日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


兄弟抄 03 三千塵点劫


第02章 三千塵点劫

【別して経文に入って此を見奉れば】
次に、別して法華経の経文についてみるならば、

【二十の大事あり。】
一切経より優れた、二十の大事な法門があります。

【第一第二の大事は三千塵点劫〔じんでんごう〕、】
その中で、第一、第二の大事は、三千塵点劫、

【五百塵点劫と申す二つの法門なり。其の三千塵点と申すは】
五百塵点劫と言う二つの法門です。その三千塵点劫と言う法門は、

【第三の巻化城喩品〔けじょうゆほん〕と申す処に出でて候。】
第三の巻の化城喩品に出ています。

【此の三千大千世界を抹〔まっ〕して塵〔ちり〕となし、】
この三千大千世界をすりつぶして微塵となし、

【東方に向かって千の三千大千世界を過ぎて一塵〔じん〕を下し、】
東の方に向かって、千の三千大千世界を過ぎて、その中の一つの塵を落とし、

【又千の三千大千世界を過ぎて一塵を下し、】
また千の三千大千世界を過ぎて一つの塵を落とし、

【此くの如く三千大千世界の塵を下しは〔果〕てぬ。】
このようにして三千大千世界の塵をことごとく落とし尽くし、

【さてかえって、下せる三千大千世界と下さゞる】
その後、その塵を落とした三千大千世界と、

【三千大千世界をともにおし〔総〕ふさ〔束〕ねて又塵となし、】
落とさない三千大千世界とを集めて、また塵となし、

【此の諸の塵をも〔以〕てなら〔並〕べを〔置〕きて一塵を一劫として、】
このすべての塵の一塵を一劫として、

【経〔へ〕尽くしては又始め又始め、】
最初の一塵から最後の一塵まで、すべてを同じように一劫と考え、

【かくのごとく上の諸の塵の尽くし経たるを】
このようにして、以上の無数の塵の数だけの劫を尽くしたとき、

【三千塵点とは申すなり。】
これを三千塵点劫と言うのです。

【今三周の声聞と申して舎利弗〔しゃりほつ〕・迦葉〔かしょう〕・】
法華経の中に法説、譬喩説、因縁説の三周の声聞と言って、舎利弗や迦葉、

【阿難〔あなん〕・羅云〔らうん〕なんど申す人々は、】
阿難、羅睺羅と言う人々がいました。

【過去遠々劫〔おんのんごう〕三千塵点劫のそのかみ、】
さらに法華経の化城喩品において、過去遠々劫の三千塵点劫のその昔に、

【大通智勝仏と申せし仏の、第十六の王子にてをはせし菩薩ましましき。】
大通智勝仏と言う仏の、十六番目の王子である菩薩がおられました。

【かの菩薩より法華経習ひけるが、】
この三周の声聞たちは、その菩薩より法華経を習ったのですが、

【悪縁にすかされて法華経をす〔捨〕つる心つきにけり。】
途中、悪縁に触れて、法華経を捨てる心を起こしてしまったのです。

【かくして或は華厳経へを〔堕〕ち、】
このようにして、あるいは華厳経へ堕ち、

【或は般若〔はんにゃ〕経へをち、或は大集経へをち、】
あるいは般若経へ堕ち、あるいは大集経へ堕ち、

【或は涅槃〔ねはん〕経へをち、或は大日経、】
あるいは涅槃経へ堕ち、あるいは大日経に堕ち、

【或は深密〔じんみつ〕経、或は観経〔かんぎょう〕等へをち、】
あるいは深密経に堕ち、あるいは観無量寿経へ堕ち、

【或は阿含小乗経へをちなんどしけるほどに、】
あるいは阿含小乗経へ堕ちなどしているうちに、

【次第に堕ちゆきて後には人天の善根、】
次第に堕ちて行って、のちには人界、天界の善根に堕ち、

【後に悪にをちぬ。】
さらには、地獄、餓鬼、畜生、修羅の四悪趣に堕ちてしまったのです。

【かくのごとく堕ちゆく程に三千塵点劫が間、多分は無間地獄、】
このようにして堕ちていくうちに、三千塵点劫の間、多くは無間地獄に生じ、

【少分は七大地獄、たまたまには一百余の地獄、】
少しは、他の七大地獄に生じ、ときたまは、一百余の地獄、

【まれには餓鬼・畜生・修羅なんどに生まれ、】
まれには、餓鬼、畜生、修羅に生まれ、

【大塵点劫なんどを経て人天には生まれ候ひけり。】
大塵点劫などの長い期間を経て、また人界、天界に生まれたのです。

【されば法華経の第二の巻に云はく「常に地獄に処すること】
それ故、法華経第二の巻、譬喩品には「常に地獄に居ることは、

【園観に遊ぶが如く】
あたかも遊園地で遊んでいるようにあたりまえとなり、

【余の悪道に在ること己が舎宅の如し」等云云。】
また、他の餓鬼、畜生、修羅の悪道が自分の家のようになってしまう」と説かれ、

【十悪をつくる人は等活・黒縄〔こくじょう〕なんど申す地獄に堕ちて、】
十悪を犯した者は、等活地獄、黒縄地獄などと言う地獄に堕ちて、

【五百生或は一千歳を経〔へ〕、五逆をつくる人は無間地獄に堕ちて、】
五百生、あるいは一千歳を経て、五逆罪を作った人は、無間地獄に堕ちて、

【一中劫を経て後は又かへり生ず。】
一中劫もの長い期間を過ぎた後に、再び人界に生まれて来るのです。

【いかなる事にや候らん。】
ところが、いかなる事でしょうか、

【法華経をす〔捨〕つる人は、すつる時はさしも父母を殺すなんどのやうに、】
法華経を捨てる人は、その法華経を捨てる時も、父母を殺す時のように、

【をびた〔夥〕ゞしくはみ〔見〕へ候はねども、】
重大なこととは思わないのですが、

【無間地獄に堕ちては多劫を経〔へ〕候。】
もっと長い期間、無間地獄に堕ちて、長大な時間を過ごすのです。

【設〔たと〕ひ父母を一人二人十人百人千人万人】
たとえ父母を、一人、二人、十人、百人、千人、万人、

【十万人百万人億万人なんど殺して候とも、】
十万人、百万人、億万人を殺したとしても、

【いかんが三千塵点劫をば経候べき。】
どうして地獄に堕ちて、三千塵点劫と言う長い間を過ごすことがあるでしょうか。

【一仏二仏十仏百仏千仏万仏乃至億万仏を殺したりとも、】
また、一仏、二仏、十仏、百仏、千仏、万仏、そして億万仏を殺したとしても、

【いかんが五百塵点劫をば経候べき。】
どうして無間地獄に堕ちて五百塵点劫を過ごすことがあるでしょうか。

【しかるに法華経をす〔捨〕て候ひけるつみ〔罪〕によりて】
ところが法華経を捨てた罪によって、

【三周の声聞〔しょうもん〕が三千塵点劫を経、】
三周の声聞が三千塵点劫を経て、

【諸大菩薩の五百塵点劫を経候ひけること】
諸大菩薩が五百塵点劫を経たことは、

【をびた〔夥〕だしくをぼ〔覚〕へ候。】
大変なことなのです。


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