日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


頼基陳状 05 第04章 桑ヶ谷問答(3)問答の終結

【三位も文永八年九月十二日の勘気の時は】
この三位も文永8年9月12日の弾圧の時は、

【供奉〔ぐぶ〕の一行にて有りしかば、】
御供の一人として同罪に問われ、

【同罪に行なはれて頸をはねらるべきにてありしは、】
首をはねられるところでした。それでも、

【身命を惜しむものにて候かと申されしかば、】
身命を惜しむ者であると言われるのでしょうかと反論したのです。

【竜象房口を閉じて色を変へ候ひしかば、】
竜象房は、これを聞き、口を閉じ、顔色を変えてしまいました。

【此の御房申されしは、】
そこで三位房の言ったことは、

【是程の御智慧にては人の不審をはらすべき由の仰せ無用に候ひけり。】
この程度の知恵では、人々の不審を晴らそうなどの高言は、無用でしょう。

【苦岸〔くがん〕比丘〔びく〕・勝意〔しょうい〕比丘等は】
大荘厳仏の過去に、苦岸比丘や勝意比丘らは、

【我れ正法を知りて人をたすくべき由存ぜられて候ひしかども、】
自分は、正法を知ったので人を救ってやろうと思ったのですが、

【我が身も弟子檀那等も無間〔むけん〕地獄に堕ち候ひき。】
結局、それは間違っており、我が身も弟子や檀那も共に無間地獄に堕ちました。

【御法門の分斉〔ぶんざい〕にて、】
あなたの法門の程度で、

【そこばくの人を救はむと説き給ふが如くならば、】
多くの人を救おうなどと説法するようであれば、

【師檀共に無間地獄にや堕ち給はんずらむ。】
師匠も檀那も共に無間地獄に堕ちるのではないでしょうか。

【今日より後は此の如き御説法は御はからひあるべし。】
今日より後は、このような説法は、考え直される方がよいでしょう。

【加様には申すまじく候へども、】
このようには、言うまいと思ったけれども、言わなければ、

【悪法を以て人を地獄にをとさん邪師をみながら責め顕はさずば返りて】
悪法をもって人を地獄に堕そうとする邪師を見ながら、責めなければ返って、

【仏法の中の怨なるべしと、仏の御いましめのがれがたき上、】
それは、仏法の中の怨であるとの仏の戒〔いまし〕めは逃れ難く、その上、

【聴聞の上下皆悪道にをち給はん事不便に覚へ候へば】
説法を聴聞している全ての人々が、悪道に堕ちるのは、不便に思われたので、

【此の如く申し候ひしなり。智者と申すは国のあや〔危〕うきをいさめ、】
このように言うのです。智者と言うのは、国の危機を諫め、

【人の邪見を申しとゞ〔止〕むるこそ智者にては候なれ。】
人の邪見を止めることこそ、智者ではないでしょうか。

【是はいかなるひが〔僻〕事ありとも、】
あなたは、どのような誤りがあろうとも、

【世の恐しければいさ〔諫〕めじと申されむ上は力及ばず。】
世間が恐ろしいので諫めないと言われる以上は、どうしようもありません。

【某は文殊の智慧も富樓那〔ふるな〕の弁説も詮候はずとて】
もはや文殊の智慧も富楼那の弁説も、役には立ちませんと言って

【立たれ候ひしかば、諸人歓喜をなし、掌を合はせ】
席を立つと、聴衆の人々は、歓喜して手を合わせ、

【今暫〔しばら〕く御法門候へかしと留め申されしかども、】
いましばらく御法門をお聞かせ下さいと引き止めましたが、

【やがて帰り給ひ了んぬ。】
三位房は、そのまま帰ってしまったのです。

【此の外は別の子細候はず。且つは御推察あるべし。】
以上のことの他には、別に何もありません。どうか、御推察ください。

【法華経を信じ参らせて仏道を願ひ候はむ者の、争でか法門の時悪行を企て、】
法華経を信じて仏道を願うほどの者が、どうして法門の問答の時に悪行を企てたり、

【悪口を宗とし候べき。しかしながら御きゃうざく〔景迹〕有るべく候。】
悪口を言ったりするでしょうか。どうか、その時の様子に御理解願います。

【其の上日蓮聖人の弟子となのりぬる上、】
そのうえ、日蓮聖人の弟子と名乗った上、

【罷り帰りても御前に参りて法門問答の様かたり申し候ひき。】
帰りましても私の前に参りまして、法門の問答の様子を話しております。

【又其の辺に頼基しらぬもの候はず、】
また、問答をした付近には、頼基を知らない者はいませんでした。

【只頼基をそねみ候人のつくり事にて候にや。】
おそらく、頼基を妬む人の作りごとでしょう。

【早々召し合はせられん時、其の隠れ有るべからず候。】
早く、その者と合わせられれば、事の真相がわからないことはないでしょう。


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