日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


兄弟抄 14 夫人の信心を激励


第13章 夫人の信心を激励

【今二人の人々は隠士と烈士とのごとし。】
今、宗仲と宗長の二人の兄弟は、この道士と弟子の二人のようなものなのです。

【一〔ひとり〕もか〔欠〕けなば成ずべからず。】
どちらか一人でも欠けるならば、仏道を成就することは出来ません。

【譬〔たと〕へば鳥の二つの羽、人の両眼の如し。】
たとえば、鳥の二つの羽、人の両眼のようなものです。

【又二人の御前達は此の人々の檀那ぞかし。】
また二人の夫人たちは、この兄弟二人にとっては大事な支えなのです。

【女人となる事は物に随って物を随へる身なり。】
女性と言うのは、物に随って、物を随える身であります。

【夫〔おとこ〕たの〔楽〕しくば妻もさか〔栄〕ふべし。】
夫が楽しめば、妻も栄えることができ、

【夫〔おとこ〕盗人ならば妻も盗人なるべし。】
反対に夫が盗人ならば、妻も盗人となるのです。

【是偏〔ひとえ〕に今生計〔ばか〕りの事にはあらず、】
これは、ひとえに今生だけのことではありません。

【世々〔せせ〕生々〔しょうじょう〕に影と身と、】
世々、生々に、影と身と、

【華〔はな〕と果〔このみ〕と、根と葉との如くにておはするぞかし。】
花と果実と、根と葉のようなものなのです。

【木にす〔棲〕む虫は木をは〔食〕む、水にある魚は水をく〔食〕らふ。】
木に住む虫は、木を食べ、水中に住む魚は、水を飲み、

【芝か〔枯〕るれば蘭な〔泣〕く、松さか〔栄〕うれば柏よろこ〔悦〕ぶ。】
芝が枯れれば、蘭が泣き、松が栄えれば、柏は悦ぶのです。

【草木すら是くの如し。】
草木でさえ、このように互いに助け合うのです。

【比翼〔ひよく〕と申す鳥は身は一つにて頭二つあり。】
比翼と言う鳥は、身は一つで、頭は二つあり、

【二つの口より入る物一身を養ふ。】
二つの口から別々に入った食物が、同じ一つの身を養うのです。

【ひぼく〔比目〕と申す魚は一目づつある故に一生が間はな〔離〕るゝ事なし。】
比目という魚は、雌雄、一目づつあるゆえに、一生の間、離れることはありません。

【夫と妻とは是くの如し。此の法門のゆへ〔故〕には】
夫と妻とは、このようなものなのです。この法門の為には、

【設〔たと〕ひ夫に害せらるゝとも悔ゆる事なかれ。】
たとえ夫から殺害されるようなことがあっても後悔してはなりません。

【一同して夫の心をいさ〔諫〕めば竜女〔りゅうにょ〕が跡をつぎ、】
夫人たちが力を合わせて、夫の信心を諌めるならば、竜女の跡を継ぎ、

【末代悪世の女人の成仏の手本と成り給ふべし。】
悪世末法の女人成仏の手本となられることでしょう。

【此くの如くおはさば設ひいかなる事ありとも、】
このように、信心強盛であるならば、たとえどのようなことがあろうとも、

【日蓮が二聖・二天・十羅刹・釈迦・多宝に申して】
日蓮が二聖、二天、十羅刹女、釈迦、多宝に言って、

【順次生〔じゅんじしょう〕に仏にな〔成〕したてまつるべし。】
あなたが未来に生まれるたびに、必ず成仏させてあげましょう。

【心の師とはなるとも心を師とせざれとは、六波羅蜜経の文なり。】
「心の師とはなっても、心を師とするな」とは、六波羅密経の文章です。

【設〔たと〕ひいかなるわづら〔煩〕はしき事ありとも夢になして、】
たとえ、どのような煩わしく、苦しいことがあっても、

【只法華経の事のみさは〔思〕ぐら〔索〕せ給ふべし。】
夢の中の出来事として、ただ法華経のことだけを思っていきなさい。

【中にも日蓮が法門は古〔いにしえ〕こそ信じがたかりしが、】
中でも日蓮の法門は、以前には信じ難いことでしたが、

【今は前々い〔言〕ひをきし事既にあ〔合〕ひぬれば、】
今は、前々から言っていたことが、まさに合ったので、

【よし〔由〕なく謗ぜし人々も悔ゆる心あるべし。】
理由もなく誹謗した人々も、悔いる心が起きたでしょう。

【設〔たと〕ひこれより後に信ずる男女ありとも、】
たとえ、これよりのちに信ずる男女があっても、

【各々にはか〔替〕へ思ふべからず。始めは信じてありしかども、】
あなた達と同じに思うことは出来ません。始めは、信じていたけれども、

【世間のをそ〔恐〕ろしさにす〔捨〕つる人々かず〔数〕をし〔知〕らず。】
世間の迫害の恐ろしさに、信仰を捨てた人々は、数えられないほど多いのです。

【其の中に返って本より謗ずる人々よりも】
その中には、返ってもとから誹謗していた人々よりも、

【強盛にそし〔謗〕る人々又あまた〔数多〕あり。】
さらに強く謗〔そし〕る人々も、また多いのです。

【在世にも善星〔ぜんしょう〕比丘〔びく〕等は始めは信じてありしかども、】
釈尊の在世にも、善星比丘は、始めは、信じていたけれども、

【後にす〔捨〕つるのみならず、返って仏をぼう〔謗〕じ奉りしゆへ〔故〕に、】
のちに信仰を捨てたばかりでなく、返って釈迦仏を激しく謗〔そし〕った為に、

【仏も叶ひ給はず、無間地獄にを〔堕〕ちにき。】
仏の慈悲をもってしても、いかんともしがたく無間地獄に堕ちてしまいました。

【此の御文は別してひゃうへ〔兵衛〕の志殿へまいらせ候。】
この御手紙は、兵衛志殿にあてたものでもあるのです。

【又大夫志〔たいふのさかん〕殿の女房・兵衛志〔ひょうえのさかん〕殿の女房に】
また大夫志殿の女房、兵衛志殿の女房にも、

【よくよく申しき〔聞〕かせさせ給ふべし、き〔聞〕かせさせ給ふべし。】
このことを、よくよく言い聞かせてください。

【南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。】
南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。

【建治二年卯月 日   日蓮花押】
建治二年卯月 日   日蓮花押


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