御書研鑚の集い 御書研鑽資料
撰時抄 23 禅宗と申す宗派
【禅宗は又此の便を得て】
禅宗は、また、この仏教の混乱に乗じて、
【持斉〔じさい〕等となって】
清浄な司祭である持斎なる戒律を持つ僧侶となって、
【人の眼を迷はかし、たっと〔貴〕げなる気色〔けしき〕なれば、】
人の眼を迷わし、さも尊〔とうと)げな姿を演じながら、
【いかにひが〔僻〕ほうもん〔法門〕をい〔言〕ゐ】
このような邪〔よこしま〕な法門を言い出すほど
【くる〔狂〕へども失〔とが〕ともをぼへず。】
狂っていながら、それを少しもおかしいとも思わず、
【禅宗と申す宗は教外別伝と申して、】
禅宗と云う宗派は、教外別伝と云って、
【釈尊の一切経の外に迦葉〔かしょう〕尊者に】
釈尊のすべての経文以外に、迦葉尊者に密かに、
【ひそかにさゝやかせ給えり。】
その悟りをささやいたのであると主張し、
【されば禅宗をしらずして一切経を習うものは】
そうであれば、禅宗を知らないで一切経を習う者は、
【犬の雷〔いかずち〕をかむ〔咬〕がごとし。】
犬が雷を噛もうとするように、
【猿の月の影をと〔取〕るにに〔似〕たり云云。】
猿が月の影を取ろうとするように愚かな事だと言っているのです。
【此の故に日本国の中に不幸にして父母にすてられ、】
この故に禅宗が、日本国中において、不孝の子供が父母に捨てられ、
【無礼なる故に主君にかんだう〔勘当〕せられ、】
また、無礼な為に家来が主君に勘当され、
【あるいは若〔じゃく〕なる法師等の学文にものう〔懶〕き、】
あるいは、若い僧侶が学問を避けて、
【遊女のもの〔物〕ぐる〔狂〕わしき本性に叶〔かな〕へる邪法なるゆへに、】
遊女が物狂いの本性を現すような、邪法であるゆえに、
【皆一同に持斎になりて】
これらの人々が一同に禅宗の持斎となり、
【国の百姓をくらう蝗虫〔いなむし〕となれり。】
国の食料を食い尽くすイナゴのような存在となったのです。
【しかれば天は天眼をいか〔怒〕らかし、】
それで、天は天眼を怒らし、
【地神は身をふるう。】
地神は、身を震わせて怒り、天変地妖が絶えまなく起こったのです。