御書研鑚の集い 御書研鑽資料
四条金吾御消息文 02 四条金吾女房御書
【四条金吾女房御書 文永八年五月 五〇歳】四条金吾女房御書 文永8年5月 50歳御作
【懐胎〔かいたい〕のよし承り候ひ畢〔おわ〕んぬ。それについては】
御懐妊されたとのこと、それについて
【符〔ふ〕の事仰せ候。】
御秘符をと仰せになっていると聞きましたが、確かに承〔うけたまわ〕りました。
【日蓮相承の中より撰〔えら〕み出だして候。】
これは、日蓮が相承した中より、選び出したものであり、
【能〔よ〕く能く信心あるべく候。】
よくよく信じて頂きたく思います。
【たと〔例〕へば秘薬なりとも、毒を入れぬれば薬の用すくなし。】
たとえ秘薬であっても、毒を入れれば、薬とはならず、
【つるぎ〔剣〕なれども、わるびれ〔臆病〕たる人のためには何かせん。】
良い刀であっても、臆病な者には、なんの役にもたちません。
【就中〔なかんずく〕、夫婦共に法華の持者なり。】
しかし、あなた方は、夫婦ともに法華経の信者ですので、
【法華経流布あるべきたね〔種〕をつぐ所の玉の子出で生まれん。】
必ずや法華経流布を継承する、玉のような子供が生まれることでしょう。
【目出度〔めでた〕く覚え候ぞ。色心二法をつぐ人なり。】
実にめでたく存じます。この子は、あなた方夫婦の色心の二法を継ぐ人です。
【争〔いか〕でかをそ〔遅〕なはり候べき。】
御手紙では、なぜか成長が遅く、
【とくとく〔疾疾〕こそう〔生〕まれ候はむずれ。】
もっと早く楽に生まれないものかと思われているとのことですが、
【此の薬をのませ給はゞ疑ひなかるべきなり。】
この良薬である御秘符があれば、安産は、疑いありません。
【闇〔やみ〕なれども灯〔ひ〕入りぬれば明らかなり。】
闇であっても灯火〔ともしび〕が入れば、明らかになり、
【濁水にも】
濁った水でも、それが蒸発して、
【月入りぬればすめり。】
月が映っている水晶玉に付けば、その水滴は、澄んでいるのです。
【明らかなる事日月にすぎんや。】
この御秘符の衆生への利益が明らかな事は、日月を超え、
【浄き事蓮華にまさるべきや。】
浄き事は、蓮華に優っているのです。
【法華経は日月と蓮華となり。故に妙法蓮華経と名づく。】
法華経は、日月と蓮華であり、故に妙法蓮華経と名前がついているのです。
【日蓮又日月と蓮華との如くなり。】
日蓮も、また日月と蓮華と言うことなのです。
【信心の水すまば、利生の月必ず応〔おう〕を垂〔た〕れ守護し給ふべし。】
信心の水が澄めば、衆生への利益の月が必ず現れて守護され、
【とくとく〔疾疾〕うまれ候べし。】
より早く楽に生まれることでしょう。
【法華経に云はく「如是妙法」と。】
このことを法華経には「如是妙法」と説かれています。
【又云はく「安楽産福子〔あんらくさんふくし〕」云云。】
また「安楽産福子」とも説かれています。
【口伝〔くでん〕相承の事は此の弁公にくはしく申しふくめて候。】
この口伝相承の事は、そちらに派遣した日弁に詳しく教えております。
【則ち如来の使ひなるべし。】
ですから、この日弁は、仏の使いであり、
【返す返すも信心候べし。】
何度も言うように、それを信じることが大事なのです。
【天照太神は玉をそさのを〔素盞雄〕のみこと〔尊〕にさづけて、】
天照太神は、玉をスサノオの命〔みこと〕に授けて、
【玉の如くの子〔みこ〕をまふけたり。然る間、日の神、我が子となづけたり。】
玉のような子供を設け、吾〔われ〕が勝つこと日の昇るが如く速しと名付けました。
【さてこそ正哉吾勝〔まさやあかつ〕とは】
つまり、正哉吾勝〔まさやあかつ〕勝速日天〔かちはやひあめの〕
【名づけたれ。】
忍穗耳〔おしほみみの〕尊〔みこと〕と名付けられたのです。
【日蓮うまるべき種をさづけて候へば、】
日蓮が、この御秘符によって、生まれるべき子供に仏種を授ければ、
【争〔いか〕でか我が子にをとるべき。】
どうして法華経の行者である日蓮の子供に劣る事があるでしょうか。
【「有〔う〕一宝珠〔ほうじゅ〕価直〔けじき〕三千」等。】
法華経の提婆達多品に「有一宝珠価直〔うほうじゅけじき〕三千」と説かれ、
【「無上〔むじょう〕宝聚〔ほうじゅ〕不求自得〔ふぐじとく〕」】
また、法華経信解品に「無上宝聚不求自得〔ふぐじとく〕」と説かれ、
【「釈迦如来皆是吾子〔かいぜごし〕」等云云。】
法華経譬喩品には「釈迦如来皆是吾子〔かいぜごし〕」などと説かれています。
【日蓮あに此の義にかはるべきや。幸なり幸なり。】
日蓮は、この義に代わるものでしょうか。実に幸運なことです。
【めでたしめでたし。又々申すべく候。あなかしこあなかしこ。】
めでたし、めでたし。また、お話しましょう。恐れ多く存じます。
【文永八年五月 日 日蓮花押】
文永8年5月 日 日蓮花押
【四条金吾殿女房御返事】
四条金吾殿女房御返事