御書研鑚の集い 御書研鑽資料
頼基陳状 11 第10章 諌言を結す
【随って頼基は父子二代命を君にまいらせたる事顕然なり。】頼基は、父子二代にわたり命を主君に捧げましたことは、明らかであり、
【故親父(中務某)故君の御勘気かぶらせ給ひける時、】
亡父の中務頼員〔よりかず〕は、先君が執権より迫害を受けられたときに、
【数百人の御内の臣等、心がはりし候ひけるに、】
数百人の一族の家臣が、心変わりした中で、
【中務一人最後の御供奉〔ぐぶ〕して伊豆国まで参りて候ひき。】
ただ一人、最後まで付き従い伊豆までお供しました。
【頼基は去ぬる文永十一年二月十二日の鎌倉の合戦の時、】
また頼基は、去る文永11年2月12日の鎌倉の合戦のとき、
【折節伊豆国に候ひしかば、十日の申時〔さるのとき〕に承りて、】
伊豆にいましたが、十日の午後4時に主君の大事を聞き、
【唯一人箱根山〔はこねやま〕を一時に馳〔は〕せ越えて、】
ただ一人、箱根山を二時間あまりで越えて、
【御前に自害すべき八人の内に候ひき。】
殿の御前に現れて、戦に負ければ自害すべき八人の内に加わりました。
【自然に世しづまり候ひしかば、】
その後、自然と世の中が静まったので、
【今に君も安穏〔あんのん〕にこそわたらせ給ひ候へ。】
今では、主君も安穏に暮しておられます。
【爾来〔じらい〕大事小事に付けて御心やすき者にこそ思ひ含まれて候。】
それ以来、大事、小事と何事につけて、心を許せる者と思われていました。
【頼基が今更何につけて疎縁〔そえん〕に思ひまいらせ候べき。】
その頼基が、いまさら、どうして主君のことを疎遠に扱うでしょうか。
【後生までも随従しまいらせて、頼基成仏し候はゞ君をもすくひまいらせ、】
後生までも主君に付き従って、頼基が成仏したならば、主君をも救い、
【君成仏しましまさば頼基もたすけられまいらせむとこそ存じ候へ。】
主君が成仏されたならば、頼基も助けていただこうと思っている所存です。
【其れに付ひて諸僧の説法を聴聞仕りて、何れか成仏の法とうかゞひ候処に、】
そこで数々の僧侶の説法を聴聞して、いかなるものが成仏の法かと尋ねたところ、
【日蓮聖人の御房は三界の主、一切衆生の父母、】
日蓮聖人は、三界の主人であり、一切衆生の父母であり、
【釈迦如来の御使ひ上行菩薩にて御坐し候ひける事の】
釈迦如来の御使い、上行菩薩であられることが
【法華経に説かれてましましけるを信じまいらせたるに候。】
法華経に説かれていたので、それを信じるに至ったのです。