御書研鑚の集い 御書研鑽資料
大田乗明等御消息文 07 曾谷入道殿御返事
【曾谷入道殿御返事 文永一二年三月 五四歳】
曾谷入道殿御返事 文永12年3月 54歳御作
【方便品の長行〔じょうごう〕書き進〔まい〕らせ候。】
方便品の長行を書写して差し上げました。
【先に進らせ候ひし自我偈〔じがげ〕に相副〔そ〕へて読みたまふべし。】
先に差し上げた自我偈に添えて、読むようにしてください。
【此の経の文字は皆悉く生身〔しょうじん〕妙覚の御仏なり。】
この経文の文字は、一字、一字が、ことごとく生身の妙覚の仏なのです。
【然れども我等は肉眼〔にくげん〕なれば文字と見るなり。】
しかしながら、我等、凡夫には、肉眼なので、ただの文字と見えるのです。
【例せば餓鬼は恒河〔ごうが〕を火と見る、人は水と見る、】
例えば、餓鬼道のものは、恒河を火と見え、人間は、水と見え、
【天人は甘露〔かんろ〕と見る。水は一なれど果報に随って別々なり。】
天人は、甘露と見えるのです。水は、同じでも果報によって別々に見えるのです。
【此の経の文字は盲眼〔もうげん〕の者は之を見ず、】
それと同じように、この経文の文字は、盲目の者には、これを見ることができず、
【肉眼の者は文字と見る、】
肉眼の者は、文字と見え、
【二乗は虚空〔こくう〕と見る、菩薩は無量の法門と見る、】
二乗は、虚空〔こくう〕と見え、菩薩は、無量の法門と見え、
【仏は一々の文字を金色〔こんじき〕の釈尊と御覧有るべきなり。】
仏は、一々の文字を金色の釈尊と見えるはずなのです。
【即持仏身とは是なり。】
経文に即持仏身とあるのは、このことなのです。
【されども僻見〔びゃっけん〕の行者は】
しかしながら、僻見〔びゃっけん〕の行者は、
【加様〔かよう〕に目出度く渡らせ給ふを破し奉るなり。】
このように尊い経文を破〔やぶ〕っているのです。
【唯〔ただ〕相構へ相構へて】
ただ、用心に用心をして重ねて
【異念無く一心に霊山浄土を期〔ご〕せらるべし。】
余念なく一心に霊山浄土を期〔き〕せられるべきです。
【心の師とはなるとも心を師とせざれとは六波羅蜜経の文ぞかし。】
心の師とは、なるとも、心を師とせざれとは、六波羅蜜経の文章です。
【委細は見参の時を期し候。恐々謹言。】
詳細は、また御会いした時に申し上げます。恐れながら謹しんで申し上げます。
【文永十二年三月日 日蓮花押】
文永12年3月 日 日蓮花押
【曾谷入道殿】
曾谷入道殿