日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


守護国家論 21 第20章 正法護持の功徳

【大文の第六に法華・涅槃に依る行者の用心を明かさば、】
第6段として、法華経、涅槃経の行者の用心すべき事を明確にします。

【一代教門の勝劣〔しょうれつ〕・浅深〔せんじん〕・難易〔なんい〕等に於ては】
釈尊一代の教法の優劣、浅深、難易などにおいては、

【先の段に既に之〔これ〕を出だす。】
すでに先の段に、これを説いた通りです。

【此の一段に於ては一向に後世を念〔おも〕ふ末代常没〔じょうもつ〕の】
この一段においては、ひたすら後世を思って、常に末法の苦海に沈む

【五逆・謗法・一闡提〔いっせんだい〕等の愚人〔ぐにん〕の為に】
五逆罪、謗法、一闡提などの愚人に対して、その注意すべき要点を

【之を注〔しる〕す。略して三有り。】
記〔しる〕します。それを略すと、三つの項目があります。

【一には在家の諸人正法を護持するを以て生死を離るべく、】
第1項では、在家の人々は、正法を護持する事によって生死を離れ、

【悪法を持つに依って三悪道〔さんなくどう〕に堕することを明かし、】
悪法を持〔たも〕つ事によって三悪道〔さんなくどう〕に堕ちることを明確にし、

【二には但法華経の名字〔みょうじ〕計〔ばか〕りを唱へて三悪道を】
第2項では、ただ法華経の題目ばかりを唱えて、三悪道を離れることを明確にし、

【離るべきことを明かし、三には涅槃経は法華経の為の流通と成ることを明かす。】
第3項では、涅槃経は、法華経の為の流通分であることを明確にします。

【第一に在家の諸人正法を護持するを以て生死を離るべく、】
第1項に、在家の人々が正法を護持する事によって生死を離れ、

【悪法を持つに依って三悪道に堕することを明かさば、】
悪法を持〔たも〕つ事によって、三悪道に堕ちることを明確にするならば、

【涅槃経第三に云はく】
涅槃経、第3巻の金剛品に

【「仏迦葉〔かしょう〕に告〔つ〕げたまはく、能〔よ〕く正法を護持する】
「仏は、迦葉〔かしょう〕に言われた。よく正法を護持する

【因縁〔いんねん〕を以ての故に是の金剛〔こんごう〕の身を】
因縁によって、この金剛の身を

【成就〔じょうじゅ〕することを得たり」と。亦云はく「時に国王有り、】
成就することを得たり」とあり、また、次に「ある時に国王がいた。

【名を有徳〔うとく〕と曰〔い〕ふ。乃至法を護らんが為の故に、乃至】
名を有徳〔うとく〕と言う。(中略)正法を護る為に(中略)

【是の破戒の諸の悪比丘と極めて共に戦闘す。乃至】
この諸々の破戒の悪い僧侶と激しく戦闘した。(中略)

【王是の時に於て法を聞くことを得已〔お〕はって心大いに歓喜し尋〔つ〕いで】
王は、この時に正法を聞くことができたので、心が大いに歓喜し、ついで

【即ち命終〔みょうじゅう〕して阿閦仏〔あしゅくぶつ〕の国に生ず」(已上)。】
命を終えた後、東方の阿閦仏〔あしゅくぶつ〕の国に生まれた」とあります。

【此の文の如くんば在家の諸人別の智行〔ちぎょう〕無しと雖も、】
この文章の通りであれば、在家の人々は、特別に智慧や修行をしなくても、

【謗法の者を対治する功徳に依って生死を離るべきなり。】
謗法の者を対治する功徳に依って、生死の苦海を離れる事ができるのです。

【問うて云はく、在家の諸人仏法を護持すべき様〔よう〕如何〔いかん〕。】
それでは、在家の人々が仏法を護持するには、どうすれば良いのでしょうか。

【答へて曰く、涅槃経に云はく「若し衆生有って】
それは、涅槃経の聖行品に「もし衆生がいて、

【財物〔ざいもつ〕に貪著〔とんじゃく〕せば、】
財産に執着するならば、

【我当〔まさ〕に財を施して然〔しか〕して後に】
我は、まさに財〔たから〕を施し、

【是の大涅槃経を以て之を勧めて読ましむべし。乃至】
そして後に、この大涅槃経を勧めて読ませるべきである。(中略)

【先に愛語を以て而も其の意に随ひ、然して後に漸〔ようや〕く当に】
まず、優しい言葉をもって、その意志に随って、それから後に徐々に

【是の大乗大涅槃経を以て之を勧めて読ましむべし。】
この大乗経典である大涅槃経を勧めて読ませるべきである。

【若し凡庶〔ぼんしょ〕の者には当に威勢を以て之に逼〔せま〕りて読ましむべし。】
もし、平凡な庶民には、威勢をもって強く迫って読ませるべきである。

【若し憍慢〔きょうまん〕の者には我当に其れが為に】
もし、驕〔おご〕り高ぶった者には、我は、その為に

【而も僕使〔ぼくし〕と作〔な〕り其の意に随順し其れをして歓喜せしむべし。】
下僕となって、その意志に随って、彼を歓喜させ、

【然して後に復〔また〕当に大涅槃を以て而も之を教導〔きょうどう〕すべし。】
それから後に、また、大涅槃経をもって教え導くべきである。

【若し大乗経を誹謗〔ひぼう〕する者有らば、当に勢力〔せいりき〕を以て】
もし、大乗経を謗〔そし〕る者がいるならば、勢力をもって

【之を摧〔くじ〕きて伏せしめ、既〔すで〕に摧伏〔さいふく〕し已〔お〕はって】
打ち砕いて、降伏させ、屈服させ、

【然して後に勧めて大涅槃を読ましむべし。】
それから後に勧めて大涅槃経を読ませるべきである。

【若し大乗経を愛楽〔あいぎょう〕する者有らば、】
もし、大乗経を信じ、求める者がいるならば、

【我躬〔みずか〕ら当に往〔ゆ〕いて恭敬〔くぎょう〕し供養し】
我は、自ら行って、敬い供養し

【尊重〔そんじゅう〕し讃歎〔さんだん〕すべし」(已上)。】
尊重し讃歎するべきである」とあります。

【問うて云はく、今の世の道俗】
それでは、今の世の出家、在家の人々は、

【偏〔ひとえ〕に選択集に執して、】
ひたすら選択集〔せんちゃくしゅう〕に執着して、

【法華・涅槃に於ては自身不相応の念を作すの間】
法華経、涅槃経は、自分に相応〔ふさわ〕しくないと思っているので、

【護惜〔ごしゃく〕建立〔こんりゅう〕の心無し。】
法華経、涅槃経を惜しみ護る意志もなく、建立する心もないのです。

【偶〔たまたま〕邪義の由〔よし〕を称する人有れば】
たまたま選択集〔せんちゃくしゅう〕は、邪義と言う人がいると、

【念仏誹謗者と称し、悪名を天下〔てんげ〕に雨〔ふ〕らす。】
念仏を誹謗する者と言って、悪者のように天下に言いふらすのです。

【斯等〔これら〕は如何。】
これは、どう言う事でしょうか。

【答へて曰く、自答を存すべきに非ず。】
それは、この事を自分で答えるべきではなく、

【仏自ら此の事を記して云はく、】
仏、自らが、この事を記〔しる〕しているのです。

【仁王〔にんのう〕経に云はく「大王我が滅度の後未来世の中の】
仁王経の嘱累品第八に「大王よ、我が入滅して後、未来世の中の

【四部の弟子・諸の小国の王・太子・王子、】
僧侶、尼僧、男性信者、女性信者の四部の弟子、諸々の小国の王、太子、王子など、

【乃〔すなわ〕ち是住持〔じゅうじ〕して】
仏教の組織の中において、

【三宝を護らん者転〔うたた〕更に三宝を滅破〔めっぱ〕せんこと】
仏法僧の三宝を護っているつもりの者が、返って三宝を破壊するのである。

【師子の身中の虫の自ら師子を食〔く〕らふが如くならん。外道に非ざるなり。】
師子身中の虫が師子を食うようなものであり、仏法を破滅するのは、外道ではなく

【多く我が仏法を破り、大罪過〔だいざいか〕を得ん、】
多くの仏弟子が我が仏法を破り、大きい罪過を作るのである。

【正教衰薄〔すいはく〕し、民〔たみ〕に正行無く、】
正法が衰え、希薄になり、民衆に正しい行いをする者がなく、

【漸〔ようやく〕く悪を為〔な〕すを以て其の寿〔いのち〕日に減じて】
次第に悪い行いをするようになるので、その寿命は、日毎に減じて

【百歳に至らん。人仏教を壊らば復〔また〕孝子無く、】
百歳になるであろう。人々は、仏法を破壊し、また親孝行の子もなく、

【六親〔ろくしん〕不和〔ふわ〕にして天神も祐〔たす〕けず。】
父母、兄弟、妻子の六親が不和となり、諸天善神も助けず、

【疾疫〔しつえき〕悪鬼〔あっき〕日に来たりて侵害し、】
疫病を起こす悪鬼が毎日来て侵〔おか〕し害〔がい〕し、

【災怪〔さいげ〕首尾〔しゅび〕し、連禍〔れんか〕縦横〔じゅうおう〕し、】
怪しい災いが打ち続き、絶え間なく災いが現れ、

【死して地獄・餓鬼・畜生に入らん」と。】
地獄、餓鬼、畜生の三悪道に堕ちるであろう」とあります。

【亦次下〔つぎしも〕に云はく「大王、未来世の中の】
また、その次に「大王よ、未来世の中の

【諸の小国の王・四部の弟子】
諸々の小国の王や僧侶、尼僧、男性信者、女性信者の四部の弟子が

【自ら此の罪を作るは破国の因縁なり。乃至】
自ら、この罪を犯すであろう。これは、国を破る因縁となる。(中略)

【諸の悪比丘多く名利〔みょうり〕を求め、国王太子王子の前に於て】
諸々の悪僧が多くの名声と利益を求め、国王や太子、王子の前において

【自ら破仏法の因縁、破国の因縁を説かん。】
自ら仏法を破る因縁、国を破る因縁を説くであろう。

【其の王別〔わきま〕へずして此の語を信聴〔しんちょう〕し乃至】
その王は、分別がなくて、悪僧の言葉を信じ、聞き入れ(中略)

【其の時に当たりて正法将〔まさ〕に滅せんとして久しからず」(已上)。】
その時に正法が滅びることは、久しからず」とあるのです。

【余選択集を見るに敢へて此の文の未来記に違〔たが〕はず。】
私が選択集〔せんちゃくしゅう〕を見ると、この経文と、まったく違わないのです。

【選択集は法華・真言等の正法を定めて雑行難行と云ひ、】
選択集〔せんちゃくしゅう〕は、法華経、真言などの正法を雑行、難行道と言って、

【末代の我等に於ては時機相応せず、之を行ずる者は】
末法の我らには、時期と理解力が相応しないから、これを修行する者は、

【千が中に一も無く、仏還って法華等を説きたまふと雖も】
千人の中に一人も往生しない。仏は、法華経などを説かれたが、

【法華・真言の諸行の門を閉ぢて】
法華、真言を修行の門を閉じて、

【念仏の一門を開く。末代に於て之を行ずる者は群賊等と定め、】
念仏の一門だけを開き、末法において、これを修行する者を群賊などと定め、

【当世の一切の道俗に於て此の書を信ぜしめ、】
現在の一切の出家、在家の人々に、この選択集〔せんちゃくしゅう〕を信じさせ、

【此の義を以て如来の金言と思へり。】
人々は、この教義をもって如来の金言と思っているのです。

【此の故に世間の道俗仏法建立の意無く、】
このため、一般世間の出家、在家の人々に正しい仏法を建立する意思などなく、

【法華真言の正法の法水忽〔たちま〕ちに竭〔つ〕き、】
法華、真言の正法の法水は、たちまちに枯れ果て、

【天人減少して三悪日に増長〔ぞうちょう〕す。】
天界、人界が減少して、地獄、餓鬼、畜生の三悪道が日毎に増長しているのです。

【偏〔ひとえ〕に選択集の悪法に催〔もよお〕されて】
これらは、ひとえに選択集〔せんちゃくしゅう〕の悪法にそそのかされて

【起こす所の邪見なり。】
起こってきた邪見のゆえなのです。

【此の経文に仏記して我滅度後と云へるは、】
この経文の中で仏が我が滅度の後と言っているのは、

【正法の末八十年、像法の末八百年、末法の末八千年なり。】
正法の末の八十年、像法の末の八百年、末法の末の八千年のことなのです。

【選択集の出でたる時は像法の末、末法の始めなれば】
選択集〔せんちゃくしゅう〕が世に出たのは、像法の末、末法の初めであり、

【八百年の内なり。仁王経に記す所の時節に当たれり。】
八百年の内であって、仁王経に記〔しる〕されている時節にあたっているのです。

【「諸小国王」とは日本国の王なり。】
「諸の小国王」の王とは、日本の王のことです。

【「中下品善」は】
仁王経の菩薩教化品にあるように十善戒の「中品、下品の善」の者は、

【粟散王〔ぞくさんおう〕是なり。】
粟〔あわ〕を散らしたような小国の王となるのです。

【「如師子身中虫」とは仏弟子の源空〔げんくう〕是なり。】
「師子身中の虫」とは、仏弟子たる法然房源空のことです。

【「諸悪比丘」とは所化の衆是なり。】
「諸の悪比丘」とは、法然房源空の弟子たちのことです。

【「説破仏法因縁破国因縁」とは上に挙ぐる所の選択集の語是なり。】
「破仏法の因縁、破国の因縁」とは、選択集〔せんちゃくしゅう〕の中の言葉です。

【「其王不別信聴此語」とは】
「その王、わきまえずして、この語を信聴す」とは

【今の世の道俗邪義を弁〔わきま〕へずして】
今の世の出家、在家の人々が邪義を弁〔わきま〕えずして

【猥〔みだ〕りに之〔これ〕を信ずるなり。】
妄〔みだ〕りに選択集〔せんちゃくしゅう〕を信ずることなのです。

【請〔こ〕ひ願はくは道俗法の邪正〔じゃしょう〕を分別して】
請い願うことは、出家、在家の人々が仏法の正邪を理解して、

【其の後正法に付いて後世を願へ。】
その後に、正法を信じ、後生を願ってください。

【今度人身を失ひ三悪道に堕して後に】
今度、人間としての身を失って、地獄、餓鬼、畜生の三悪道に堕ちて後に、

【後悔すとも何ぞ及ばん。】
後悔しても、何にもなりません。


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