日蓮正宗法華講開信寺支部より

御書研鑚の集い 御書研鑽資料


四条金吾御消息文 08 主君耳入此法門免与同罪事

【主君耳入此法門免与同罪事 文永一一年九月二六日 五三歳】
主君耳入此法門免与同罪事 文永11年9月26日 53歳御作


【銭二貫文給〔た〕び了んぬ。有情の第一の財は命にはすぎず。】
銭二貫文を頂きました。有情の第一の財は、命に過ぎるものはありません。

【此を奪ふ者は必ず三途〔さんず〕に堕〔お〕つ。】
これを奪う者は、必ず三悪道に堕ちるのです。

【然れば輪王は十善の始めには不殺生〔ふせっしょう〕、】
それゆえ、転輪聖王は、十善戒の始めには、不殺生戒を守り、

【仏の小乗経の始めには五戒、其の始めには不殺生、】
仏は、小乗経の始めには、五戒を説き、その始めには、不殺生戒を説いています。

【大乗梵網〔ぼんもう〕経の十重禁の始めには不殺生、】
大乗の梵網〔ぼんもう〕経の十重禁戒の始めにも、不殺生戒を説いています。

【法華経の寿量品は釈迦如来の不殺生戒の功徳に当たって候品ぞかし。】
法華経の寿量品は、釈迦如来の不殺生戒の功徳に相当する品なのです。

【されば殺生をなす者は三世の諸仏にすてられ、】
それゆえに殺生をする者は、三世の諸仏に見捨てられ、

【六欲天〔ろくよくてん〕も是を守る事なし。】
六欲天も、この人を守ることはありません。

【此の由は世間の学者も知れり。日蓮もあらあら意得〔こころえ〕て候。】
このことは、世間の学者も知るところであり、日蓮も心得ています。

【但し殺生に子細あり。】
ただし、この殺生にも、いろいろな違いがあるのです。

【彼の殺さるゝ者の失〔とが〕に軽重あり。】
つまりは、殺される者にも、その原因に軽重があるのです。

【我が父母・主君・我が師匠を殺せる者をかへりて害せば、】
自分の父母、主君、師匠を殺した者を逆に殺害すれば、

【同じつみ〔罪〕なれども重罪かへりて軽罪となるべし。】
同じ殺生の罪ではあっても、重罪は、返って軽罪となるでしょう。

【此世間の学者知れる処なり。】
このことは、世間の学者も知っているところです。

【但し法華経の御かたきをば大慈大悲の菩薩も供養すれば、】
しかし、法華経の敵を供養すれば、たとえ大慈大悲の菩薩であっても、

【必ず無間地獄に堕〔お〕つ。】
必ず無間地獄に堕ちるのです。

【五逆の罪人も彼を怨〔あだ〕とすれば必ず人天に生を受く。】
五逆罪の罪人であっても、法華経の敵を憎めば、必ず人天に生を受けるのです。

【仙予〔せんよ〕国王〔こくおう〕・有徳〔うとく〕国王は】
仙予〔せんよ〕王や有徳〔うとく〕王は、

【五百・無量の法華経のかたき〔敵〕を打ちて今は釈迦仏となり給ふ。】
五百ないし無量の法華経の敵を討って、現在の釈迦牟尼仏となられたのです。

【其の御弟子迦葉〔かしょう〕・阿難〔あなん〕・舎利弗〔しゃりほつ〕・】
その弟子、迦葉、阿難、舎利弗、

【目連〔もくれん〕等の無量の眷属〔けんぞく〕は、】
目連などの無量の弟子達は、

【彼の時に先を懸〔か〕け陣をやぶり、或は殺し、或は害し、】
その時に先駆けとなり、敵陣を破り、あるいは殺し、あるいは害し、

【或は随喜〔ずいき〕せし人々なり。】
あるいは、この正法を護る戦に随喜した人々なのです。

【覚徳比丘〔かくとくびく〕は迦葉仏なり。】
その時の覚徳比丘〔かくとくびく〕が迦葉仏なのです。

【彼の時に此の王々を勧〔すす〕めて法華経のかたきをば、】
その時に、この有徳王に法華経の敵を滅ぼすように勧めて、

【父母の宿世の叛逆の者の如くせし大慈大悲の法華経の行者なり。】
父母の宿世の叛逆者のように討ち滅ぼさせた大慈大悲の法華経の行者なのです。

【今の世は彼の世に当たれり、】
今の世は、仙予〔せんよ〕王や有徳〔うとく〕王の世に相当するのです。

【国主日蓮が申す事を用ふるならば】
国主が日蓮の言うことを用いるならば、

【彼がごとくなるべきに、】
かの仙予〔せんよ〕王や有徳〔うとく〕王の時のようになるであろうに、

【用ひざる上〔うえ〕かへりて彼がかたうど〔方人〕となり、】
用いないうえ、返って法華経の敵の仲間となり、

【一国こぞりて日蓮をかへりてせむ。上一人より下万民にいたるまで、】
一国こぞって日蓮を逆に責めています。そして上一人から下万民にいたるまで、

【皆五逆に過ぎたる謗法の人となりぬ。】
皆、五逆罪にも過ぎた謗法の人となってしまったのです。

【されば各々も彼が方ぞかし。】
しかも、また、あなた方も、この謗法の国主の側にいる人なのです。

【心は日蓮に同意なれども身は別なれば、】
たとえ、心は、日蓮と同意であっても、身は別であるから、

【与同罪〔よどうざい〕のがれがたきの御事に候に、】
与同罪は、逃れ難いのです。

【主君に此の法門を耳にふれさせ進〔まい〕らせけるこそありがたく候へ。】
それなのに、有難い事に、主君の耳に、この法門を説いて聞かせる事で、

【今は御用ひなくもあれ、殿の御失〔とが〕は脱〔のが〕れ給ひぬ。】
たとえ、主君が今は用いなくとも、あなたの与同罪は、それで免れたのです。

【此より後には口をつゝみておはすべし。】
ですから、これ以降は、口を慎しんでください。

【又、天も一定殿をば守らせ給ふらん。】
また、諸天も必ずや、あなたを守ることでしょう。

【此よりも申すなり。かまえてかまへて御用心候べし。】
日蓮からも諸天に申しつけましょう。重ねて用心をしてください。

【いよいよにく〔悪〕む人々ねら〔狙〕ひ候らん。】
いよいよ、あなたを憎む人がつけ狙うでしょう。

【御さかもり〔酒宴〕夜は一向に止め給へ。】
酒宴は、夜は一切やめてください。

【只女房と酒うち飲んで、なにの御不足あるべき。】
ただ女房と酒を飲んでさえいれば、何の問題もないでしょう。

【他人のひる〔昼〕の御さかもりおこたる〔油断〕べからず。】
他人との昼の酒宴でも油断をしてはなりません。

【酒を離れてねら〔狙〕うひま〔隙〕有るべからず。】
酒を離れては、敵も狙う隙〔すき〕がないのです。

【返す返す。恐々謹言。】
くれぐれも用心をしてください。恐れながら謹んで申し上げます。

【九月二十六日   日蓮花押】
9月26日   日蓮花押

【左衛門尉殿御返事】
左衛門尉殿御返事


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