日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 32 第31章 身軽法重の折伏行を勧む

【悲しいかな生者〔しょうじゃ〕必滅の習ひなれば、】
悲しいことに生命のあるものは、必ず死ぬ時が来るのは、世の習いですから、

【設〔たと〕ひ長寿を得たりとも終には無常をのがるべからず。】
たとえ長寿を得たとしても、最後には、無常を逃〔のが〕れることはできません。

【今世は百年の内外〔うちそと〕の程を思へば夢の中の夢なり。】
この世は、せいぜい百年前後の命であり、夢の中の夢のようなものなのです。

【悲想の八万歳未だ無常を免れず。】
非想天の八万歳の長寿でさえ、まだ無常をまぬがれられないのです。

【忉利〔とうり〕の一千年も猶退没〔たいもつ〕の風に破らる。】
忉利天の一千年も、やはり無常の風に吹きやぶられるのです。

【況んや人間閻浮〔えんぶ〕の習ひは露よりもあやうく、】
まして人間に生まれ、この世に生まれた定めとして、露よりも儚〔はかな〕く、

【芭焦〔ばしょう〕よりももろく、泡沫〔ほうまつ〕よりもあだなり。】
芭蕉よりも脆〔もろ〕く、泡沫よりも虚〔むな〕しい存在なのです。

【水中に宿る月のあるかな〔無〕きかの如く、】
水中に宿る月影のように非現実的な存在であり、

【草葉にを〔置〕く露のをく〔後〕れさきだつ〔先立〕身なり。】
葉の上の露が陽にあたって消え去るような身の上なのです。

【若し此の道理を得ば後世を一大事とせよ。】
もし、この道理を悟ったならば、後世を最大事とするべきです。

【歓喜仏の末の世の覚徳比丘正法を弘めしに、】
歓喜仏の末世に覚徳比丘が正法を弘めた時、

【無量の破戒の此の行者を怨〔あだ〕みて責めしかば、】
多くの破戒の人々が、この覚徳比丘を憎んで殺そうとしましたが、

【有徳国王正法を守る故に、謗法を責めて終に命終して】
その国の有徳王が正法を護る為に、これらの謗法の者と闘い、ついに命を落とし、

【阿閦〔あしゅく〕仏の国に生まれて彼の仏の第一の弟子となる。】
その後、阿閦仏の国に生まれ、この仏の第一の弟子となったのです。

【大乗を重んじて五百人の婆羅門〔ばらもん〕の謗法を誡めし】
また大乗を重んじて、五百人の婆羅門の謗法を誡〔いまし〕めて、

【仙予国王は不退の位に登る。】
仙予国王は、不退の位に登ったと言います。

【憑〔たのも〕しいかな、正法の僧を重んじて邪悪の侶を誡むる人、】
嬉しいことに、正法の僧侶を重んじて、邪悪の僧侶を諫〔いさ〕める人には、

【かくの如くの徳あり。】
このような功徳があるのです。

【されば今の世に摂受を行ぜん人は、謗人と倶に悪道に堕ちん事疑ひ無し。】
それゆえ、今の世で摂受を行ずる人は、悪道に堕ちることは、疑いないのです。

【南岳大師の四安楽行に云はく】
南岳大師の「法華経安楽行義」には

【「若し菩薩有りて悪人を将護し治罰すること能〔あた〕はず。乃至】
「もし菩薩がいて、悪人を擁護して罰しないならば、(中略)

【其の人命終して諸悪人と倶に地獄に堕せん」と。】
その人は、命が終わって多くの悪人と共に地獄に堕ちる」とあるのです。

【此の文の意は若し仏法を行ずる人有って、】
この文章の意味は、もし、仏法を行ずる者が、

【謗法の悪人を治罰せずして観念思惟を専〔もっぱ〕らにして】
謗法の者を非難せずに観念や思惟だけを、もっぱらにして、

【邪正権実をも簡〔えら〕ばず、詐〔いつわ〕って慈悲の姿を現ぜん人は】
邪正、権実を選ばずに、偽り親しむ者は、

【諸の悪人と倶に悪道に堕つべしと云ふ文なり。】
諸の悪人と一緒に悪道に堕ちると言うのです。

【今真言・念仏・禅・律の謗人をたゞさず、】
いま、真言、念仏、禅、律の謗法の人々の誤りを糾弾せず、

【いつ〔詐〕はて慈悲を現ずる人此の文の如くなるべし。】
偽りの慈悲の姿を現す人は、この文章の通りになるのです。


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