日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


富木常忍御消息文 25 富木殿御書 (不可親近謗法者事)

【富木殿御書 建治三年八月二三日 五六歳】
富木殿御書 建治3年8月23日 56歳御作


【妙法蓮華経の第二に云はく「若し人信ぜずして此の経を毀謗〔きぼう〕し、】
妙法蓮華経の第二巻に「もし人が信じないで法華経を毀謗〔きぼう〕し、

【経を読誦し書持すること有らん者を見て、】
この経を読誦し書持する者を見て、

【軽賎憎嫉〔きょうせんぞうしつ〕して結恨〔けっこん〕を懐〔いだ〕かん。】
軽〔かろ〕んじ、賎〔いや〕しめ、憎み、嫉〔そね〕んで恨みを懐くならば、

【其の人命終〔みょうじゅう〕して阿鼻獄に入らん。】
その人は、命が終わって阿鼻地獄〔あびじごく〕に入るであろう。

【乃至是くの如く展転して無数劫〔むしゅこう〕に至らん」と。】
中略、そのように阿鼻地獄に生まれる事を繰り返して無数劫に至る」とあり、

【第七に云はく「千劫〔せんごう〕阿鼻地獄に於てす」と。】
第七巻には「千劫の間、阿鼻地獄において大苦悩を受ける」とあり、

【第三に云はく「三千塵点〔じんでん〕」と。】
第三巻には「三千塵点劫〔じんでんごう〕の間、成仏せず」とあり、

【第六に云はく「五百塵点劫」等云云。】
第六巻には「五百塵点劫〔じんでんごう〕の間、六道に堕した」などとあるのです。

【涅槃経に云はく「悪象の為に殺されては三悪〔さんなく〕に至らず、】
涅槃経には「悪象の為に殺された時は、三悪道に堕ちず。

【悪友の為に殺されては必ず三悪に至る」等云云。】
悪友の為に殺された時は、必ず三悪道に堕ちる」などとあるのです。

【堅慧〔けんね〕菩薩の宝性〔ほうしょう〕論に云はく】
堅慧〔けんね〕菩薩の宝性〔ほうしょう〕論には、

【「愚にして正法を信ぜず、邪見及び憍慢〔きょうまん〕なるは】
「愚かであり、正法を信ぜず、邪見および憍慢〔きょうまん〕であるのは、

【過去の謗法の障〔さわ〕りなり。不了義に執着し、】
過去の謗法の罪障である。不了義経に執着して、

【供養恭敬〔くぎょう〕に著〔じゃく〕し、唯邪法を見て】
供養恭敬〔くぎょう〕の多さにこだわり、ただ邪法にだけ眼を向け

【善知識に遠離〔おんり〕し、謗法の者に親近〔しんごん〕し、】
善知識から遠ざかり、謗法の者に親しみ近づいて、

【小乗の法に楽著〔ぎょうじゃく〕す。】
小乗の法に喜んで執着する。

【是くの如き等の衆生大乗を信ぜず、故に諸仏の法を謗ず。】
このような衆生は、大乗を信ぜず、ゆえに諸仏の法を誹謗するのである。

【智者は応〔まさ〕に怨家〔おんけ〕・蛇火毒〔じゃかどく〕・】
智者は、怨〔うら〕みをなす敵人や、蛇の火のような毒、

【因陀羅〔いんだら〕・霹靂〔へきれき〕・刀杖〔とうじょう〕・】
雷の神、落雷、刀杖、

【諸の悪獣・虎・狼・師子等を畏〔おそ〕るべからず。】
諸の悪獣、虎、狼、師子などを怖れるべきではない。

【彼は但能く命を断じて人をして畏るべき】
それらは、ただ命を断つのみで、

【阿鼻獄に入らしむること能〔あた〕はず。】
人を恐るべき阿鼻地獄に入れる事は、出来ない。

【応に畏るべきは深法を謗ずると及び謗法の知識なり。】
恐るべきは、深遠な妙法を謗〔そし〕る事と謗法をすすめる悪知識である。

【決定〔けつじょう〕して人をして畏るべき阿鼻獄に入らしむ。】
それらは、必ず、人を恐るべき阿鼻地獄に入れるのである。

【悪知識に近づきて悪心にして仏の血を出だし、】
仏道修行を妨げる者に近づき、悪心をいだいて、仏の身より出血させ、

【及び父母を殺害し、諸の聖人の命を断じ、和合僧を破壊し、】
父母を殺害し、諸の聖人の命を断ち、和合僧を破壊し、

【及び諸の善根を断ずと雖も、】
諸の善根を断つとしても、

【念を正法に繋〔か〕くるを以て能く彼の処を解脱〔げだつ〕せん。】
一念を正法につなぐ事によって、よく阿鼻地獄をまぬがれ、悟りを得る事が出来る。

【若し復〔また〕余人有って甚深の法を誹謗せば、】
またもし、他の人がいて、甚深の法を誹謗するならば、

【彼の人無量劫にも解脱を得べからず。】
その人は、量り知れないほどの長遠の時を経ても、悟りを得る事は、出来ない。

【若し人、衆生をして是くの如き法を覚信せしめば、】
もし、人が衆生に、そのような法を覚知させ、信じさせるならば、

【彼は是〔これ〕我が父母、亦〔また〕是〔これ〕善知識、】
彼は、この衆生の父母であり、また善知識である。

【彼の人は是〔これ〕智者なり。】
その人は、智者であり、

【如来の滅後に邪見顚倒〔てんどう〕を廻〔めぐ〕らして】
如来の滅後に邪見、顚倒〔てんどう〕を正して

【正道に入らしむるを以ての故に、三宝清浄〔しょうじょう〕の信、】
正道に入れるが故に、仏、法、僧の三宝に対して清浄な信仰を持ち、

【菩提〔ぼだい〕功徳の業〔ごう〕なり」等云云。】
悟りを得させる功徳の業因である」などとあります。

【竜樹菩薩の菩提資糧〔しりょう〕論に云はく「五無間の業を説きたまふ。】
竜樹菩薩の菩提資糧〔しりょう〕論には「五逆罪による無間地獄の業を説かれて、

【乃至若し未解〔みげ〕の深法に於て執著を起こせば〇】
もし、未だ理解していない深遠な法に対して、他の法に執着して誹謗すれば、〇

【彼の前の五無間等の罪を聚〔あつ〕めて】
前の五逆罪による無間地獄などの罪を集めても、

【之に比するに百分にしても及ばず」云云。】
この謗法の罪に比べると、百分の一にも及ばない」とあります。

【夫〔それ〕賢人は安きに居て危ふきを欲〔おも〕ひ、】
賢い人は、安全な所に居ても危険に備え、

【佞人〔ねいじん〕は危ふきに居て安きを欲〔おも〕ふ。】
口先だけの人は、危険な状態にあっても、安穏を願うのです。

【大火は小水を畏怖〔いふ〕し、大樹は小鳥に値って枝を折らる。】
大火は、少しの水をも畏〔おそ〕れ、大樹は、小鳥によって、枝を折られるのです。

【智人は恐怖〔くふ〕すべし、大乗を謗ずる故に。】
智人は、大乗を誹謗する事を恐れるのです。

【天親〔てんじん〕菩薩は舌を切らんと云ひ、】
そこで天親菩薩は、舌を切ろうと言い、

【馬鳴〔めみょう〕菩薩は頭を刎〔は〕ねんと願ひ、】
馬鳴菩薩は、頭を刎〔は〕ねよと願い、

【吉蔵〔きちぞう〕大師は身を肉橋〔にくきょう〕と為し、】
吉蔵大師は、身を橋となし、

【玄奘〔げんじょう〕三蔵は此を霊地に占ひ、】
玄奘三蔵は、何が正法かをインドの霊地において占い、

【不空三藏は疑ひを天竺に決し、】
不空三蔵は、その疑いをインドに行って解決し、

【伝教大師は此を異域に求む。】
伝教大師は、これを求めて中国に行きました。

【皆〔みな〕上に挙ぐる所は経論を守護する故か。】
みな以上にあげた事は、経論を守護する為であったのです。

【今日本国の八宗並びに】
いま日本の倶舎、成実、律、法相、三論、華厳、天台、真言の八宗と

【浄土・禅宗等の四衆、】
浄土宗、禅宗などの出家在家の男女は、

【上は主上〔しゅじょう〕・上皇より、下は臣下・万民に至るまで、】
上は、天皇、上皇から、下は、臣下、万民にいたるまで、

【皆一人も無く弘法・慈覚・智証の三大師の末孫の檀越〔だんのつ〕なり。】
一人も漏れなく弘法、慈覚、智証の三大師の末えいであり、檀家なのです。

【円仁〔えんにん〕慈覚大師云はく「故に彼と異なり」と。】
慈覚大師円仁は「法華経は、如来の秘密の教えを説き尽くしてはいない」と言い、

【円珍智証大師云はく「華厳・法華を大日経に望むれば】
智証大師円珍は「華厳経や法華経を大日経に対すれば、

【戯論〔けろん〕と為作〔な〕す」と。】
それらは、無意味な経論である」と言っており、

【空海弘法大師云はく「後に望むれば戯論と作〔な〕す」等云云。】
弘法大師空海は「後の真言に対すれば、無意味な経論である」などと言っています。

【此の三大師の意は法華経は】
この三大師の意は、法華経は、

【已〔い〕今〔こん〕当〔とう〕の諸経の中の第一なり。】
已説、今説、当説の諸経の中で第一であるけれども、

【然りと雖も大日経に相対すれば戯論の法なり等云云。】
大日経に相対すれば、無益な経論であると言う事なのです。

【此の義、心有らん人信を取るべきや不〔いな〕や。】
この義を心ある人は、信ずべきでしょう。

【今日本国の諸人、悪象・悪馬・悪牛・悪狗〔く〕・】
いま、日本の諸人が、悪い象、悪い馬、悪い牛、悪い犬、

【毒蛇・悪刺〔せき〕・懸岸〔けんがん〕・険崖〔けんがい〕・暴水・悪人・】
毒蛇、悪虫、断崖、絶壁、暴雨、悪人、

【悪国・悪城・悪舍・悪妻・悪子・悪所従等よりも】
悪い国、悪い城、悪い家、悪い妻、悪い子、悪い家来など、

【此等に超過し、恐怖すべきこと百千万億倍なるは持戒邪見の高僧等なり。】
これらに比べ百千万億倍、恐るべきものは、戒を持つ邪見の高僧なのです。

【問うて云はく、上に挙ぐる所の三大師を謗法と疑ふか。】
それでは、上に挙げた三大師の義を謗法〔ほうぼう〕と疑うのですか。

【叡山第二円澄〔えんちょう〕寂光〔じゃっこう〕大師・】
比叡山第二代座主の寂光〔じゃっこう〕大師円澄〔えんちょう〕、

【別当光定〔べっとうこうじょう〕大師・安慧〔あんね〕大楽大師・】
別当〔べっとう〕の光定〔こうじょう〕大師、安慧〔あんね〕大楽大師、

【慧亮〔えりょう〕和尚・安然〔あんねん〕和上・】
慧亮〔えりょう〕和尚、安然〔あんねん〕和上、

【浄観僧都〔じょうかんそうず〕・檀那〔だんな〕僧上・】
浄観〔じょうかん〕僧都、檀那〔だんな〕僧正、

【慧心〔えしん〕先徳、此等の数百人、】
慧心先徳〔えしんせんとく〕などの数百人、

【弘法の御弟子実慧〔じつえ〕・真済〔しんぜい〕・真雅〔しんが〕等の数百人、】
弘法の弟子の実慧〔じつえ〕や真済〔しんぜい〕、真雅〔しんが〕などの数百人、

【並びに八宗・十宗等の大師先徳、】
ならびに、八宗、十宗などの大師や先徳は、

【日と日と、月と月と、星と星と並び出でたるが如く】
日と日と、月と月と、星と星とが並んだような方々です。

【既に四百余年を経歴〔きょうりゃく〕す。】
すでに、400余年を経過しているのに、

【此等の人々、一人として此の義を疑はず。】
これらの人々は、一人として、この義を疑っていません。

【汝何〔いか〕なる智を以て之を難ずるや云云。】
あなたは、どのような智慧をもって、これを非難するのでしょうか。

【此等の意を以て之を案ずるに、】
これらの意味から、これを考えると、

【我が門家は夜は眠りを断ち昼は暇〔いとま〕を止めて之を案ぜよ。】
我が一門は、夜は、眠りを断ち、昼は、間断なく、この事を思案してください。

【一生空しく過ごして万歳悔〔く〕ゆること勿〔なか〕れ。】
一生、むなしく過ごして悔いる事が、あってはなりません。

【恐々謹言。】
恐れながら謹んで申し上げます。

【八月廿三日   日蓮花押】
8月23日   日蓮花押

【富木殿】
富木殿へ

【鵞目一結〔ゆ〕給〔た〕び候ひ了〔おわ〕んぬ。】
銭を一結〔ひとゆい〕受け取りました。

【志有らん諸人は一処に聚集〔じゅじゅう〕して御聴聞有るべきか。】
志のある人々は、一箇所に集まって、御聞きください。


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