日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 21 第20章 二十八粗の系譜の偽造をただす

【先に談ずる所の天竺に二十八祖有りて、】
さきほど、話したように、インドに二十八祖が居て、

【此の法門を口伝すと云ふ事、其の証拠何に出でたるや。】
この禅の法門を口伝したと言うことですが、その証拠は、何処にあるのでしょうか。

【仏法を相伝する人二十四人、或は二十三人と見えたり。】
仏法を相伝する人は、二十四人、または二十三人と経文にあります。

【然るを二十八祖と立つる事〔こと〕所出の翻訳何〔いずれ〕にかある、】
それを二十八祖とすることは、その根拠となる翻訳は、何処にあるのでしょうか、

【全く見えざるところなり。】
まったく、その根拠がわかりません。

【此の付法蔵の人の事、私に書くべきにあらず、】
この付法蔵の人のことは、自分勝手に書くべきことではないでしょう。

【如来の記文分明なり。】
仏が明らかに記されているところであり、

【其の付法蔵伝に云はく「復〔また〕比丘有り名を師子と曰ふ。】
その付法蔵経には「また比丘があり、名づけて師子という。

【罽賓国〔けいひんこく〕に於て大いに仏事を作す。】
罽賓国で大いに法を弘める。

【時に彼の国王をば弥羅掘〔みらくつ〕と名づけ、】
その時の国王を弥羅掘〔みらくつ〕と言って、

【邪見熾盛〔しじょう〕にして心に敬信無く、】
邪見が盛んで、敬信の心がなく、

【罽賓国に於て塔寺を毀壊〔きえ〕し衆僧を殺害す。】
罽賓国〔けいひん〕の塔寺を破壊し、衆僧を殺害する。

【即ち利剣を以て用ひて師子を斬る。頸の中血無く唯乳のみ流出す。】
そして利剣でもって師子を斬るが、頚の中に血はなく、ただ乳のみが流出する。

【法を相付する人是に於て便〔すなわ〕ち絶えん」と。】
法を相伝する人は、ここに絶えるであろう」とあるのです。

【此の文の意は仏我入涅槃の後に我が法を相伝する人二十四人あるべし。】
この文章の意味は、仏が涅槃に入った後に、仏法を相伝する人が二十四人いました。

【其の中に最後弘通の人に当たるをば師子比丘と云はん。】
その中で最後の弘通に当たる人を師子比丘と言います。

【罽賓国と云ふ国にて我が法を弘むべし。】
そして罽賓国〔けいひん〕と言う国で仏法を弘めますが、

【彼の国の王をば檀弥羅〔だんみら〕王と云ふべし。】
その国の王である檀弥羅王が、

【邪見放逸〔ほういつ〕にして仏法を信ぜず、衆僧を敬はず、堂塔を破り失ひ、】
邪見、傲慢で仏法を信ぜず、僧侶を敬わず、堂塔を破壊し、

【剣をもて諸僧の頸を切るべし。即ち師子比丘の頸をきらん時に、】
剣でもって多くの僧侶の首を斬るのです。その師子比丘の首を切ると、

【頸の中に血無く、只乳のみ出づべし。】
その首の中には、血はなく、ただ乳のみが出るのです。

【是の時に仏法を相伝せん人絶ゆべしと定められたり。】
この時に仏法を相伝する人は、絶えるのである」と定められたのです。

【案の如く仏の御言〔みことば〕違はず師子尊者頸をきられ給ふ事、】
この仏の予言の通りに、師子尊者の首が切られ、

【実に以て爾〔しか〕なり。王のかいな〔腕〕共につれて落ち畢〔おわ〕んぬ。】
実際に、その通りになり、その時に檀弥羅王の腕も落ちてしまったのです。

【二十八祖を立つる事、甚だ以て僻見〔びゃっけん〕なり。】
ですから、二十八祖を立てることは、非常に誤った考えなのです。

【禅の僻事〔ひがごと〕是より興るなるべし。】
つまり、禅宗の嘘、誤りは、これから始まったのです。

【今慧能〔えのう〕が壇経に二十八祖を立つる事は、達磨を高祖と定むる時、】
今、慧能が壇経に二十八祖を立てたことは、達磨を高祖と定める時、

【師子と達磨との年紀遥かなる間、三人の禅師を私に作り入れて、】
師子比丘と達磨との年代が、遠く離れているために、三人の禅師を勝手に入れて、

【天竺より来たれる付法蔵系〔けい〕乱れずと云ひて、】
インドから伝わる付法蔵の系譜は、乱れていないなどと言って、

【人に重んぜさせん為の僻事なり。】
人に禅宗を重んじさせる為の嘘、偽りであり、とんでもない作り事なのです。

【此の事異朝にして事旧〔ふ〕りぬ。】
この非難は、中国では、昔から言い古〔ふる〕されたことなのです。

【補註〔ふちゅう〕の十一に云はく「今家は二十三祖を承用す。】
補註の十一には「我が天台宗は、二十三祖を相承して、もちいている。

【豈〔あに〕誤り有らんや。】
これに誤りがあるわけがない。

【若し二十八祖を立つるは未だ所出の翻訳を見ざるなり。】
もし二十八祖を立てることについては、その根拠の翻訳は、いまだ見ていない。

【近来更に石に刻み版に鏤〔ちり〕ばめ、七仏二十八祖を図状し、】
近来、さらに石に刻み、版にほり、七仏二十八祖を図に顕わし、

【各一偈を以て伝授相付すること有り。】
各々に一偈ずつを添えて伝授、相伝しているなどと言っている。

【嗚呼〔ああ〕仮託〔けたく〕何ぞ其れ甚だしきや。】
ああ、偽りの、なんと甚〔はなは〕だしいことであろう。

【識者力有らば宜しく斯の幣を革〔あらた〕むべし」と。】
識者に力があれば、この間違いを改めさせるべきである」とあるのです。

【是も二十八祖を立て、石にきざみ版にちりばめて伝ふる事、甚だ以て誤れり。】
これも二十八祖を立て、石に刻み、版にほって伝えることは、大変な誤りであり、

【此の事を知る人あらば此の誤りをあらた〔改〕めなをせとなり。】
この事を知る人があるならば、この誤りを改めよと言う意味なのです。

【祖師禅甚〔はなは〕だ僻事なる事是〔ここ〕にあり。】
祖師禅が大変な偽りである事は、ここに理由があるのです。

【先に引く所の大梵天王問仏決疑経の文を教外別伝の証拠に】
前に引いた大梵天王問仏決疑経の文を教外別伝の証拠に、

【汝之を引く、既に自語相違せり。】
あなたは、引いたのですが、すでに自語相違しているのです。

【其の上此の経は説相権教なり、】
その上、この経は、説相が権教であるのです。

【又開元・貞元の両度の目録にも全く載せず、】
また開元釈教録、貞元釈教録の二つの目録にも載せられていない経文なのです。

【是録外の経なる上権教と見えたり。】
これは、録外の経である上に権教と思われるのです。

【然れば世間の学者用ゐざるところなり、証拠とするにたらず。】
それ故に世間の学者は、用いないのであり、証拠とすることは、できないのです。


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