日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 20 第19章 禅宗が派祖の意に反す

【其の上当世の禅人自宗に迷へり。】
その上、世の禅宗の人々は、自分の宗旨にさえ迷っているのです。

【続高僧伝〔ぞくこうそうでん〕を披見するに、習禅の初祖達磨〔だるま〕大師の】
続高僧伝を開いて見ると、禅宗の初祖達磨大師の

【伝に云はく「教に藉〔よ〕って宗を悟る」と。】
伝記には「教によって宗を悟る」とあり、

【如来一代の聖教の道理を習学し、法門の旨、宗々の沙汰を知るべきなり。】
釈尊一代の聖教の道理を学んで、法門の趣旨、宗派の違いを知ったと言うのです。

【又達磨の弟子六祖の第二祖慧可〔えか〕の伝に云はく】
また、達磨の弟子で六祖の中の第二祖慧可の伝記には、

【「達磨禅師四巻の楞伽〔りょうが〕を以て可に授けて云はく、】
「達磨禅師が四巻の楞伽経〔りょうがきょう〕を慧可〔えか〕に授けて、

【我〔われ〕漢の地を観〔み〕るに唯此の経のみ有り。】
私が、この中国の地の姿を観ると、ただ、この経のみが適している。

【仁者〔きみ〕依行せば自ら世を度することを得ん」と。】
あなたが、これを修行するならば、おのずから世を済度することができる」とあり、

【此の文の意は達磨大師天竺より唐土に来たって、】
この文章の意味は、達磨大師がインドから中国に来て、

【四巻の楞伽経をもて慧可に授けて云はく、】
四巻の楞伽経〔りょうがきょう〕を慧可〔えか〕に授けて言うのには、

【我此の国を見るに是の経殊〔こと〕に勝れたり、】
自分は、この国を見ると、この経文が、とりわけ優れている、

【汝持ち修行して仏に成れとなり。】
あなたは、これを受持し修行して仏に成りなさいと言うことです。

【此等の祖師既に経文を前〔さき〕とす。】
これらの祖師は、すでに経文を第一としているではないですか。

【若し之に依って経に依ると云はゞ】
もし、このことから、経文に依ると言うのであれば、

【大乗か小乗か、権教か実教か、能〔よ〕く能く弁ふべし。】
その経とは、大乗なのか小乗なのか、権教か実教かを、よくよく理解するべきです。

【或は経を用ゆるには禅宗も楞伽経・首楞厳〔しゅりょうごん〕経・】
あるいは、経文をもちいる場合には、禅宗も楞伽経や首楞厳経、

【金剛般若経等による。】
金剛般若経などに依っているのです。

【是皆法華已前の権教覆蔵〔ふぞう〕の説なり。】
しかし、これらは、みな法華以前の権教であり、真実を覆い隠した経説なのです。

【只〔ただ〕諸経に是心即仏・即心是仏等の理の方を説ける】
ただ諸経に「是心即仏、即心是仏」などの理の一面を説いただけの

【一両の文と句とに迷ふて、】
一、二の文章と文句に迷って、

【大小・権実・顕露・覆蔵をも尋ねず、】
大乗と小乗、権教と実教、顕露と覆蔵などの相違を少しも理解できず、

【只不二を立てゝ而二を知らず。】
ただ不二〔ふに〕の義だけを立てて、而二〔にに〕を知らず、

【謂己均仏〔いこきんぶつ〕の大慢を成せり。】
自分を仏と等しいなどと大慢心を起こしているのです。

【彼の月氏の大慢が迹〔あと〕をつぎ、】
これは、インドの大慢心の婆羅門〔ばらもん〕と同様であり、

【此の尸那〔しな〕の三階〔さんがい〕禅師が古風を追ふ。】
中国で邪教とされた三階禅師の過去の出来事を思い起こさせるものです。

【然りと雖も大慢は生きながら無間〔むけん〕に入り、】
しかし、その後、大慢の婆羅門〔ばらもん〕は、生きながら無間地獄に堕ち、

【三階は死して大蛇と成りぬ、】
三階禅師は、死んでから大蛇となったと言います。

【をそろしをそろし。釈尊は三世了達の解了〔げりょう〕朗らかに、】
ほんとうに恐ろしいことです。釈尊は、三世を理解する優れた智見と、

【妙覚果満の智月潔くして未来を鑑〔かんが〕みたまひ、】
五十二位の最上位の妙覚の位に登られた智慧の力によって、未来を見通され、

【像法決疑経に記して云はく「諸の悪比丘或は禅を修する有って経論に依らず、】
像法決疑経に「諸の悪比丘が、あるいは、禅を修行する者は、経論によらずに、

【自ら己見を逐〔お〕ふて非を以て是と為し、】
自分だけの見解に執着して、非を是とし、是を非として、

【是〔これ〕邪・是〔これ〕正と分別すること能〔あた〕はず。】
正邪を分別することができず、

【遍〔あまね〕く道俗に向かって是くの如き言を作さく、】
あまねく僧俗に向かって、

【我能く是を知り、我能く是を見ると。当に知るべし、】
自分だけが正しい法門を知り、正しい法門を見る事ができると言うのです。

【此の人は速やかに我が法を滅す」と。】
この人は、我が仏法を、すぐに滅ぼす」と説かれています。

【此の文の意は諸の悪比丘あて禅を信仰して】
この文章の意味は、多くの悪比丘が禅を信仰して、

【経論をも尋ねず、邪見を本として、】
経論を学ばず、邪見を根本として、

【法門の是非をば弁へずして、而も男女・尼法師等に向かって、】
法門の正邪をわきまえずに、しかも男女、尼法師などに向かって、

【我よく法門を知れり、人はしらずと云ひて】
自分は、よく法門を知っているが、他の人は、知らないと言って、

【此の禅を弘むべし。当に知るべし、此の人は我が正法を滅すべしとなり。】
この禅宗を弘めるが、実際は、この人が正法を滅ぼすと言う意味なのです。

【此の文をもて当世を見るに宛〔あたか〕も符契〔ふけい〕の如し。】
この文章によって当世の禅宗の有様を見ると完全に符合するのです。
【汝慎むべし汝畏るべし。】
あなたも言葉を慎み、間違った主張を怖れなければなりません。


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