日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


四条金吾御消息文 05 同生同名御書

【同生同名御書 文永九年四月 五一歳】
同生同名御書 文永9年4月 51歳御作


【大闇〔おおやみ〕をば日輪やぶる。女人の心は大闇のごとし、】
太陽の光は、暗闇を明るくしますが、女性の心は、その暗闇のようなものなのです。

【法華経は日輪のごとし。】
法華経は、その暗闇を明るくする太陽のようなものなのです。

【幼子〔おさなご〕は母をしらず、母は幼子をわすれず。】
幼子は、母親を知らなくても、母親は、幼子を片時も忘れる事はありません。

【釈迦仏は母のごとし、】
釈迦牟尼仏は、たとえてみれば、幼子を忘れない母親のようなものであり、

【女人は幼子のごとし。】
女性の心は、幼子のようなものなのです。

【二人たがひに思へばすべてはなれず。】
母子が御互いに思いあえば、決して離れる事はありませんが、

【一人は思へども、一人思はざればあるとき〔或時〕はあひ、】
一方だけが思っていても、片方が相手を思わなければ、ある時は会っても、

【あるとき〔或時〕はあわず。仏はをも〔思〕ふものゝごとし、】
ある時は、会わない事もあります。仏は、常に相手の事を思っていますが、

【女人はをも〔思〕はざるものゝごとし。我等仏をおもはゞ】
女性は、少しも相手の事を思わない者なのです。私達が一心に仏を思うならば、

【いかでか釈迦仏見え給はざるべき。】
どうして仏が私達の前に現れない事があるでしょうか。

【石を珠といへども珠とならず、】
石をいくら宝石だと言っても宝石には、なりません。

【珠を石といへども石とならず。】
反対に宝石を石だと言っても、宝石が石になる事はないのです。

【権経の当世の念仏等は石のごとし。】
それと同じで権経を根本とする今の念仏の教えなどは、石のようなものなのです。

【念仏は法華経ぞと申すとも法華経等にあらず。】
いかに念仏の教えを法華経であると言っても、それは、法華経ではないのです。

【又法華経をそしるとも、】
また、法華経をいくら謗〔そし〕っても、

【珠の石とならざるがごとし。】
宝石が石にならないように、法華経の偉大さは、少しも変わる事がないのです。

【昔、唐国〔もろこし〕に徽宗〔きそう〕皇帝と申せし悪王あり。】
昔、中国の宋の時代に徽宗〔きそう〕皇帝という悪王がいました。

【道士と申すものにすか〔欺〕されて、仏像経巻をうしなひ、】
この王は、道士と言う者にそそのかされて、仏像を破壊し、経巻を焼き捨て、

【僧尼〔そうに〕を皆還俗〔げんぞく〕せしめしに、】
僧や尼を還俗させたのですが、

【一人として還俗せざるものなかりき。】
一人として、これに反対して、還俗しない者は居なかったのです。

【其の中に法道三蔵と申せし人こそ、】
そのなかで法道三蔵と言う人は、

【勅宣をおそれずして面〔かお〕にかな〔火〕やき〔印〕をやかれて、】
ひとり勅命を恐れずに、その誤りを批判したので、顔に火印を押されて、

【江南〔こうなん〕と申せし処へ流されて候ひしが、】
江南〔こうなん〕の地へ流されたのです。

【今の世の禅宗と申す道士の法門のようなる悪法を御信用ある世に生まれて、】
この道士の法門に似た現在の禅宗を、幕府が信用している世に生まれて、

【日蓮が大難に値ふことは法道に似たり。】
日蓮が大難にあうことは、法道三蔵の身の上とよく似ているのです。

【おのおのわずかの御身と生まれて、】
あなた方は、低い身分に生まれて、

【鎌倉にゐながら人目をもはゞからず、命をもおしまず、】
幕府の膝元の鎌倉にいながら、人目をもはばからず、命も惜しまずに、

【法華経を御信用ある事、たゞ事ともおぼえず。】
法華経を信仰している事は、ただごととは、思われません。

【但おしはかるに、濁〔にご〕れる水に玉を入れぬれば水のす〔清〕むがごとし。】
ただ推測するに、濁った水に玉石を入れれば、その水が澄むように、

【しらざる事をよき人におしえられて、其のまゝに信用せば】
自分が知らない道理を智者から教わって、そのまま信用して行うならば、

【道理にきこゆるがごとし。】
それが道理として現実に成るようなものなのです。

【釈迦仏・普賢〔ふげん〕菩薩・薬王菩薩・宿王華〔しゅくおうけ〕菩薩等の】
釈迦牟尼仏をはじめ、普賢菩薩、薬王菩薩、宿王華〔しゅくおうけ〕菩薩などが、

【各々の御心中に入り給〔たま〕へるか。】
あなた方の心の中に入って居られるのであろうか。

【法華経の文に閻浮提〔えんぶだい〕に此の経を信ぜん人は】
法華経普賢菩薩勧発品の文に「この世界で法華経を信じることができる人は

【普賢菩薩の御力なりと申す是なるべし。】
普賢菩薩のお力によるのである」と説かれているのは、この事なのです。

【女人はたとへば藤のごとし、をとこは松のごとし。】
女性は、譬えて言えば藤のようなものであり、男は、松のようなものなのです。

【須臾〔しゅゆ〕もはな〔離〕れぬれば立ちあがる事なし。】
藤は、少しの間であっても、松を離れてしまえば、立ちあがる事は、できません。

【然るにはかばかしき下人もなきに、】
身近に頼れる人も居ないのに、

【かゝる乱れたる世に此のとの〔殿〕をつかはされたる心ざし、】
このような乱れた世の中で、この殿を佐渡の地まで送られた、あなたの志は、

【大地よりもあつし、地神定んでしりぬらん。】
大地よりも厚く、必ずや地神も知っている事でしょう。

【虚空よりもたかし、梵天帝釈もしらせ給ひぬらん。】
また、その真心は、天よりも高く、きっと梵天、帝釈も知られている事でしょう。

【人の身には同生同名と申す二〔ふたり〕のつか〔使〕ひを、】
人の身には、同生同名と言う二人の使いを、

【天生まるゝ時よりつけさせ給ひて、】
天は、生まれた時から、つけられており、

【影の身にしたがふがごとく須臾〔しゅゆ〕もはなれず、】
この二人は、影が身に随うように一瞬たりとも離れずに、

【大罪・小罪・大功徳・小功徳すこしもおとさず、】
その人の大罪、小罪、大功徳、小功徳を少しも残らず、

【遥々〔はるばる〕天にのぼ〔上〕て申し候と仏説き給ふ。】
代わる代わる天に昇って報告していると、仏は、説かれています。

【此の事は、はや天もしろしめしぬらん。】
したがって、あなたが殿を佐渡に送られた事は、すでに天も知っているでしょう。

【たのもし、たのもし。】
それを思えば、実に頼もしいことです。

【日蓮花押】
日蓮花押

【此の御文は藤四郎殿の女房と、常によりあひて御覧あるべく候。】
この手紙は、藤四郎殿の夫人と常に寄り合って御覧ください。


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