日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 33 第32章 唱題行の肝要を示す

【爰〔ここ〕に愚人意を竊〔ひそ〕かにし言を顕はにして云はく、】
ここで愚者は、心を定め、決意の言葉を顕して、このように告げたのです。

【誠に君を諫〔いさ〕め家を正しくする事】
主君を諌め、組織を正すことは、

【先賢の教へ本文に明白なり。】
過去の賢人の教えであり、古書にも明白に記されています。

【外典此くの如し、内典是に違ふべからず。】
外典にさえ、そうであるのに、内典がこれに相違するはずがありません。

【悪を見ていまし〔誡〕めず謗を知ってせ〔責〕めずば、】
悪を見て諫〔いさ〕めず、謗法を知って責めなければ、

【経文に背き祖師に違せん。】
経文に背〔そむ〕き、祖師に反することになります。

【其の禁〔いまし〕め殊〔こと〕に重し。今より信心を至すべし。】
その罪は、重く、今後は、言われる通りに信心を励〔はげ〕もうと思います。

【但し此の経を修行し奉らん事叶ひがたし。】
ただし、この法華経を修行することは、実に難しいと思います。

【若し其の最要あらば証拠を聞かんと思ふ。】
もし、その最良の方法があるのなら、それを聞きたいと思います。

【聖人示して云はく、】
それに聖人は、このように告げました。

【今汝の道意を見るに鄭重〔ていちょう〕慇懃〔おんごん〕なり。】
いま、あなたの求道の志を見ると実に立派であり、それに御答えしましょう。

【所謂〔いわゆる〕諸仏の誠諦得道の最要は只是妙法蓮華経の五字なり。】
実は、諸仏の覚りを得る為の最良の方法は、ただ妙法蓮華経の五字なのです。

【檀王の宝位を退き、】
須頭檀王〔すずだんのう〕が王位を退いて、出家して成仏したことも、

【竜女が蛇身を改めしも】
竜女が蛇身を改めて、仏の姿になったことも、

【只此の五字の致す所なり。】
ただ、この妙法蓮華経の五字の力に依るものなのです。

【夫〔それ〕以〔おもんみ〕れば今の経は受持の多少をば一偈一句と宣べ、】
この法華経は、この経をどれほど受持すべきかについては、一偈一句と述べ、

【修行の時刻をば一念随喜と定めたり。】
その修行の長さについては、一念随喜によって成仏すると定めています。

【凡〔およ〕そ八万宝蔵の広きも一部八巻の多きも、】
総じて八万法蔵の広大な教えも、法華経一部八巻の多くの経文も、

【只是の五字を説かんためなり。】
ただ、この妙法五字を説くためであったのです。

【霊山の雲の上、鷲峰〔じゅぶ〕の霞〔かすみ〕の中に、】
霊山の雲の上、鷲〔わし〕の峰において霞の中で、虚空会の儀式が行われた時に、

【釈尊要を結び地涌付嘱を得ることありしも法体は何事ぞ、】
釈尊が一切の法門の要旨を、地涌の菩薩に付属したことも、

【只此の要法〔ようぼう〕に在り。】
その要法は、何であったかと言うと、ただ、この妙法蓮華経なのです。

【天台・妙楽の六千張〔ちょう〕の疏〔しょ〕玉を連ぬるも、】
天台大師、妙楽大師の珠玉を連ねたような素晴らしい六千にも及ぶ解説書も、

【道邃〔どうずい〕・行満〔ぎょうまん〕の数軸の釈金〔こがね〕を並ぶるも、】
道邃、行満の黄金を並べたように貴重な解説書も、

【併〔しかしなが〕ら此の義趣を出でず。】
すべて、この趣旨を越えることは、ないのです。

【誠に生死を恐れ涅槃を欣〔ねが〕ひ信心を運び渇仰を至さば、】
まことに生死の苦しみを恐れ、涅槃を求め、信心を励み、仏道を渇望するならば、

【遷滅〔せんめつ〕無常は昨日の夢、菩提の覚悟は今日のうつゝなるべし。】
変転して止まない無常の姿は、昨日の夢と消え、悟りは、今日の現実となるのです。

【只南無妙法蓮華経とだにも唱へ奉らば】
ただ、南無妙法蓮華経と唱えるならば、

【滅せぬ罪や有るべき、来たらぬ福〔さいわい〕や有るべき。】
消滅しない罪業はなく、訪れない幸いもないのです。

【真実なり甚深なり、是を信受すべし。】
これが真実であって極めて深い法門なのです。これを信じ受け入れるべきなのです。


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