御書研鑚の集い 御書研鑽資料
大田乗明等御消息文 14 大田殿女房御返事
【大田殿女房御返事 弘安元年九月二四日 五七歳】
大田殿女房御返事 弘安1年9月24日 57歳御作
【八木〔はちぼく〕一石付けたり十合。】
米一石に穀物十合を付けて頂きました。
【者〔ていれば〕大旱魃〔かんばつ〕の代〔よ〕に、】
さて、ひどい日照りの世の中に、
【かは〔渇〕ける物に水をほどこ〔施〕しては、】
渇いた者に水を施した事によって、
【大竜王と生まれて雨をふらして人天をやしな〔養〕ふ。】
大竜王と生まれて、雨を降らし、人界と天界の衆生を養い、
【飢〔う〕えたる代に、】
飢饉の世に食べ物を施した人は、
【食をほどこせる人は国王と生まれて其の国ゆた〔豊〕かなり。】
国王と生まれ、その国は、豊かになると言う事です。
【過去の世に金色〔こんじき〕王と申す大王ましましき。】
過去の世に金色〔こんじき〕と言う名の大王がいました。
【其の国をば波羅奈〔はらない〕国と申す。】
その国を波羅奈〔はらない〕国と言います。
【十二年が間、旱魃ゆきて人民う〔飢〕え死ぬる事おびた〔夥〕ゞし。】
十二年の間、日照りが続いて、飢えて死ぬ人は、おびただしい数にのぼりました。
【宅中には死人充満し、道路には骸骨充満せり。】
家の中には、死人が溢れ、道路には、骸骨〔がいこつ〕が充満していました。
【其の時、大王一切衆生をあは〔哀〕れみて、多くの蔵を開きて】
その時、大王は、一切衆生を哀れんで、多くの蔵を開いて、
【財を施し給ひて、蔵の中の財つ〔尽〕きて】
財産を使い人々に施しをされました。そして蔵の中の財産が尽きて、
【唯〔ただ〕一日の供御〔くご〕のみのこ〔残〕りて候ひしに、】
ただ一日分の食べ物だけが残りました。
【衆僧をあつめて供養をなし、王と后と僧と万民と】
それなのに、多くの僧を集めて供養をし、王と后〔きさき〕と多くの僧と万民が、
【皆う〔飢〕え死なんとせし程に、天より飲食〔おんじき〕雨のごとくふりて】
すべて飢えて死ぬと言う時に、天から飲み物と食べ物が雨のように降って来て、
【大国一時に富貴せりと金色王経にとかれて候。】
大王の国は、一時に豊かになったと金色〔こんじき〕王経には、説かれています。
【此も又かくのごとし。】
あなたの御供養も、これと、まったく同じなのです。
【此の供養によりて現世には福人となり、】
この御供養によって、現世では、福徳の人となり、
【後生には霊山〔りょうぜん〕浄土へまいらせ給ふべし。恐々謹言。】
未来には、霊山浄土へと参られることでしょう。恐れながら謹しんで申し上げます。
【九月二十四日 日蓮花押】
9月24日 日蓮花押
【大田殿女房御返事】
大田入道殿女房御返事