日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


聖愚問答抄(下) 31 第30章 折伏が仏の勅命であると示す

【愚人云はく、】
それに対して愚者は、このように告げました。

【日本六十余州人替はり法異なりといへども、】
日本の六十余州、それぞれの国によって、人は、変わり、法は、異なるといっても、

【或は念仏者或は真言師或は禅或は律、】
或いは、念仏者や真言師であったり、或いは、禅、或いは、律に、帰依しており、

【誠に一人として謗法ならざる人はなし。】
まことに一人として謗法でない者は、いないのです。

【然りと雖も人の上沙汰〔さた〕してなにかせん。】
しかし、他人のことを、あれこれ非難しても仕方がないでしょう。

【只我が心中に深く信受して、】
ただ、自分の心中に深く正法を信受して、

【人の誤りをば余所〔よそ〕の事にせんと思ふ。】
他人の誤りには、関わらないようにしようと思います。

【聖人示して云はく、】
それに聖人は、このように告げたのです。

【汝が言ふ所実にしかなり。】
あなたの言うことは、まことにもっともなことです。

【我も其の義を存ぜし処に、経文には或は不惜身命とも】
私も、そう思っていましたが、経文には、「身命を惜しまず」と、

【或は寧喪〔にょうそう〕身命〔しんみょう〕とも説く。】
あるいは「むしろ身命を失うとも」とも説かれています。

【何故にかやう〔加様〕には説かるゝやと存ずるに、】
なぜ、このように説かれているのかと言うと、

【只人をはゞからず経文のまゝに法理を弘通せば、】
他人を恐れず、経文のとおりに法理を弘通すれば、

【謗法の者多からん世には必ず三類の敵人有りて】
謗法の者の多い世には、かならず三類の敵人が現れて、

【命にも及ぶべしと見えたり。】
身命にも及ぶことになると説かれているのです。

【其の仏法の違目を見ながら我もせめず国主にも訴へずば、】
それらの仏法の間違いを見ながら、自ら責めず、また国主へも訴えないならば、

【教へに背きて仏弟子にはあらずと説かれたり。】
仏の教えに背くことであって、仏弟子ではないと説かれているのです。

【涅槃経第三に云はく「若し善比丘あって法を壊らん者を見て置いて】
涅槃経巻三には「もし善比丘がいて、仏法を壊る者を見て放置して、

【呵責〔かしゃく〕し駈遣〔くけん〕し挙処〔こしょ〕せずんば、】
叱責せず、追放せず、処断しなければ、

【当に知るべし是の人は仏法中の怨なり。若し能く駈遣し呵責し挙処せば、】
この人は、仏法の中の怨敵である。もし、よく追放し、叱責し、処断するならば、

【是我が弟子真の声聞なり」と。】
この人は、仏弟子であり、真の声聞である」と説かれているのです。

【此の文の意は仏の正法を弘めん者、】
この経文の意味は、正法を弘めようとする者は、

【経教の義を悪しく説かんを聞き見ながら我もせめず、】
経教の意義を間違って説く者をみながら、自ら、これを責めず、

【我が身及ばずば国主に申し上げても是を対治せずば、仏法の中の敵なり。】
自らの力が足りなければ、国主に申し出てでも対処しなければ、仏法の敵である。

【若し経文の如くに、人をもはゞからず、我もせ〔責〕め、】
もし経文の通りに他人を恐れず、自らも、これを責め、

【国主にも申さん人は、仏弟子にして真の僧なりと説かれて候。】
国主に訴える人は、これこそ仏弟子であり、まことの僧侶であると説かれています。

【されば仏法中怨の責めを免れんとて、】
それゆえ「仏法の中の怨敵」の罪をまぬがれようとして、

【かやうに諸人に悪〔にく〕まるれども命を釈尊と法華経に奉り、】
このように諸人に憎まれても、命を釈尊と法華経にたてまつり、

【慈悲を一切衆生に与へて謗法を責むるを】
慈悲を一切衆生に与えて、謗法を責めるのですが、

【心えぬ人は口をすくめ眼を瞋〔いか〕らす。】
この心を理解できない人は、罵〔ののし〕り眼を怒〔いか〕らせるのです。

【汝実に後世を恐れば身を軽しめ法を重んぜよ。】
あなたも、後世を恐れるのであれば、身命を軽んじ、法を重んじるべきです。

【是を以て章安大師云はく】
このことを章安大師は、

【「寧〔むし〕ろ身命を喪〔うしな〕ふとも教を匿〔かく〕さゞれとは、】
「むしろ身命を失うとも、教を隠さざれとは、

【身は軽く法は重し身を死〔ころ〕して法を弘めよ」と。】
身は軽く、法は重い。死ぬことがあっても法を弘めよ」と述べられているのです。

【此の文の意は身命をばほろ〔喪〕ぼすとも正法をかくさゞれ、】
この文章の意味は、身命を失っても、正法を滅ぼしてはならない、

【其の故は身はかろく法はおもし、】
そのわけは、衆生の身は軽く、弘むべき法は重いゆえに、

【身をばころすとも法をば弘めよとなり。】
身命を賭(と)して仏法を弘めよと言うことなのです。


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