日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 24 第23章 真の報恩・孝養を教える

【聖人云はく、】
これに聖人は、このように告げました。

【汝此の理を知りながら猶是の語をなす。】
あなたは、この法理を知りながら、まだ、そのようなことを言うのですか。

【理の通ぜざるか意の及ばざるか。】
道理が通じないのか、心が及ばないのか。

【我釈尊の遺法をまなび、仏法に肩を入れしより已来、】
私は、釈尊の残した法門を学び、仏法に身を投じた時から、これまで、

【知恩をもて最とし報恩をもて前とす。】
恩を知ることを最高とし、恩を報ずることを第一としてきました。

【世に四恩あり、】
世の中には、四恩があるのです。

【之を知るを人倫となづけ、知らざるを畜生とす。】
これを知る者を人倫と名づけ、知らない者を畜生と言うのです。

【予父母の後世を助け、国家の恩徳を報ぜんと思ふが故に、】
私は、父母の後生を助け、国家の恩や徳を報じようと思うゆえに、

【身命を捨つる事敢〔あ〕へて他事にあらず、】
身命を捨てるつもりであり、それは、他の理由ではなく、

【唯知恩を旨とする計りなり。】
ただ知恩を大切に思うからに他ならないのです。

【先づ汝目をふさぎ心を静めて道理を思へ。】
まず、あなたは、目を閉じ、心を静めて道理を知るべきです。

【我は善導を知りながら】
自分は、正しい道を知りながら、

【親と主との悪道にかゝらんを諫めざらんや。】
親と主君が悪道に堕ちるのを、なぜ諌めないで、いられるのでしょうか。

【又愚人の狂い酔ひて毒を服せんを我知りながら】
また、酒に酔って毒を飲もうとするのを知りながら、

【是をいましめざらんや。】
これを制止しないでいられましょうか。

【其の如く法門の道理を存じて火・血・刀の苦を知りながら、】
そのように、法門の道理を知り、火、血、刀の苦悩を知りながら、

【争〔いか〕でか恩を蒙る人の悪道にお〔堕〕ちん事を歎かざらんや。】
どうして恩を受けた人が、悪道に堕ちるのを嘆かないでいられましょうか。

【身をもなげ命をも捨つべし。】
身も投げ、命も捨てて諌めるべきでしょう。

【諫めてもあきたらず歎きても限りなし。】
どれほど、諌めてもあきたらず、いくら嘆いても限りはないのです。

【今生に眼を合はする苦しみ猶〔なお〕是を悲しむ。】
今世に眼に映る苦しみでさえ、なお悲しむのに、

【況んや悠々たる冥途の悲しみ豈〔あに〕痛まざらんや。】
まして永遠にわたる冥途の悲しみを嘆かないでいられましょうか。

【恐れても恐るべきは後世、慎みても慎むべきは来世なり。】
まことに恐れるべきは後世であり、まことに慎むべきは来世であるのです。

【而るを是非を論ぜず親の命に随ひ、】
そうであるのに、是非を説かないで、親の命令に随い、

【邪正を簡〔えら〕ばず主の仰せに順〔したが〕はんと云ふ事、】
邪正を簡ばないで、主君の仰せに従うと言うことは、

【愚癡の前には忠孝に似たれども、】
愚癡の者には、忠義や孝行のように思われても、

【賢人の意には不忠不孝是に過ぐべからず。】
賢人の心にすれば、これに過ぎる不忠、不孝はないのです。


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