日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑚資料


三世諸仏総勘文教相廃立 15 衆生即万法の深義


第14章 衆生即万法の深義

【総じて一代聖教は一人の法なれば】
総じて一代聖教は、一人の法であれば、

【我が身の本体を能く能く知るべし。】
我が身の本体を、よくよく理解するべきなのです。

【之を悟るを仏と云ひ、之に迷へば衆生なり。】
これを悟るを仏と言い、これに迷えば衆生と言うのです。

【此は華厳〔けごん〕経の文の意なり。】
これが華厳経の文章の意味なのです。

【弘決〔ぐけつ〕の六に云はく「此の身の中に具〔つぶさ〕に】
妙楽大師の止観輔行伝弘決の第六巻には「この身の中を詳細に観察すれば、

【天地に倣〔なら〕ふことを知る。】
天地を現わしていることがわかるのです。

【頭の円〔まど〕かなるは天に象〔かたど〕り、】
頭の丸いのは、天上を表わし、

【足の方なるは地に象ると知る。】
足の裏が四角なのは、地面を表わしているのです。

【身の内の空種〔うつろ〕なるは即ち是虚空なり。】
身体の中が空なのは、虚空を表わしているのです。

【腹の温〔あたた〕かなるは春夏に法〔のっと〕り、】
腹の温かなのは、春夏であり、

【背の剛〔こわ〕きは秋冬に法り、】
背の硬いのは、秋冬であり、

【四体は四時に法り、大節〔だいせつ〕の十二は十二月に法り、】
四体は、頭、胴、手、足は、春夏秋冬であり、大きな関節の十二は、十二月であり、

【小節〔しょうせつ〕の三百六十は三百六十日に法り、】
小さな関節の三百六十は、三百六十日であり、

【鼻の息の出入は山沢溪谷〔さんたくけいこく〕の中の風に法り、】
鼻の息の出入は、山沢溪谷の中の風であり、

【口の息の出入は虚空の中の風に法り、眼は日月に法り、】
口の息の出入は、大空の中の風であり、眼は、日月であり、

【開閉は昼夜に法り、髪は星辰〔せいしん〕に法り、】
その開閉は、昼夜であり、髪は、星であり、

【眉〔まゆ〕は北斗〔ほくと〕に法り、】
眉は、北斗七星であり、

【脈は江河〔こうが〕に法り、骨は玉石に法り、皮肉は地土に法り、】
血管は、江河であり、骨は、石灰であり、皮肉は、地表であり、

【毛は叢林〔そうりん〕に法り、五臓〔ごぞう〕は天に在りては五星に法り、】
毛は、森林であり、五臓は、空では五星であり、

【地に在りては五岳に法り、陰陽に在りては五行に法り、】
地では五岳であり、陰陽にあっては五行であり、

【世に在りては五常に法り、内に在りては五神に法り、】
世にあっては五常であり、内にあっては五神であり、

【行を修するには五徳に法り、罪を治むるには五刑〔ごけい〕に法る。】
修行にあっては五徳であり、罪にあっては五刑なのです。

【謂はく墨〔ぼく〕・□〔ぎ〕・□〔ひ〕・宮〔きゅう〕・大辟〔ていへき〕】
いわゆる、入れ墨、鼻を削ぎ、足を斬り、去勢をし、死刑にする

【(此の五刑は人を様々に之を傷〔いた〕ましむ】
(これらの五刑は、人を様々に痛めつけ、

【其の数三千の罰有り此を五刑と云ふ。)】
その数は三千の罰で有り、これを五刑と言うのです。)

【主領〔しゅりょう〕には五官と為〔な〕す。】
首領は、五官であり、

【五官は下の第八の巻に博物誌を引くが如し。謂はく苟萠〔こうぼう〕等なり。】
この五官は、下の第八巻の博物誌を引用しているのです。苟萠などがそうなのです。

【天に昇りては五雲と曰〔い〕ひ、化して五竜と為る。】
天に昇って五雲となり、それが変化して五竜となり、

【心を朱雀〔すざく〕と為し、腎〔じん〕を玄武〔げんぶ〕と為し、】
心臓を朱雀とし、腎臓を玄武とし

【肝〔かん〕を青竜〔せいりゅう〕と為し、】
肝臓を青竜とし、

【肺〔はい〕を白虎〔びゃっこ〕と為し、脾〔ひ〕を勾陳〔こうちん〕と為す。】
肺臓を白虎とし、脾臓を勾陳とするのです。

【又云はく、五音〔ごいん〕・五明・六芸〔りくげい〕皆此より起こる。】
また五の音、五つの学問、六つの素養は、すべて、これより起こるのです。

【亦復当〔まさ〕に内治の法を識〔し〕るべし。】
このように内の治める法を識るべきなのです。

【覚心〔かくしん〕、内に大王と為っては百重〔じゅう〕の内に居り、】
覚ろうとする心が、体の中で大王となって、百重の中にあり、

【出〔い〕でては則ち五官に侍衛〔じえい〕せらる。】
それが外に出で五官に守られるのです。

【肺をば司馬〔しば〕と為し、肝をば司徒〔しと〕と為し、】
肺臓を軍人とし、肝臓を警察とし、

【脾をば司空〔しくう〕と為し、四支〔しし〕をば民子〔みんし〕と為し、】
脾臓を守衛とし、四支を民衆とするのです。

【左〔ひだり〕をば司命〔しめい〕と為し、】
左を医者とし、

【右〔みぎ〕をば司録〔しろく〕と為し、人命を主司〔しゅし〕す。】
右を商人とし、人命を官僚とするのです。

【乃至臍〔へそ〕をば太〔たい〕一君〔くん〕等と為すと。】
また、ヘソを北極星とするのです。

【禅門〔ぜんもん〕の中に】
禅門波羅蜜次第法門の中で

【広く其の相を明かす」(已上)。】
広くその実態を明かしているのです。」と言われているのです。

【人身の本体を委しく検〔けん〕すれば是くの如し。】
このように人身の本体を詳しく調べてみると、実際に、このようであるのです。

【然るに此の金剛不壊〔こんごうふえ〕の身を以て】
ところが、この金剛不壊の身を

【生滅無常〔しょうめつむじょう〕の身なりと思ふ僻〔ひが〕思ひ、】
生滅無常の身と思う、おごりたかぶった思いは、

【譬〔たと〕へば荘周〔そうしゅう〕が】
譬えば、荘周が

【夢の蝶〔ちょう〕の如しと釈し給へるなり。】
夢の蝶になったようなものであると妙楽大師は、解釈されているのです。

【五行とは地水火風空なり。】
五行とは、地水火風空なのです。

【五大種〔ごだいしゅ〕とも五薀〔ごうん〕とも五戒とも五常とも】
五大種とも、五薀とも、五戒とも、五常とも、

【五方とも五智とも五時ともいふ。】
五方とも、五智とも、五時とも言い、

【只〔ただ〕一物にて経々の異説なり。】
これらは、ただ一つであり、経によって様々に説かれているのです。

【内典外典の名目〔みょうもく〕の異名なり。】
内典、外典の名前の違いだけであり、

【今経〔こんぎょう〕に之を開して、】
法華経では、これを、さらに詳しく、

【一切衆生の心中の五仏性、五智の如来の種子と説けり】
一切衆生の心の中の五仏性、五智の如来の種子であると説いているのです。

【是則ち妙法蓮華経の五字なり。此の五字を以て人身の体を造るなり。】
これが妙法蓮華経の五字なのです。この五字をもって人身の体を造るのです。

【本有〔ほんぬ〕常住〔じょうじゅう〕なり、本覚の如来なり。】
これが本有常住であり本覚の如来なのです。

【是を十如是と云ふ。此を唯仏与仏〔ゆいぶつよぶつ〕】
これを十如是と言い、これを法華経方便品において、ただ仏と仏とのみが、

【乃能究尽〔ないのうくじん〕と云ふ。】
すなわち、よく、これを究〔きわ〕め尽くしていると言っているのです。

【不退の菩薩と極果〔ごくか〕の二乗とは少分も知らざる法門なり。】
不退の菩薩と極果の阿羅漢を得た二乗とが少しも理解できない法門なのです。

【然るを円頓〔えんどん〕の凡夫は初心より之を知る。】
それなのに円頓の教えを信じる凡夫は、初めから、これを知ることが出来るのです。

【故に即身成仏するなり。】
故に即身成仏するのです。

【金剛不壊〔こんごうふえ〕の体なり。是を以て明らかに知るべし。】
故に金剛不壊の体となるのです。このことを明らかに知るべきなのです。

【天崩〔くず〕れば我が身も崩るべし、地裂〔さ〕けば我が身も裂くべし、】
天が崩れると我が身も崩れるのです。地が裂かれれば我が身も裂かれるのです。

【地水火風滅亡せば我が身も亦滅亡すべし。】
地水火風が滅亡するならば我が身も、また滅亡するのです。

【然るに此の五大種〔ごだいしゅ〕は】
この五大種は、

【過去・現在・未来の三世は替〔か〕はると雖も】
現在、過去、未来の三世が移り変わっても、

【五大種〔ごだいしゅ〕は替はること無し。】
この五大種だけは、変わることはないのです。

【正法と像法と末法との三時殊〔こと〕なりと雖も、】
正法と像法と末法との三時は、異なっていると言っても、

【五大種は是一にして盛衰転変〔せいすいてんぺん〕無し。】
五大種は、一つであって盛衰転変することなどないのです。

【薬草喩品〔やくそうゆほん〕の疏〔しょ〕には、】
薬草喩品第五の疏には、円教の論理は、大地であり、

【円教の理は大地なり、円頓の教は空の雨なり。】
円頓の教えは、空の雨であるのです。

【亦三蔵教・通教・別教の三教は三草と二木となり。】
また三蔵教、通教、別教の三教は、三草と二木なのです。

【其の故は此の草木は円理の大地より生じて、円教の空の雨に養はれて、】
その故は、この草木は、円理の大地より発芽して、円教の空の雨によって成長し、

【五乗の草木は栄ゆれども、】
このように五乗の草木は、繁栄するのであるけれども、

【天地に依りて我栄えたりと思ひ知らざるに由るが故に、】
天地によって自身が栄えたと思わないので、釈迦牟尼仏は、

【三教の人天〔にんでん〕・二乗・菩薩をば草木に譬〔たと〕へて説きたり。】
三教の人界、天界、二乗、菩薩を草木に、たとえて説いているのです。

【不知恩〔ふちおん〕の故に草木の名を得〔う〕。】
恩を知らない故に、草木の名前をつけているのです。

【今法華に始めて五乗の草木は、】
今、法華経に来て始めて、五乗の草木は、

【円理の母と円教の父とを知るなり。】
円理の母と円教の父とを知る事が出来たのです。

【一地の所生〔しょしょう〕なれば母の恩を知るが如く、】
一つの大地から発芽したと知れば、母の恩を知り、

【一雨の所潤〔しょにん〕なれば父の恩を知るが如し。】
一滴の雨によって潤ったと知れば、父の恩を知るのです。

【薬草喩品の意〔こころ〕是くの如くなり。】
薬草喩品の意味は、このようなものなのです。


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