日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


大田乗明等御消息文 05 曾谷入道殿御書


【曾谷入道殿御書 文永一一年一一月二〇日 五三歳】
曾谷入道殿御書 文永11年11月20日 53歳御作

【自界〔じかい〕叛逆〔ほんぎゃく〕の難、】
自界〔じかい〕叛逆〔ほんぎゃく〕の難と、

【他方〔たほう〕侵逼〔しんぴつ〕の難すで〔既〕にあ〔合〕ひ候ひ了んぬ。】
他国侵逼〔しんぴつ〕の難は、すでに現実のものとなりました。

【これをもってをもうに「多く他方の怨賊〔おんぞく〕有って】
この事から思うのは「多くの他国の怨賊が攻めて来て

【国内を侵掠〔しんりょう〕し人民諸の苦悩を受く。】
国内を侵略し、人々は、諸の多大な苦悩を受け、

【土地に所楽の処有ること無けん」と申す経文に合ひぬと覚え候。】
何処にも安全なところがない」と言う経文通りになると思われるのです。

【当時壱岐・対馬の土民の如くに成り候はんずるなり。】
やがて日本の人々は、皆、今の壱岐や対馬の人々と同じ苦しみを受けるでしょう。

【是偏〔ひとえ〕に仏法の邪見なるによる。】
これは、ひとえに仏法の邪見に依るのです。

【仏法の邪見と申すは真言宗と法華宗との違目なり。】
仏法の邪見と言うのは、真言宗と法華宗との優劣の間違った見解を言うのです。

【禅宗と念仏宗とを責め候ひしは】
これまで禅宗と念仏宗の間違いを責めたのは、

【此の事を申し顕はさん料なり。】
この見解を顕す為に過ぎなかったのです。

【漢土には善無畏〔ぜんむい〕・金剛智〔こんごうち〕・不空〔ふくう〕】
中国では、善無畏〔ぜんむい〕、金剛智〔こんごうち〕、不空の

【三蔵の誑惑〔おうわく〕の心、】
三三蔵が誑惑の心によって、すでに中国において天台大師によって立てられていた

【天台法華宗を真言の大日経に盗み入れて、】
天台法華宗で説くところの一念三千の法門を真言の大日経の中に盗み入れて、

【還って法華経の肝心と天台大師の徳とを隠せし故に漢土滅するなり。】
それによって法華経の肝心と天台大師の威徳を隠した為に国が滅びたのです。

【日本国は慈覚大師が大日経・金剛頂〔こんごうちょう〕経・】
日本では、慈覚大師が真言宗の大日経、金剛頂〔こんごうちょう〕経、

【蘇悉地〔そしっじ〕経を鎮護〔ちんご〕国家の三部と取って、】
蘇悉地〔そしっじ〕経を国家鎮護〔ちんご〕の三部経と定めて、

【伝教大師の鎮護国家を破せしより、】
伝教大師の法華経の国家鎮護の法を破壊してしまったので、

【叡山〔えいざん〕に悪義出来して終〔つい〕に王法尽きにき。】
比叡山に悪義が出来〔しゅったい〕して、ついに王法が滅びたのです。

【此の悪義鎌倉に下って又日本国を亡ぼすべし。】
さらに、この悪義は、鎌倉にまでやって来て、再び日本を滅ぼすに至るでしょう。

【弘法大師の邪義は中々顕然なれば、人もたぼらかされぬ者もあり。】
それでも弘法大師の邪義は、歴然としているので惑わされない者もいますが、

【慈覚〔じかく〕大師〔だいし〕の法華経・大日経等の】
比叡山延暦寺第三代座主、慈覚大師円仁の法華経と大日経との

【理同〔りどう〕事勝〔じしょう〕の釈は智人既に許しぬ。】
理同事勝の解釈は、比叡山の智者ですら、正しいと認めてしまったくらいですから、

【愚者争〔いか〕でか信ぜざるべき。】
愚者は、どうして信じないことがあるでしょうか。

【慈覚大師は法華経と大日経との勝劣を祈請〔きしょう〕せしに、】
慈覚大師は、法華経と大日経の優劣を定めるのに、それがわからず祈禱に頼って、

【箭〔や〕を以て日を射ると見しは此の事なるべし。】
矢によって太陽を射た夢を見て、法華経よりも大日経が上であると主張したのです。

【是は慈覚大師の心中に修羅〔しゅら〕の入りて】
これは、慈覚大師の心の中に修羅の傲慢〔ごうまん〕な心が入って

【法華経の大日輪を射るにあらずや。】
法華経の大日輪を射る夢を見させたと言うことではないでしょうか。

【此の法門は当世叡山其の外日本国の人用ふべきや。】
この慈覚大師の法門を現在の比叡山や、日本の人々は、信じるべきでしょうか。

【若し此の事、実事ならば】
もし大日経が法華経よりも優れているという慈覚大師の結論が真実であるならば、

【日蓮豈〔あに〕須弥山〔しゅみせん〕を投ぐる者にあらずや。】
日蓮は、須弥山を投げるような馬鹿な事をしている愚かな者でしょう。

【我が弟子は用ふべきや如何。】
私の弟子は、この事実をどのように考えるべきなのでしょうか。

【最後なれば申すなり。恨み給ふべからず。】
最後なので言いますが、日蓮が言う事を信じないで後で日蓮を恨んではなりません。

【恐々謹言。】
恐れながら謹しんで申し上げます。

【十一月廿日    日蓮花押】
11月20日    日蓮花押

【曾谷入道殿】
曾谷入道殿


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