日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(上) 06 第05章 念仏の教えを説く

【其の時愚人茫然〔ぼうぜん〕として居士に問うて云はく、】
その時、愚者は、茫然として、この念仏者に、このように告げたのです。

【文証現証実に以て然〔しか〕なり。さて何なる法を持ちてか】
確かに文証も現証も、その通りですが、それでは、どの仏法を受持すれば、

【生死を離れ、速やかに成仏せんや。】
生死の束縛を離れ、速やかに成仏できるのでしょうか。

【居士示して云はく、】
その質問に対して、念仏者は、このように告げました。

【我在俗の身なれども深く仏道を修行して、】
私は、在家の身ではありますが、深く仏道を修行して、

【幼少より多くの人師の語を聞き、粗〔ほぼ〕経教をも開き見るに、】
幼少から多くの僧侶の話を聞き、ひととおり経文を開いて見ると、

【末代我等が如くなる無悪不造のためには】
末代の我等のように悪業ばかりを積み重ねている凡夫の為には、

【念仏往生の教へにしくはなし。されば慧心〔えしん〕僧都〔そうず〕は】
念仏往生の教えに及ぶものはないのです。それゆえ慧心僧都は、往生要集で

【「夫〔それ〕往生極楽の教行は濁世末代の目足なり」と云ひ、】
「それ往生極楽の教えと念仏は、濁世末代の人々の目と足である」と述べ、

【法然上人は諸経の要文を集めて一向専修の念仏を弘め給ふ。】
法然上人は、諸経の要文を集めて選択集を著し、一向専修の念仏を弘めたのです。

【中にも弥陀の本願は諸仏超過の崇重なり。】
中でも、阿弥陀如来の四十八願は、諸仏の本願を超えて尊いものです。

【始め無三悪趣の願より、終はり得三法忍の願に至るまで、】
始めの「無三悪趣」の願より、終わりの「得三法忍」の願に至るまで、

【いづれも悲願目出〔めで〕たけれども、】
どの悲願も有難いのですが、

【第十八の願殊〔こと〕に我等が為に殊勝なり。】
第十八願は、とくに私達の為には、有難いものなのです。

【又十悪・五逆をもきらはず、一念・多念をもえらばず。】
また、十悪や五逆罪の者も嫌わず、一念、多念をも選ばずに、皆、救われるのです。

【されば上一人より下万民に至るまで、】
それゆえ上一人より、下万民に至るまで、

【此の宗をもてなし給ふ事他に異なり、】
この念仏宗を尊ぶことは、他の宗派とは違っているのです。

【又往生の人それ幾〔いくばく〕ぞや。】
また往生できた人も、どれほど多いことでしょうか。

【其の時愚人の云はく、】
その時、愚者が、このように告げたのです。

【実に小を恥ぢて大を慕ひ、浅きを去〔す〕てゝ深きに就くは】
まことに小乗を恥じて大乗を慕い、浅い教えを捨てて、深い教えにつくのは、

【仏教の理のみに非ず、世間にも是〔これ〕法なり。】
仏教の道理のみではなく、世間の法でもあります。

【我早く彼の宗にうつらんと思ふ。】
私は、早く念仏宗に移りたいと思います。

【委細に彼の旨を語り給へ。】
詳しく、この宗旨について、語って欲しいものです。

【彼の仏の悲願の中に五逆・十悪をも簡〔えら〕ばずと云へる】
この仏は、悲願の中で五逆罪や十悪の者でも、見捨てないと述べられていますが、

【五逆とは何等ぞや、十悪とは如何。】
その五逆罪とは、何のことでしょうか。また十悪とは、何のことでしょうか。

【智人の云はく、】
この質問に対して、念仏者は、このように告げたのです。

【五逆とは父を殺し、母を殺し、阿羅漢を殺し、】
五逆罪とは、父を殺し、母を殺し、阿羅漢を殺し、

【仏身の血を出だし、和合僧を破す、是を五逆と云ふなり。】
仏身より血を出し、和合僧を壊〔こわ〕すことで、この五つの罪を云い、

【十悪とは身に三、口に四、意に三なり。】
十悪とは、身業に三、口業に四、意業に三の十であり、

【身に三とは殺・盗・婬、口に四とは妄語・綺語〔きご〕・悪口・両舌、】
身業の三とは、殺生、偸盗、邪婬、口業の四とは、妄語、綺語、悪口、両舌、

【意に三とは貪〔とん〕・瞋〔じん〕・癡〔ち〕、是を十悪と云ふなり。】
意業の三とは、貪欲、瞋恚、愚癡、これらを十悪と言うのです。


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