御書研鑚の集い 御書研鑽資料
真言見聞 10 重ねて法華経の秘密なるを示す
第09章 重ねて法華経の秘密なるを示す
【加之〔しかのみならず〕真言の高祖竜樹〔りゅうじゅ〕菩薩〔ぼさつ〕、】
それだけでなく真言宗の高祖、竜樹菩薩は、
【法華経を秘密と名づく、】
「法華経を秘密と名づける。
【二乗〔にじょう〕作仏〔さぶつ〕有るが故にと釈せり。】
それは、二乗作仏が説かれているゆえである」と解釈しているのです。
【次に二乗作仏無きを秘密とせずば】
この文章に依ると、真言の二乗不作仏を秘密としないのならば、
【真言は即ち秘密の法に非ず。】
真言は、秘密の法ではないことになります。
【所以〔ゆえん〕は何〔いか〕ん。大日経に云はく】
その理由は、何かと言うと、大日経に二乗不作仏を顕して
【「仏不思議真言相道〔そうどう〕の法を説いて、】
「仏は、菩薩に対して不思議真言相道の法を説いて、
【一切の声聞・縁覚を共にせず。亦世尊普〔あまね〕く】
声聞、縁覚の二乗と座席を共にしない。世尊は、
【一切衆生の為にするに非ず」云云。】
一切衆生の為に、この経文を説法するのではない」と説かれているからです。
【二乗を隔つる事、前四味の諸教に同じ。】
二乗を嫌うことは、醍醐味以前の前四味の爾前教と同じであり、
【随〔したが〕って唐決〔とうけつ〕には方等部の摂と判ず。】
したがって唐決集には、大日経は、方等部に属すると判定されているのです。
【経文には四経〔しきょう〕含蔵〔ごんぞう〕と見えたり。】
大日経の経文に蔵通別円の四教を含むことが明らかなのです。
【大論の第百巻に云はく(第九十品を釈す)】
大智度論百巻(嘱累品第九十を釈するところ)には、
【「問うて曰く、更に何〔いず〕れの法か甚深〔じんじん〕にして、】
「問うていわく。これ以外の甚深にして、
【般若〔はんにゃ〕に勝〔すぐ〕れたる者有って、】
般若経よりも勝れている、どのような法があって、
【般若を以て阿難〔あなん〕に嘱累〔ぞくるい〕し、】
般若経を阿難に付嘱し、
【而〔しか〕も余経をば菩薩に嘱累するや。】
しかも、その他の経文を菩薩に付嘱するのか。
【答へて曰く、般若波羅蜜〔はらみつ〕は秘密の法に非ず。】
答えていわく、般若波羅蜜経は、秘密の法ではない。
【法華等の諸経に阿羅漢〔あらかん〕の受決〔じゅけつ〕作仏〔さぶつ〕を説いて】
しかも法華経などの諸経に、阿羅漢の未来の成仏を説いており、
【大菩薩能〔よ〕く受用〔じゅゆう〕す。】
大菩薩が、よく受持する。
【譬〔たと〕へば大薬師の能く毒を以て薬と為すが如し」等云云。】
例えば大薬師がよく毒をもって薬とするようなものである」と書かれているのです。
【玄義〔げんぎ〕の六に云はく】
法華玄義の巻六には
【「譬へば良医〔ろうい〕の能く毒を変じて薬と為すが如く、】
「譬えば、良い医者が、毒を変じて薬とするようなものである。
【二乗の根敗〔こんぱい〕反復すること能〔あた〕はず。之を名づけて毒と為す。】
二乗は、五根を壊しており、元に戻すことができない。これを毒と言う。
【今経に記を得るは即ち是毒を変じて薬と為す。】
今、法華経で二乗が記別を得るのは、毒が薬となるようなものである。
【故に論に云はく、余経は秘密に非ずとは】
つまり、大智度論に、その他の諸経は、秘密ではないとする意味は、
【法華を秘密と為せばなり。】
法華経のみを秘密とするからであると説いている。
【復本地の所説有り、諸経に無き所、】
また、法華経には、久遠本地の説があるが、諸経にはない。
【後に在って当に広く明かすべし」云云。】
このことについては、後に詳しく説明しよう」とあるのです。
【籖〔せん〕の六に云はく】
法華玄義釈籤の巻六には、
【「第四に引証の中、】
「第四の法華経が妙法で、諸経が麤法〔そほう〕であるとの文証の引用の中で、
【論に云はく等と言ふは、大論の文証なり。】
論に云く等とあるのは、大智度論の文章であり、
【秘密と言ふは八教の中の秘密には非ず。】
秘密と言うのは、化儀の四教と化法の四教の八教の中の秘密教ではない。
【但是〔これ〕前に未だ説かざる所を秘と為し、】
ただ、これは、法華経以前に未だ説かなかったところを秘と言い、
【開〔かい〕し已〔お〕はって外〔ほか〕無きを密と為す」文。】
これを開き終わった後は、それ以外には、ないのを密と言う」とあるのです。
【文句〔もんぐ〕の八に云はく「方等・般若に実相の蔵を説くと雖も、】
法華文句の巻八には「方等経、般若経に実相を説くといえども、
【亦未だ五乗の作仏を説かず。】
また、いまだ五乗の作仏を説かず、
【亦未だ発迹〔ほっしゃく〕顕本〔けんぽん〕せず。】
また、未だ発迹顕本していない。
【頓漸〔とんぜん〕の諸経は皆未だ融会〔ゆうえ〕せず。】
頓教、漸教の諸経は、皆、いまだ融通会入していない。
【故に名づけて秘と為す」文。記の八に云はく】
ゆえに名づけて秘となす」とあるのです。
【「大論に云はく、法華は是秘密、】
法華文句記の巻八には「大智度論には、法華経は、秘密であり、
【諸の菩薩に付すと。】
諸菩薩に付嘱すると言っている。
【今の下の文の如きは下方を召して】
法華経の涌出品の文章には、下方の菩薩を召すのは、
【尚本眷属〔ほんけんぞく〕を待つ。】
本眷属の弟子を待つと言う意味である。
【験〔あきら〕けし余は未だ堪へず」云云。】
その他の迹化の菩薩は、いまだ法華経を弘通することに耐えられない」とあり、
【秀句〔しゅうく〕の下に】
法華秀句の巻下に
【「竜女の成仏を釈して、身口〔しんく〕密なりと云へり」云云。】
「竜女の成仏を解釈して、身口密である」と述べているのです。
【此等の経・論・釈は、分明〔ふんみょう〕に】
これらの経論釈は、明らかに諸仏は
【法華経を諸仏は最第一と説き、】
法華経を最第一と説き、秘密教と定められたのに、
【秘密教と定め給へるを、経論に文証も無き妄語を吐き、】
真言宗では、経論に文証もない妄語を吐き、
【法華を顕教と名づけて之を下し之を謗〔ぼう〕ず。】
法華経を顕教と名づけて、これを見下し謗〔そし〕っているのです。
【豈〔あに〕大謗法に非ずや。】
これはまさに大謗法ではないでしょうか。