御書研鑚の集い 御書研鑽資料
聖愚問答抄(下) 35 第34章 妙法五字の受持唱題の文証を示す
【爰に愚人云はく、】
そこで愚者は、このように告げました。
【首題の功徳、妙法の義趣今聞く所詳〔つまび〕らかなり。】
首題の功徳、妙法の趣旨は、今、教えてもらって理解できましたが、
【但し此の旨趣〔ししゅ〕正〔まさ〕しく経文に是をのせたりや如何。】
ただ、このことは、経文に乗っているのでしょうか。
【聖人云はく、】
その疑問に聖人は、このように告げました。
【其の理詳らかならん上は文を尋ぬるに及ばざるか。】
道理が明らかになったうえは、経文を尋ねる必要はないのです。
【然れども請〔こ〕ひに随って之を示さん。】
しかし、望みに従ってこれを示しましょう。
【法華経第八陀羅尼品〔だらにほん〕に云はく】
法華経巻八陀羅尼品第二十六で釈尊は、
【「汝等但能く法華の名〔みな〕を受持せん者を擁護〔おうご〕せんすら】
「あなたたちが、ただ法華経の名を受持する者を応援することでさえ、
【福量〔はか〕るべからず」と。】
その福は、はかり知れないのです」と説かれています。
【此の文の意は仏、鬼子母神・十羅刹女の】
この経文の意味は、鬼子母神、十羅刹女が
【法華経の行者を守らんと誓ひ給ふを讃〔ほむ〕るとして、】
法華経の行者を守護すると誓ったことを、仏は、ほめたたえ、
【汝等法華の首題を持つ人を守るべしと誓ふ、】
あなたたちは、法華経の首題を持つ人を守護しようと誓ったが、
【其の功徳は三世了達〔りょうだつ〕の仏の智慧も】
その功徳は、三世了達の仏の智慧をもってしても、
【尚及びがたしと説かれたり。仏智の及ばぬ事何かあるべき、】
なお、及び難いと説かれたのです。仏智の及ばないことなど何もないはずですが、
【なれども法華の題名受持の功徳ばかりは是を知らずと宣べたり。】
しかし、法華経の題目を受持する功徳ばかりは、計り知れないと述べられたのです。
【法華一部の功徳は只妙法等の五字の内に籠〔こも〕れり。】
法華経すべての功徳は、ただ妙法蓮華経の五字の中に含まれているのです。
【一部八巻文々ごとに、二十八品生起〔しょうき〕かはれども】
一部八巻の文言は、それぞれ二十八品の内容とともに変わっても、
【首題の五字は同等なり。】
首題の五字は同等なのです。
【譬へば日本の二字の中に六十余州島二つ入らぬ国やあるべき、】
譬えば、日本の二字の中に六十余州と壱岐と対馬の二島など、
【籠らぬ郡やあるべき。】
含まれないところはないのです。
【飛鳥とよべば空をかける者と知り、走獣といへば地をはしる者と心うる。】
飛鳥と言えば空を飛ぶものであり、走獣と言えば地を走るものなのです。
【一切名の大切なる事蓋〔けだ〕し以て是くの如し。】
名前が大切なことは、この通りであり、
【天台は名詮自性・句詮差別とも、】
天台大師は「名は本性を表し、句は差別を表す」とも
【名者大綱とも判ずる此の謂〔いわ〕れなり。】
「名は大綱である」とも述べたのは、この意味なのです。
【又名は物をめ〔召〕す徳あり、物は名に応ずる用〔ゆう〕あり。】
また、名前は、物を呼び寄せる徳があり、物は、名前に応ずる働きがあるのです。
【法華題名の功徳も亦以て此くの如し。】
法華経の題名の功徳も、また同じなのです。