御書研鑚の集い 御書研鑽資料
聖愚問答抄(下) 37 第36章 釈を引き妙法五字の功徳を示す
【天台大師も法華経に付いて】
天台大師も法華経について、
【玄義〔げんぎ〕・文句〔もんぐ〕・止観〔しかん〕の三十巻の釈を造り給ふ。】
法華玄義、法華文句、摩訶止観の三十巻の注釈を造られています。
【妙楽大師は又釈籖〔しゃくせん〕・疏記〔しょき〕・輔行〔ぶぎょう〕の】
妙楽大師は、また法華玄義釈籤、法華文句記、止観輔行伝弘決の
【三十巻の末文を重ねて消釈す。天台六十巻とは是なり。】
三十巻の注釈を重ねて著しています。天台六十巻と言うのが、これです。
【玄義には、名体宗用教の五重玄を建立して】
法華玄義には、名体宗用教の五重玄を立てて、
【妙法蓮華経の五字の功能を判釈す。】
妙法蓮華経の五字の功能を解明しました。
【五重玄を釈する中の宗〔しゅう〕の釈に云はく】
釈名、弁体、明宗、論用、判教の五重玄を解釈する中の「明宗」の解釈のところで
【「綱維〔こうい〕を提〔あ〕ぐるに目として動かざること無く、】
「大綱を引けば、全ての網の目が動き、
【衣の一角を牽〔ひ〕くに縷〔る〕として来たらざること無きが如し」と。】
衣の一角を引けば、全ての糸が手繰〔たぐ〕られるようなものである」とあります。
【意は此の妙法蓮華経を信仰し奉る一行に、】
文章の意味は、この妙法蓮華経を信仰する一つの修行に、
【功徳として来たらざる事なく、善根として動かざる事なし。】
功徳として集まらないものはなく、いかなる善根も動かないものはないのです。
【譬へば網の目無量なれども、一つの大綱を引くに動かざる目もなく、】
譬えば、網の目は、無量であっても、一つの大綱を引けば、動かない目はなく、
【衣の糸筋巨多〔あまた〕なれども、一角を取るに糸筋として】
衣の糸は、多くあっても、一角を引けば、糸として手繰〔たぐ〕られて
【来たらざることなきが如しと云ふ義なり。】
来ないものはないようなものであると言うのです。
【さて文句には、如是我聞より作礼而去〔さらいにこ〕まで文々句々に】
さて法華文句には、序品の如是我聞から普賢品の作礼而去までの文々句々に、
【因縁・約教・本迹・観心の四種の釈を設けたり。次に止観には、】
因縁、約教、本迹、観心の四種の解釈を設けています。つぎに摩訶止観巻五上には、
【妙解の上に立つる所の観不思議境の一念三千、】
妙法の上に立った観不思議境の理の一念三千の法門を説いています。
【是〔これ〕本覚の立行本具の理心なり、】
これは、本覚の仏が立てた修行であり、本より心にそなわる理であるのです。
【今爰〔ここ〕に委〔くわ〕しくせず。】
しかし、今は、ここでは、詳しくは、論じません。
【悦ばしいかな、生を五濁悪世に受くるといへども、】
ほんとうに喜ばしいことです。生を五濁悪世に受けたとはいえ、
【一乗の真文を見聞する事を得たり。】
法華一乗の真実の経文を受持することが出来たのです。
【煕連恒沙〔きれんごうじゃ〕の善根を致せる者、】
過去に無量の善根を積んだ者こそ、
【此の経にあひ奉りて信を取ると見えたり。】
この経にあって信心を起こしたのです。
【汝今一念随喜の信を致す、】
あなたが今から初信〔しょしん〕の行者として、法華経を受持し、
【函蓋〔かんがい〕相応・感応〔かんのう〕】
箱に蓋〔ふた〕が合うように、あなたの信心と仏の慈悲が感応し
【道交疑ひ無し。】
仏道に交わることは、疑いありません。