日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(上) 03 第02章 出離生死の法を求む

【悲しいかな痛ましいかな、】
これは、なんと悲しく、なんと痛ましいことでしょうか。

【我等無始より已来、無明〔むみょう〕の酒に酔ひて】
私達は、無始以来、無明の酒に酔って

【六道四生に輪回して、】
生きて六道を輪廻し、胎生、卵生、湿生、化生の四生となって、また生まれ、

【或時は焦熱〔しょうねつ〕・大焦熱の炎にむせび、】
ある時は、焦熱や大焦熱地獄の炎にむせび、

【或時は紅蓮〔ぐれん〕・大紅蓮の氷にとぢられ、】
ある時は、紅蓮や大紅蓮地獄の氷にとじこめられ、

【或時は餓鬼飢渇〔けかち〕の悲しみに値ひて、】
ある時は、餓鬼道の飢えの悲しみにあって、

【五百生の間飲食〔おんじき〕の名をも聞かず。】
五百生の長い間、食べ物の名も聞くこともできず、

【或時は畜生残害の苦しみをうけて、】
ある時は、畜生道の残害の苦しみを受けて、

【小さきは大きなるにのまれ、短きは長きにまかる。是を残害の苦と云ふ。】
小さいものは、大きなものに呑まれ、短いものは、長いものに巻かれ、

【或時は修羅闘諍の苦をうけ、或時は人間に生まれて八苦をうく。】
ある時は、修羅道の闘諍の苦しみを受け、ある時は、人間に生まれて

【生・老・病・死・愛別離苦〔あいべつりく〕・怨憎会苦〔おんぞうえく〕・】
生老病死の苦しみ、愛する者と別れる苦しみ、怨み憎むものに会う苦しみ、

【求不得苦〔ぐふとっく〕・五盛陰苦〔ごじょうおんく〕等なり。】
求めて得られない苦しみ、身体から生ずる苦しみの八つの苦しみを受けるのです。

【或時は天上に生まれて五衰をうく。】
ある時は、天上界に生まれて、五衰の苦しみを受けるのです。

【此くの如く三界の間を車輪のごとく回り、】
このように欲界、色界、無色界の三界の間を車輪のように廻り、

【父子の中にも親の親たる子の子たる事をさとらず、】
父と子の仲であっても、親も子も、お互いに憎しみ合い、

【夫婦の会〔あ〕ひ遇〔あ〕へるも会ひ遇ひたる事をしらず、】
夫婦が巡り会えたのに、お互いに他人のように相手を無視し合い、

【迷へる事は羊目〔ようもく〕に等しく、暗き事は狼眼〔ろうげん〕に同じ。】
羊に等しく迷い、狼と同じく道理を理解できないのです。

【我を生みたる母の由来をもしらず、生を受けたる我が身も死の終はりをしらず。】
自分を生む母の過去も知らず、生を受けた我が身の未来も知らないのです。

【嗚呼〔ああ〕受け難き人界の生をうけ、値ひ難き如来の聖教に値ひ奉れり、】
受け難い人界に生を受け、会い難い仏教にあったことは、

【一眼の亀の浮木〔ふもく〕の穴にあへるがごとし。】
一眼の亀が浮木の穴に出会ったように稀なことなのに、

【今度若し生死のきづなをきらず、三界の籠樊〔ろうはん〕を出でざらん事】
この度、もし生死の束縛を切らずに、三界の檻〔おり〕から出られなかったならば、

【かなしかるべし、かなしかるべし。】
どんなに悲しいことでしょうか。
【爰〔ここ〕に或智人来たりて示して云はく、】
ここに、ある智者が来て、このように告げたのです。

【汝が歎く所〔ところ〕実に爾〔しか〕なり。】
あなたの嘆きは、当然のことなのです。

【此くの如く無常のことは〔理〕りを思ひ知り、】
このように無常の道理を理解し、

【善心を発〔お〕こす者は麟角〔りんかく〕よりも希〔まれ〕なり。】
善心を発す者は、麒麟の角よりも稀〔まれ〕であり、

【此のことはりを覚〔さと〕らずして、悪心を発こす者は牛毛よりも多し。】
この道理を覚らないで、悪心を起こす者は、牛の毛よりも多いのです。

【汝早く生死を離れ菩提心を発こさんと思はゞ、】
あなたが生死の苦しみを離れ、菩提心を起こそうと思うのであれば、

【吾最第一の法を知れり、】
私は、その為の最上の方法を知っております。

【志あらば汝が為に之を説いて聞かしめん。】
志があるならば、あなたの為に、これを教えてあげましょう。


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