十九日に東寺を建立すべき勅を給ひて、】
弘仁十四年正月十九日に東寺を建立するよう命令を受け、
【真言の秘法を弘通し給ふ。】
真言の秘法を弘通されたのです。
【然れば五畿七道、六十六箇国二つの島にいたるまでも】
したがって、五畿、七道、六十六箇国、二つの島に至るまでの日本全土において
【鈴〔れい〕をとり杵〔しょ〕をにぎる人たれかこの末流にあらざるや。】
真言の金剛鈴を振り金剛杵を持って弘法大師の末流でない人はいないのです。