御書研鑚の集い 御書研鑚資料
三世諸仏総勘文教相廃立 4 権実とは夢と寤
第3章 権実とは夢と寤
【又十界の中には前の九法界なり。】
また十界の中では、仏界を除く九界なのです。
【又夢と寤〔うつつ〕との中には夢中の善悪なり。】
また夢と現実との中では、夢の中の善悪の事を説く教えなのです。
【又夢を権〔ごん〕と云ひ、寤を実〔じつ〕と云ふなり。】
また夢を権教と言い、現実を実教と言うのです。
【是の故に夢は仮に有って体性〔たいしょう〕無し、故に名づけて権と云ふなり。】
この故に夢は、仮にあって実態は無く、故にそれを権教と言うのです。
【寤は常住にして不変の心の体なり、故に此を名づけて実と為す。】
現実は、常住であり、不変の心の実態であり、その故に、これを実教と言い、
【故に四十二年の諸の経教は生死の夢の中の善悪の事を説く、故に権教と言ふ。】
四十二年の経文は、生死の夢の中の善悪を説くので権教と言うのです。
【夢中の衆生を誘引〔ゆういん〕し驚覚〔きょうがく〕して】
夢の中の衆生を導いて目を覚まさせ、
【法華経の寤と成さんと思〔おぼ〕し食〔め〕しての】
法華経の現実の世界に戻そうと思って
【支度〔したく〕方便の経教なり、】
準備された方便の教えなのです。
【故に権教と言ふ。斯〔こ〕れに由って】
それ故に権教と言うのです。この文字の読み方によって、
【文字の読みを糾〔ただ〕して心得べきなり。】
正しく、その意味を心得るべきなのです。
【故に権〔ごん〕をば権〔かり〕と読む。】
それ故に権教を権〔かり〕の教えと読み、
【権なる事の手本には夢を以て本と為す。】
権〔かり〕である事を、夢に、たとえているのです。
【又実〔じつ〕を実〔まこと〕と読む。実事の手本は寤なり。】
また実教とは真実と読むのです。真実の手本は、現実なのです。
【故に生死の夢は権〔かり〕にして性体無ければ権なる事の手本なり。】
それ故に生死の夢は、権であって、その正体が無ければ権である事の手本なのです。
【故に妄想〔もうぞう〕と云ふ。】
そうであるから、これを妄想と言うのです。
【本覚の寤〔うつつ〕は実にして生滅〔しょうめつ〕を離れたる心なれば】
本覚の現実は、真実であって生滅を離れた心であれば、
【真実の手本なり。故に実相と云ふ。】
真実の手本なのです。それ故に実相と言うのです。
【是を以て権実の二字を糾〔ただ〕して】
これをもって権実の二文字の意味を理解して
【一代聖教の化他〔けた〕の権〔ごん〕と自行〔じぎょう〕の実との】
一代聖教の化他の権教と自行の実教の
【差別を知るべきなり。故に四教の中には前の三教と、】
違いを知るべきなのです。それ故に四教の中では前の三教であると言い、
【五時の中には前の四時と、十法界の中には前の九法界は】
五時の中では前の四時であると言い、十界の中では、前の九界であると言い、
【同じく皆夢中の善悪の事を説くなり。故に権教と云ふ。】
同じく夢の中の善悪の事を説いているので、これを権教と言うのです。