日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


種々御振舞御書 2 予言の的中と迫害


第01章 予言の的中と迫害

【種々御振舞御書 建治二年 五五歳】
種々御振舞御書 建治2年 55歳御作


【去ぬる文永五年後の正月十八日、西戎〔せいじゅう〕大蒙古国より】
去る文永5年の正月18日に、西の大帝国、蒙古国から、

【日本国ををそ〔襲〕うべきよし牒状〔ちょうじょう〕をわたす。】
日本国が従属しないのであれば、攻撃すると言う内容の国書を送ってきました。

【日蓮が去ぬる文応元年(太歳庚申)に勘〔かんが〕へたりし】
このことによって、日蓮が文応元年に幕府に奏上した

【立正安国論すこしもたがわず符合〔ふごう〕しぬ。】
立正安国論の他国侵逼〔しんぴつ〕難が少しも違うことなく現実となったのです。

【此の書は白楽天が楽府〔がふ〕にも越へ、】
この立正安国論は、唐土の白楽天が国を諌めた漢詩よりも優れ、

【仏の未来記にもをとらず、】
釈迦仏の未来記にも劣ることなく、

【末代の不思議なに事かこれにすぎん。】
その後の世の中で、これを超えるような不思議なことがあったでしょうか。

【賢王聖主の御世〔みよ〕ならば、】
これは、国に対する大きな功績ですから、賢王や聖主の世の中であるなら、

【日本第一の権状〔けんじょう〕にもをこ〔行〕なわれ、】
日本一の功績として大いに顕彰され、

【現身に大師号もあるべし。】
生存中に大師号をも贈られるに違いないことなのです。

【定んで御たずねありて、】
また、必ずや蒙古の襲来について詳しく質問を受け、

【いくさの僉議〔せんぎ〕をもいゐあわせ、】
国を守る方法についての話し合いにも呼び出されて、

【調伏〔じょうぶく〕なんども申しつけられぬらんとをもひしに、】
蒙古調伏の祈りなども依頼されるであろうと思っていたのですが、

【其の義なかりしかば、】
幕府からは、なんの音沙汰もなかったので、

【其の年の末十月に十一通の状をかきてかたがたへ】
その年の末、十月に十一通の書状を書き送って

【をど〔驚〕ろかし申す。】
「正法誹謗をやめて日蓮に帰依するように」と警告したのですが、

【国に賢人なんどもあるならば、】
もし、国に賢人がいるならば、日蓮の予言と蒙古の通告が一致したことに驚き、

【不思議なる事かな、これはひとへにたゞ事にはあらず。】
「まことに不思議なことであり、これはただごとではなく、

【天照太神・正八幡宮の僧につい〔託〕て、】
天照太神と八幡大菩薩が、この僧に予言を託して、

【日本国のたすかるべき事を御計らひのあるかとをも〔思〕わるべきに、】
日本が助かるように計〔はか〕らったのではないか」と思うべきなのに、

【さはなくて或は使ひを悪口し、或はあざむき、】
ある者は、この十一通の書状を持っていった使者に悪口を言い、嘲〔あざけ〕り、

【或はとりも入れず、或は返事もなし、】
手紙を受け取りもせず、返事さえ与えなかったのです。

【或は返事をなせども上〔かみ〕へも申さず。】
また、ある者は、返事をよこしたが、上へ取りつがなかったのです。

【これひとへにたゞ事にはあらず。】
こういう有様で、これは、ほんとうに異常なことであったのです。

【設〔たと〕ひ日蓮が身の事なりとも、国主となり、】
たとえ、この手紙の訴えが日蓮の一身上の私事であったとしても、

【まつり〔政〕事をなさん人々は】
国の政治をつかさどる立ち場の人々であれば、

【取りつぎ申したらんには政道の法ぞかし。】
それを取り次いでこそ政道に叶〔かな〕う行為ではないでしょうか。

【いわ〔況〕うやこの事は上の御大事いできたらむのみならず、】
まして、このことは、幕府にとって大事が起きたと言うだけではなく、

【各々の身にあたりて、】
人々にとって身の危険が迫る事柄であり、

【をほ〔大〕いなるなげき出来すべき事ぞかし。】
大きな悲劇が巻き起こる、大事件であるのです。

【而〔しか〕るを用ひる事こそなくとも】
それなのに、この日蓮の忠告を、もちいることはないにしても、

【悪口まではあまりなり。】
それに悪口まで加えるとは、あまりにも常軌を逸した行為であったのです。

【此ひとへに日本国の上下万人、一人もなく法華経の強敵となりて、】
これは、ひとえに日本の人々が、一人も残らず法華経の強敵となって、

【とし〔年〕ひさ〔久〕しくなりぬれば大禍のつも〔積〕り、】
長い年月を経て来たので、誹謗の大罪が積もり積もって、

【大鬼神の各々の身に入る上へ、】
大鬼神が各人の身に入ったうえに、

【蒙古国の牒状に正念をぬかれてくる〔狂〕うなり。】
蒙古の通告状に、平静を失い、心が狂ってしまったのでしょうか。

【例せば殷〔いん〕の紂王〔ちゅうおう〕に比干〔ひかん〕といゐし者】
このような前例として、殷の紂王は、忠臣比干が死をもって

【いさ〔諫〕めをなせしかば、用ひずして胸をほる。】
諌めたのに対して、それを、もちいずに彼の死体の胸を割って恥ずかしめ、

【周の文武王にほろぼされぬ。】
結局、周の文王の子、武王に亡ぼされてしまったのです。

【呉王〔ごおう〕は伍子胥〔ごししょ〕がいさめを用ひず、】
呉王は、伍子胥の諌〔いさ〕めを、もちいず、

【自害をせさせしかば越王〔えつおう〕勾踐〔こうせん〕の手にかゝる。】
伍子胥は、亡国を見るに忍びないと嘆きながら自殺してしまい、

【これもかれがごとくなるべきかと、】
そのため呉王は、越の国の王、勾踐の手にかかって亡ぼされてしまったのです。

【いよいよふびん〔不便〕にをぼへて、】
日蓮は、現在の幕府も紂王や呉王のようになるだろうと不憫〔ふびん〕に思って、

【名をもをしまず】
悪名をたてられるのも惜しまず、

【命をもすてゝ、強盛に申しはりしかば、】
命も捨てて、強く「邪法を禁止せよ」と主張し続けたので、

【風大なれば波大なり、竜大なれば雨たけきやうに、】
あたかも風が強いほど波も大きいように、雨雲が大きいほど、雨が激しいように、

【いよいよあだ〔怨〕をなし、ますますにくみて】
いよいよ日蓮を恨〔うら〕み、ますます憎〔にく〕み、

【御評定〔ごひょうじょう〕に僉議〔せんぎ〕あり。】
この日蓮の処置について、話し合いがあり、

【頸〔くび〕をはぬるべきか、鎌倉ををわるべきか。】
斬罪にするのが良いとか、鎌倉を所払いにするのが妥当であろうとか、

【弟子檀那等をば、所領あらん者は所領を召して頸を切れ、】
弟子、檀那については、武士で所領のある者は、所領を取り上げて、首を斬れとか、

【或はろう〔籠〕にてせめ、】
あるいは、牢〔ろう〕に入れて責めよとか、

【あるいは遠流〔おんる〕すべし等云云。】
あるいは、遠流にせよなどと、さまざまな意見が出るありさまであったのです。


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