日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


本尊問答抄 11 此の御本尊に後世を祈らせ給へ


第十章 此の御本尊に後世を祈らせ給へ

【この道理を存ぜる事は父母と師匠との御恩なれば、】
この道理が存在する事は、父母と師匠に御恩が有る事によって証明できますが、

【父母はすでに過去し給ひ畢んぬ。】
父母は、すでに亡くなっており、

【故道善御房は師匠にてお〔御〕は〔座〕しまししかども、】
故道善御房は、日蓮の師匠では、ありますが、

【法華経の故に地頭におそれ給ひて、】
法華経の為に地頭である東条景信を恐れて、

【心中には不便〔ふびん〕とおぼしつらめども、】
心の中では、日蓮を気にかけておられたようですが、

【外にはかたき〔敵〕のやう〔様〕ににく〔悪〕み給ひぬ。】
それでも表面上は、敵のように憎んでいたのです。

【のちにはすこし信じ給ひたるやうにき〔聞〕こへしかども、】
後には、少しは、法華経を信じられたように聞いたのですが、

【臨終にはいかにやおはしけむ、おぼつかなし。】
臨終の時は、どうであったろうかと心配しているのです。

【地獄まではよもおはせじ。】
よもや地獄に堕ちたとは、思えないのですが、

【又生死をはなるゝ事はあるべしともおぼへず。】
しかし、また生死の苦しみから、離れたとも思えないのです。

【中有〔ちゅうう〕にやたゞよ〔漂〕ひましますらむとなげ〔嘆〕かし。】
まさか中有に漂っているのではと、嘆〔なげ〕かわしく思っているのです。

【貴辺は地頭のいか〔怒〕りし時、】
あなたは、東条景信が襲ってきた時、

【義城房とともに清澄寺をいでておはせし人なれば、】
義城房と共に私を案内して、清澄寺から逃がしてくれた人ですから、

【何となくともこれを法華経の御奉公とおぼしめして、】
何か特別な事をしなくても、この事を法華経への御奉公だと思って、

【生死をはな〔離〕れさせ給ふべし。】
生死の苦しみから、離れてください。

【此の御本尊は世尊説きおかせ給ひてのち、二千二百三十余年が間、】
この御本尊は、釈尊が法華経の中に説かれて後、二千二百三十余年の間、

【一閻浮提〔えんぶだい〕の内にいまだひろめたる人候はず。】
一閻浮提の内に未だ弘めた人がいないものです。

【漢土の天台・日本の伝教はほゞ〔粗〕し〔知〕ろしめして、】
中国の天台大師や日本の伝教大師は、内心は、知っていたのですが、

【いさゝかもひろ〔弘〕めさせ給はず。】
少しも弘める事は、なかったのです。

【当時こそひろまらせ給ふべき時にあたりて候へ。】
末法の今こそ弘まる時にあたっているのです。

【経には上行・無辺行等こそい〔出〕でてひろめさせ給ふべしと見えて候へども、】
法華経には、上行菩薩、無辺行菩薩などが出現して、弘めると説かれていますが、

【いまだ見えさせ給はず。】
未だに現われては、いないのです。

【日蓮は其の人には候はねどもほゞ心へ〔得〕て候へば、】
日蓮は、その人ではありませんが、ほぼ、その事を心得ているので、

【地涌の菩薩のいでさせ給ふまでの口ずさみに、あらあら申して】
地涌の菩薩が出現されるまでの間に、だいたいの所を説いて、

【況滅度後〔きょうめつどご〕のほこさき〔矛先〕に当たり候なり。】
法華経法師品の「況滅度後」の大難に最初に遭ったのです。

【願はくは此の功徳を以て父母と師匠と一切衆生に】
願わくは、この功徳をもって、父母と師匠と一切衆生に

【回向し奉らんと祈請仕〔つかまつ〕り候。】
回向しようと祈祷しているのです。

【其の旨をし〔知〕らせまい〔進〕らせむがために】
以上の事を、お知らせしようと思い、

【御本尊を書きをく〔送〕りまいらせ候に、】
御本尊を書き送ったのですが、

【他事をすてゝ此の御本尊の御前にして一向に後世をもいの〔祈〕らせ給ひ候へ。】
これからは、他事を捨てて、この御本尊の御前で、ただ後世を祈ってください。

【又これへ申さんと存じ候。】
また、この事を御話しようと思っております。

【いかに御房たちはからい申させ給へ。】
他の方々にも、あなた方から、よろしく御伝えください。

【日蓮花押。】
日蓮花押。


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