御書研鑚の集い 御書研鑽資料
池上兄弟御消息文 12 両人御中御書
【両人御中御書 弘安二年一〇月二〇日 五八歳】両人御中御書 弘安2年10月20日 58歳御作
【大国阿闍梨・ゑもん〔衛門〕のたいう〔大夫〕志〔さかん〕殿等に申す。】
大国阿闍梨、日朗、右衛門大夫志(宗仲)殿などに申し上げます。
【故大進阿闍梨の坊は各々の御計〔はか〕らひに有るべきかと存じ候に、】
故大進阿闍梨が住んでいた坊は、あなた方で処置されたと思っていたのですが、
【今に人も住せずなんど候なるはいかなる事ぞ。】
今もって人も住んでいないと云うのは、どうした事なのでしょうか。
【ゆづ〔譲〕り状のなくばこそ人々も計〔はか〕らひ候はめ。】
もし、譲り状が無ければ、いろいろと皆で相談をする事もあるでしょうが、
【くは〔委〕しくうけ給はり候へば、】
ところが、詳しく聞いてみると、
【べん〔弁〕の阿闍梨にゆづられて候よしうけ給はり候ひき。】
譲り状では、弁の阿闍梨、日昭に譲られていると聞いています。
【又いぎ〔異議〕あるべしともをぼへず候。】
また、それについて、特に異議があるとも思われません。
【それに御用ひなきは別の子細の候か。】
あなた方が今日まで譲り状通りにしないのは、何か別の理由でもあるのでしょうか。
【其の子細なくば大国阿闍梨・大夫殿の御計〔はか〕らひとして】
もし、別の理由がなければ、大国阿闍梨、日朗と大夫殿の御計〔はか〕らいとして、
【弁阿闍梨の坊へこぼ〔毀〕ちわたさせ給ひ候へ。】
弁の阿闍梨、日昭の坊へ解体して運んでください。
【心けん〔賢〕なる人に候へば、いかんがとこそをも〔思〕い候らめ。】
日昭は、心の賢い人であるので、これは、どうした事かと心配している事でしょう。
【弁の阿闍梨の坊をすり〔修理〕して、ひろ〔広〕くも〔漏〕らずば、】
弁の阿闍梨の坊を修理して広くし、雨も漏らないようにすれば、
【諸人の御ために御たから〔宝〕にてこそ候はんずらむめ。】
参詣の人々の為にも、貴重な財産になると思われます。
【ふゆ〔冬〕はせうまう〔焼亡〕しげ〔繁〕し。】
冬は、火事で家が焼失する事が多いので、
【もしや〔焼〕けなばそむ〔損〕と申し、】
もし、無人の坊が火事で焼けたりしたら、損である事は、言うまでもなく、
【人もわら〔笑〕いなん。】
人の物笑いとなるでしょう。
【このふみ〔書〕ついて両三日が内に事〔こと〕切〔き〕って、】
この手紙が着き次第、三日の内に、すべてを落着〔らくちゃく〕させて
【各々の御返事給び候はん。恐々謹言。】
各々、こちらに御返事下さい。恐れながら謹んで申し上げます。
【十月廿日 日蓮花押】
10月20日 日蓮花押
【両人御中】
両人御中
【ゆづ〔譲〕り状をたがうべからず。】
故人の譲状に相違しては、なりません。