日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


大田乗明等御消息文 02 秋元殿御返事


【秋元殿御返事 文永二年一月一一日 四四歳】
秋元殿御返事 文永2年1月11日 44歳御作

【御文〔おんふみ〕委〔くわ〕しく承り候ひ畢〔おわ〕んぬ。】
御手紙を詳しく拝見しました。

【御文に云はく、末法の始め五百年にはいかなる法を弘むべしと、】
御手紙には「末法の始めの五百年には、どのような法を弘めるべきなのかと

【思ひまひらせ候ひしに、聖人の仰せを承り候に、】
疑問に思っておりましたが、聖人の御答えでは、

【法華経の題目に限りて弘むべき由聴聞申して】
法華経の題目だけを弘めるべきであると聞いて、

【御弟子〔みでし〕の一分に定まり候。殊〔こと〕に五節供はいかなる由来、】
弟子のひとりとなりました。さて五節句〔せっく〕は、どのような由来で、

【何なる所表、】
どのような事をするべきなのでしょうか、

【何を以て正意としてまつ〔祭〕り候べく候や云云。】
また、何をもって正しく祭るべきなのでしょうか」と記されていました。

【夫〔それ〕此の事は日蓮委しく知る事なし。】
この事について、日蓮は、詳しい事は、わかりませんが、

【然りと雖も粗〔ほぼ〕意得て候。】
およその事は、心得ています。

【根本大師の御相承ありげに候。】
これについては、伝教大師の御相承〔そうじょう〕があるようで、

【総じて真言天台両宗の習ひなり。】
総じては、真言宗、天台宗において、その事が習い伝えられているのです。

【委しくは曾谷殿へ申して候。】
それについて、詳しくは、曾谷殿へ御話しておいたので、

【次〔つ〕いでの御時は御談合あるべきか。先づ五節供の次第を案ずるに、】
ついでの時に聞いてください。まず、五節句の由来を考えると、

【妙法蓮華経の五字の次第の祭りなり。】
妙法蓮華経の五字に由来がある祭りなのです。

【正月は妙の一字のまつ〔祭〕り、天照太神を歳〔とし〕の神とす。】
正月は、妙の一字の祭りであり、天照太神を歳の神とするのです。

【三月三日は法の一字のまつりなり、辰〔たつ〕を以て神とす。】
三月三日は、法の一字の祭りであり、辰〔たつ〕をもって神とするのです。

【五月五日は蓮の一字のまつりなり、午〔うま〕を以て神とす。】
五月五日は、蓮の一字の祭りであり、午〔うま〕をもって神とするのです。

【七月七日は華の一字の祭りなり、申〔さる〕を以て神とす。】
七月七日は、華の一字の祭りであり、申〔さる〕をもって神とするのです。

【九月九日は経の一字のまつり、戌〔いぬ〕を以て神とす。】
九月九日は、経の一字の祭りであり、戌〔いぬ〕をもって神とするのです。

【此くの如く心得て、南無妙法蓮華経と唱へさせ給へ。】
このように心得て、節句の祭りでは、南無妙法蓮華経と唱えてください。

【「現世〔げんぜ〕安穏〔あんのん〕後生〔ごしょう〕善処〔ぜんしょ〕」】
そうすれば法華経薬草喩品に「現世安穏にして後に善処に生ず」と説かれている通り

【疑ひなかるべし。】
現世において妙法を弘める人生を歩み、後生に成仏する事は、間違いないのです。

【法華経の行者をば一切の諸天、不退に守護すべき経文分明なり。】
法華経の行者を一切の諸天が常に守護すべき事は、このように経文に明らかであり、

【経の第五に云はく】
さらに法華経の第五の巻の安楽行品に法華経守護の諸天善神の加護について、

【「諸天昼夜に常に法の為の故に而して之を衛護〔えいご〕す」云云。】
「諸天は、昼夜に常に法の為に法華経の行者を守護する」と説かれています。

【又云はく「天の諸の童子以て給使を為〔な〕し、】
また、故に「天の諸々の子供によって給使をなし、

【刀杖〔とうじょう〕も加へず、毒も害すること能〔あた〕はず」云云。】
刀杖を加える事はできず、毒をもって害することもできない」と説かれています。

【諸天とは梵天・帝釈・日月・四大天王等なり。法とは法華経なり。】
諸天とは、大梵天王、帝釈天、日月、四大天王などであり、法とは、法華経であり、

【童子とは七曜・】
子供とは、太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の七曜、

【二十八宿・摩利支天〔まりしてん〕等なり。】
古代インドや中国にある28の恒星、そして日光である摩利支天などのことです。

【「臨兵〔りんびょう〕闘者〔とうしゃ〕】
「兵闘に臨む者は、

【皆陣〔かいじん〕列在前〔れつざいぜん〕」】
皆、列をなして前に在り」の呪文も

【是又「刀杖〔とうじょう〕不加〔ふか〕」の四字なり。】
結局は、法華経安楽行品の「刀杖を加えず」の四字にあたるのです。

【此等は随分の相伝なり。能〔よ〕く能く案じ給ふべし。】
これらは、大切な相伝であるので、よくよく思案して理解すべきなのです。

【第六に云はく】
また法華経第六巻の法師功徳品には、政治、経済、文化などは、すべて妙法であり、

【「一切世間の治生産業は皆実相と相〔あい〕違背〔いはい〕せず」云云。】
「一切世間の治生産業は、皆実相と違背せず」と説かれています。

【五節供の時も唯南無妙法蓮華経と唱へて悉地〔しつじ〕成就せしめ給へ。】
したがって五節句の時も、ただ南無妙法蓮華経と唱へて成仏を目指してください。

【委細は又々申すべく候。】
詳しくは、また別の機会に申し上げます。

【次に法華経は末法の始め五百年に弘まり給ふべきと聴聞仕〔つかまつ〕り、】
次に法華経が末法の始めの五百年に広まると聞いて、

【御弟子〔みでし〕となると仰せ候事。】
弟子に成ったと述べられている事について、

【師檀となる事は三世の契〔ちぎ〕り種熟脱の三益、】
日蓮が師となり、あなたが檀那となる事は、過去からの三世にわたる約束であり、

【別に人を求めんや。】
種熟脱の三益も別の人に求めては、なりません。

【「在々諸仏の土に常に師と倶に生まれん」】
法華経化城喩品の「在在諸仏土に、常に師と倶に生まれる」とは、この事なのです。

【「若し法師〔ほっし〕に親近〔しんごん〕せば、速やかに菩提の道を得ん。】
また「もし法師に親近するならば、速やかに菩提の道を得ることができる。

【是の師に随順して学ばゞ恒沙〔ごうじゃ〕の仏を見たてまつることを得ん」との】
この師に随順して学ぶならば、恒河の砂ほどの仏を見る事ができる」との

【金言違ふべきや。】
法華経法師品の金言が違うわけは、ないのです。

【提婆品に云ふ「所生の処には常に此の経を聞かん」の人は】
法華経提婆達多品に「生まれる処で常に、この法華経を聞く」と説かれている人が、

【あに貴辺にあらずや。】
あなたでは、ないなどと言う事が、どうしてあるでしょうか。

【其の故は次上〔つぎかみ〕に】
その故は、この前の文に

【「未来世〔みらいせ〕の中に、若し善男子善女人有って」と見えたり。】
「未来世の中に、もし、善男子、善女人あって」と説かれているからなのです。

【善男子とは法華経を持〔たも〕つ俗の事なり。】
この善男子とは、法華経を持〔たも〕つ俗世間の人のことです。

【弥〔いよいよ〕信心をいたし給ふべし、信心をいたし給ふべし。】
この事をよく考えて、いよいよ信心に励んでください。

【恐々謹言。】
恐れながら謹しんで申しあげます。

【正月十一日    日蓮花押】
1月11日    日蓮花押

【秋元殿御返事】
秋元殿御返事

【安房国〔あわのくに〕ほた〔保田〕より出だす】
安房国〔あわのくに〕の保田〔ほた〕より、この手紙を出しました。


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