日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


兄弟抄 06 第六天の魔王


第05章 第六天の魔王

【此の世界は第六天の魔王の所領なり。】
我々の住む娑婆世界は、第六天の魔王の所領なのです。

【一切衆生は無始已来彼の魔王の眷属〔けんぞく〕なり。】
一切衆生は、無始以来、第六天の魔王のしもべなのです。

【六道の中に二十五有と申すろう〔牢〕をかま〔構〕へて】
魔王は、六道の中に二十五有と言う牢獄を構えて、

【一切衆生を入るゝのみならず、妻子〔めこ〕と申すほだし〔絆〕をうち、】
一切衆生を入れるばかりでなく、妻子と言う縄を打ち、

【父母主君と申すあみ〔網〕をそら〔空〕にはり、貪〔とん〕・瞋〔じん〕・】
父母、主君と言う網を張り、貪〔とん〕瞋〔じん〕

【癡〔ち〕の酒をの〔飲〕ませて仏性の本心をたぼら〔誑〕かす。】
癡〔ち〕の酒を飲ませて、一切衆生の仏性の本心を失わせ、

【但あく〔悪〕のさかな〔肴〕のみをすゝめて】
そして、悪への誘惑である酒のつまみばかりをすすめられて、

【三悪道の大地に伏臥〔ふくが〕せしむ。】
最後には、三悪道の大地に倒れ込んでしまうのです。

【たまたま善の心あれば障碍〔しょうげ〕をなす。】
衆生に、たまたま、善い心がある者がいれば、その邪魔をするのです。

【法華経を信ずる人をばいかにもして悪へ堕とさんとをも〔思〕うに、】
法華経を信ずる人を、なんとしても悪道へ堕とそうと思うのですが、

【叶はざればやうやくすか〔賺〕さんがために相似せる華厳経へを〔堕〕としつ、】
そう簡単には、いかないので、まず法華経に似ている華厳経へ堕とそうと、

【杜順〔とじゅん〕・智儼〔ちごん〕・法蔵・澄観等これなり。】
杜順、智儼、法蔵、澄観などが考えて、

【又般若経へをとしつ、嘉祥〔かじょう〕・僧詮〔そうせん〕等これなり。】
また次に、般若経へと堕とそうと、嘉祥や僧詮などが考え、

【又深密経へ堕としつ、玄奘〔げんじょう〕・慈恩此なり。】
また深密経へ堕とそうと、玄奘や慈恩が考え、

【又大日経へ堕としつ、善無畏・金剛智・不空・弘法・慈覚・智証等これなり。】
また大日経へ堕とそうと、善無畏、金剛智、不空、弘法、慈覚、智証が考え、

【又禅宗へ堕としつ、達磨・慧可等是なり。】
また禅宗へ堕とそうと、達磨や慧可が考え、

【又観経〔かんぎょう〕へすかしをとす悪友は、善導・法然是なり。】
また観無量寿経へ堕とそうと、善導・法然が考え、

【此は第六天の魔王が智者の身に入って】
これらは、第六天の魔王が、この智者の身に入って、

【善人をたぼらかすなり。】
法華経を信ずる善人を、謗法へとたぶらかしているのです。

【法華経第五の巻に「悪鬼其の身に入る」と説かれて候は是なり。】
法華経第五の巻の勧持品に「悪鬼が其の身に入る」とあるのは、このことなのです。

【設ひ等覚の菩薩なれども元品の無明と申す大悪鬼身に入って、】
たとえ等覚の菩薩であっても、元品の無明と言う大悪鬼が、その身に入って、

【法華経と申す妙覚の功徳を障〔ささ〕へ候なり。】
法華経と言う妙覚の功徳を妨げるのです。

【何に況〔いわ〕んや其の已下〔いげ〕の人々にをいてをや。】
まして、それ以下の人々においては、なおさらのことなのです。

【又第六天の魔王或は妻子の身に入って親や夫をたぼらかし、】
また、第六天の魔王が、妻子の身に入って親や夫をたぶらかし、

【或は国王の身に入って法華経の行者ををど〔脅〕し、】
あるいは、国王の身に入って法華経の行者を脅〔おど〕し、

【或は父母の身に入って孝養の子をせ〔責〕むる事あり。】
あるいは、父母の身に入って孝養の子を責めたりするのです。

【悉達太子は位を捨てんとし給ひしかば】
悉達太子は、国王になるべき位を捨てて出家しようとされたので、

【羅睺羅〔らごら〕はらまれてをはしませしを、】
妃が子の羅睺羅を孕んでいたのを、

【浄飯王〔じょうぼんのう〕此の子生まれて後出家し給へと】
父の浄飯王は「子が生まれてから出家しなさい」と

【いさ〔諫〕められしかば、魔が王子ををさ〔抑〕へて六年なり。】
諫められたところ、魔は、これ幸いに子が生まれるのを六年間、抑えたのです。

【舍利弗は昔禅多羅仏〔ぜんたらぶつ〕と申せし仏の末世に、】
舎利弗は、昔、禅多羅仏と言う仏の末世に、

【菩薩の行を立てゝ六十劫を経たりき。】
菩薩の行を立てて、六十劫を経て、

【既に四十劫ちかづきしかば百劫にてあるべかりしを、】
あと四十劫で百劫になるまで近づいたので、

【第六天の魔王、菩薩の行の成ぜん事をあぶ〔危〕なしとや思ひけん、】
第六天の魔王が、その菩薩の修行が成就するのを危ぶみ、

【婆羅門となりて眼を乞ひしかば相違なくと〔取〕らせたりしかども、】
婆羅門となって舎利弗の美しい眼が欲しいと訴え、舎利弗は、言われるままに、

【其れより退する心出〔い〕で来〔き〕て】
その眼を与えたのですが、その行為を踏みにじられ、これによって退転してしまい、

【舍利弗は無量劫が間無間地獄に堕ちたりしぞかし。】
その為に舎利弗は、無量劫の間、無間地獄に堕ちたのです。

【大荘厳仏〔だいしょうごんぶつ〕の末の六百八十億の檀那等は、】
大荘厳仏の末法の六百八十億の檀那などは、

【苦岸〔くがん〕等の四比丘にたぼらかされて、】
苦岸などの四比丘に騙されて、

【普事比丘を怨〔あだ〕みてこそ大地微塵劫〔みじんこう〕が間、】
普事比丘を怨んだゆえに、大地微塵劫の間、

【無間地獄を経〔へ〕しぞかし。】
無間地獄に堕ちたのです。

【師子音王仏〔ししおんのうぶつ〕の末の男女等は、】
師子音王仏の末法の男女などは、

【勝意比丘と申せし持戒の僧をたのみて】
勝意比丘と言う持戒の僧侶を信じて、

【喜根比丘を笑ふてこそ、無量劫が間地獄に堕ちつれ。】
正法を弘める喜根比丘をあざ笑った為に無量劫の間、地獄に堕ちたのです。

【今又日蓮が弟子檀那等は此にあたれり。】
今また日蓮の弟子檀那などは、この事にあたっています。

【法華経には「如来の現在すら猶〔なお〕怨嫉〔おんしつ〕多し。】
法華経の法師品には「如来のおられる時でさえ猶怨嫉が多い、

【況んや滅度の後をや」と。又云はく】
まして滅度の後においては、なおさらである」と説かれ、また安楽行品には

【「一切世間怨多くして信じ難し」と。】
「一切世間の人は、仏に怨をなすものが多く、正法を信じ難い」と説かれ、


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